反魂の傀儡使い

菅原

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24章 断罪

魔物の力

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 いかに人間に幻滅していたアニムとはいえ、乱入者が通常の人間の姿をしていたのであれば、事情を語り誤解を解くのも吝かでは無かった。
 だが現れた者らは明らかに人間とは違う身体を持っていたのだ。それらは人間が、何らかの方法で病魔を食らう物を吸収、取り込むことで起きた結果である。人間はこれを実現する為に『錬金術』を用いたのだが、アニムはその存在までは知らない。
『何をしたのかは知らぬが、神に授かった体を作り変えるなど神に対する冒涜である。そのような行いをした貴様らを、我は許すことが出来ない』
 アニムは折りたたんでいた翼を開き、天を仰ぐと怒りと共に咆哮を上げた。
『キュオオオオ!!!』
 空気を震わす咆哮が轟く。言葉を語る時の中性的な声ではない、更に甲高く、魔導砲が稼働する音によく似た音。
 一方で、対峙する三人はそれに怯むことなく立ち並んでいた。

 白龍の動きを一切逃さんとする鋭い眼光。その奥には勝利を疑わぬ確固たる自信が見て取れる。
 アニムは、上げた咆哮に狼狽えぬ三人を見て再び笑みを湛えた。
『ククク……此度で奪い取った力が余程強力と見える。姿は異形なれど心は充実しているようだ』
 彼の中に浮かんで来たのは、人間であった時に覚えた『盗人猛々しい』という言葉だ。人間が今自慢げに振るっている力は、全て他者から奪い取ったものでしかない。その事実が、アニムに更なる怒りをもたらす。


 白龍が翼を折りたたむ頃、獅子の腕を持つ男、ガンフが駆けだした。
 手にした剣はドワーフの名匠マシリオンと、希代の鍛冶師アガツマの二人が初めて協力して作った一振りだ。最高品質の鉱石を基に、二人の名匠が打ったその剣は、この世にある全ての武器を超越する性能を持つ。その一太刀はあらゆるものを断ち切る一撃となり、物理的な切断だけでなく魔力の繋がりすらをも切断する一品だ。
 また、これを扱うガンフもこの世で最高の力を持つ剣士であった。その獅子の腕は進化を重ねた魔物の物で、その影響により彼は、人間どころかセリオンの身体能力をも上回る身体能力を得ることが出来た。
 この二つが調和し放たれる一撃は、もはや生物がどうこうできる範疇を超えている。ガンフはその一撃をもって、白龍の片足を切り飛ばすつもりだった。
 当然、アニムの慧眼はそれを見抜いていた筈だ。筈だったのだが……アニムはその一太刀を避けることをしなかった。

 キィィィン!!

 澄み渡った音が響く。不純物を一切含まぬ物質同士がぶつかり合った証だ。
 その衝撃により白い鱗がはじけ飛び、辺りを幻想的に彩る。だが足を切断するには至らず、振られた剣は足にぶつかり動きを止めてしまった。
「くっ! ……リエント!!」
 予想が外れたのか、ガンフは少し顔を強張らせると、背後で戦いの準備をする魔法使いの名を呼んだ。


 リエントの姿もガンフのように異形へと変わっていた。以前の戦いにより失われた左腕は、今では枯れ木で出来た腕に挿げ変わっている。精霊を宿した樹木ドリアードが魔物化した物を、錬金術により融合させたのだ。これによりリエントは、人間どころかエルフと同等、もしくはそれ以上の魔力を手に入れることが出来た。
「我が手に来たれ、地獄の業火よ。彼の者の身体を、魂を、その全てを焼き尽くせ!! 地獄火炎ヘルフレア!!!」
 詠唱を終え放たれた魔法は、消えることを知らぬ地獄の炎を呼び出す魔法だ。その炎は、例えその者が焼け死んだとしても、肉を、骨を、全てを消滅させるまで燃え続ける不滅の炎である。
 突き出された枯れ木の左腕から、赤銅しゃくどうの火炎球が出現する。それは一直線に白龍へと迫り胸に着弾。途端に黒い爆炎が龍の身体を包み込んだ。

 炎が轟轟と燃える最中も、攻撃の手は休まらない。ガンフは再び剣を翻し、様々な箇所を切り付けて行く。リエントもまた、様々な魔法を連々と放ち始めた。本来ならばそれらは、全て一撃必殺ともいえる威力を持つ攻撃だ。しかし白龍の身体はびくともしない。そこで漸く、セリアが操る悪魔の騎士も動き始める。

 その漆黒の傀儡人形もまた、魔物の素材を用いて作られた新型の人形であった。
 元となった魔物は羊の角を生やし魔法に長けた魔物で、創作物の中にある存在に似ていることから『悪魔ディアボロ』と名づけられた魔物の素材だ。また鉱石類もドワーフによって最上のものが選ばれ、作り出された人形は不壊と言っても過言ではない強度と、類稀な性能を持っていた。
 加えて彼女らが編み出した『魔石を組み込む技法』により放たれる魔法は、素体となった魔物の素材により増幅され、従来の傀儡人形が扱う魔法とは比にならぬほど強化されていた。

 悪魔の騎士はガンフが初撃で切りつけた個所を狙い、身の丈もある巨大な剣を振り被る。その驚異的な性能による攻撃は、先のアルストロイが振り回す斧にも匹敵する威力を持っていた。
「何時までその余裕が保てるかしらね!」
 再び舞い散る純白の鱗に澄み渡る接触音。だがその音には僅かに鈍い音が混ざり、ついにその白足に鮮血が舞う傷がついた。
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