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3章 新たな時代
同志
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国王の使者が訪れてから数日後、ドール・ロゼにはまた特別な来客があった。
その日はアルストロイも店にいて、もうすぐ店を閉めるという穏やかな時間の事だ。
店内に客はおらず、閉店までの少しの時間を、箒を片手に談笑する二人。
すると唐突に、来客を知らせる鈴が鳴った。
戸の方を見ると、長い黒髪を靡かせた一人の女が立っていた。
身長は高く、引き締まった体に似合う少々派手な格好をしている。
更にその女には連れがいるらしく、重厚な鎧を着こんだ一人の男を従えていた。
女はローゼリエッタを見るなり、鬼の形相を取り、いきり立って歩み寄る。
そして開口一番、怒声を発した。
「貴女達ねぇ!もう少し考えて行動して頂戴な!」
付き添いの男も離れることなくぴったりと後についてきていて、同じように険しい表情を向けている。
突然怒鳴られて、心当たりがないローゼリエッタとアルストロイは困惑した。
特に他人に迷惑をかけるような行動をした覚えはないし、そもそも目の前にいる二人は今日初めて会ったのだ。
まずはその疑問を解消するべく、アルストロイは黒髪の女に語り掛けた。
「あの、誰かの間違いではないでしょうか?初対面ですし……なにより僕たちは、人に迷惑をかけるような行動は何も……」
その言葉を遮るように、女は再び声を張り上げる。
「冗談じゃないわ!戒律を破っておいて、迷惑をかけていないですって!?」
そういって、彼女は近くのテーブルを叩いた。
まずは話し合うべきだと、四人は居住空間へと移動する。
閉店の作業を進める間、黒髪の女は意外にも大人しく、その作業を見守っていた。
今は何時かの来客の時と同様に、テーブルには紅茶の入ったカップが置かれている。
数は四つ。
四人はそれぞれ席に着くと、話のすり合わせが始まった。
一番に口を開いたのは、やはり黒髪の女である。
「先日の人形劇を見ていたわ。流石トレット家……と言えばいいのかしら。人形操作に関しては逆立ちしても勝てそうもなさそうね」
彼女のこの言葉で、ローゼリエッタは漸く彼女が何者であるか気づいた。
「もしかして……貴女も傀儡師なんですか!?」
驚きの声を上げる少女に、黒い髪をかき上げて女は頷く。
「ええ、私の名は“セリア”。傀儡師の一族、フォルオーゼ家の継承者よ」
セリアと名乗った女は、紅茶を一口啜った。
ローゼリエッタは、死んだ祖母以外に、他の傀儡師にあったことが無かった。
故意に会わされなかったのか、たまたま機会がなかったのかは判らない。
だが、自ら傀儡師と名乗る者と会ったのは、この時が初めてだった。
だというのに、初めての同志は怒りを露わにし、鋭い視線を向けてくる。
その疑問を解消するべく、ローゼリエッタは話を急ぐ。
「あの……私たちは一体何をしてしまったのでしょうか?戒律と言ってましたが、私には何の見当もつかないのですが」
少女は本心を語って、セリアに指南を請うた。
セリアは、ローゼリエッタのこの言葉に驚いた。
傀儡師として生きていくうえで、彼女が最初に教えられたのは一つの戒律。
その戒律とは、傀儡師の技術を無暗に公の場で晒さない事。
それが作られた背景にある出来事を鑑みれば、至極もっともと言える決まり事だが、傀儡師の中でも銘家と位置される筈のトレット家の、当代傀儡師が知らいない事に驚愕する。
「本当に知らないの?」
当然、彼女は疑いの目で食って掛かる。
しかしローゼリエッタの反応は、人を騙しているようなものでは無かった。
続いて声を発したのは、アルストロイだ。
「もし人知れず迷惑をかけていたのなら謝罪します。ですがせめて、何がいけなかったのか説明して頂けませんか?」
アルストロイの言葉に、今度はセリアの付き人が激昂した。
「貴様はそれでも『守護者』なのか!?」
彼の怒りはセリアの比ではないらしく、テーブルを思い切り叩き、席から立ち上がる。
今にもつかみかからんという程に身を乗り出す男。
それを、セリアは窘めた。
「よしなさい、ウルカテ。彼女らは本当に知らないのよ」
「そんな筈が無いでしょう!?傀儡師になって真っ先に教えられる決まり事ですよ!?」
だがそれが事実であると、ローゼリエッタとアルストロイの態度が物語っていた。
セリアは事の顛末を説明し始める。
かつて傀儡師は、王の命令により戦場へと借り出され、素晴らしい戦果を上げた。
だが長き戦いで傀儡師も疲弊し、人形が恐怖の対象となる事を嫌い、やがて戦いの場から姿を消してしまう。
そして、姿を隠した傀儡師らは、国の追っ手を恐れ、各地へ散り散りとなり、再び戦いの場に駆り出されぬよう、傀儡師の技術を隠匿するべきだと決めたのだ。
結果生まれたのが、今回兄妹が犯してしまった戒律である。
これを犯してしまった末に起こるであろう出来事を、セリアはこう語る。
「先日の劇は踊るだけだったからどうなるかわからないけど、もし厄介な奴に目を点けられたら、貴女達だけの話じゃなく、他の傀儡師にも影響が出るでしょうね。最悪……再び戦争の中に身を投じることになるでしょう」
彼女の話を聞いて、ローゼリエッタとアルストロイは、国王の使者の事を思い出していた。
その日はアルストロイも店にいて、もうすぐ店を閉めるという穏やかな時間の事だ。
店内に客はおらず、閉店までの少しの時間を、箒を片手に談笑する二人。
すると唐突に、来客を知らせる鈴が鳴った。
戸の方を見ると、長い黒髪を靡かせた一人の女が立っていた。
身長は高く、引き締まった体に似合う少々派手な格好をしている。
更にその女には連れがいるらしく、重厚な鎧を着こんだ一人の男を従えていた。
女はローゼリエッタを見るなり、鬼の形相を取り、いきり立って歩み寄る。
そして開口一番、怒声を発した。
「貴女達ねぇ!もう少し考えて行動して頂戴な!」
付き添いの男も離れることなくぴったりと後についてきていて、同じように険しい表情を向けている。
突然怒鳴られて、心当たりがないローゼリエッタとアルストロイは困惑した。
特に他人に迷惑をかけるような行動をした覚えはないし、そもそも目の前にいる二人は今日初めて会ったのだ。
まずはその疑問を解消するべく、アルストロイは黒髪の女に語り掛けた。
「あの、誰かの間違いではないでしょうか?初対面ですし……なにより僕たちは、人に迷惑をかけるような行動は何も……」
その言葉を遮るように、女は再び声を張り上げる。
「冗談じゃないわ!戒律を破っておいて、迷惑をかけていないですって!?」
そういって、彼女は近くのテーブルを叩いた。
まずは話し合うべきだと、四人は居住空間へと移動する。
閉店の作業を進める間、黒髪の女は意外にも大人しく、その作業を見守っていた。
今は何時かの来客の時と同様に、テーブルには紅茶の入ったカップが置かれている。
数は四つ。
四人はそれぞれ席に着くと、話のすり合わせが始まった。
一番に口を開いたのは、やはり黒髪の女である。
「先日の人形劇を見ていたわ。流石トレット家……と言えばいいのかしら。人形操作に関しては逆立ちしても勝てそうもなさそうね」
彼女のこの言葉で、ローゼリエッタは漸く彼女が何者であるか気づいた。
「もしかして……貴女も傀儡師なんですか!?」
驚きの声を上げる少女に、黒い髪をかき上げて女は頷く。
「ええ、私の名は“セリア”。傀儡師の一族、フォルオーゼ家の継承者よ」
セリアと名乗った女は、紅茶を一口啜った。
ローゼリエッタは、死んだ祖母以外に、他の傀儡師にあったことが無かった。
故意に会わされなかったのか、たまたま機会がなかったのかは判らない。
だが、自ら傀儡師と名乗る者と会ったのは、この時が初めてだった。
だというのに、初めての同志は怒りを露わにし、鋭い視線を向けてくる。
その疑問を解消するべく、ローゼリエッタは話を急ぐ。
「あの……私たちは一体何をしてしまったのでしょうか?戒律と言ってましたが、私には何の見当もつかないのですが」
少女は本心を語って、セリアに指南を請うた。
セリアは、ローゼリエッタのこの言葉に驚いた。
傀儡師として生きていくうえで、彼女が最初に教えられたのは一つの戒律。
その戒律とは、傀儡師の技術を無暗に公の場で晒さない事。
それが作られた背景にある出来事を鑑みれば、至極もっともと言える決まり事だが、傀儡師の中でも銘家と位置される筈のトレット家の、当代傀儡師が知らいない事に驚愕する。
「本当に知らないの?」
当然、彼女は疑いの目で食って掛かる。
しかしローゼリエッタの反応は、人を騙しているようなものでは無かった。
続いて声を発したのは、アルストロイだ。
「もし人知れず迷惑をかけていたのなら謝罪します。ですがせめて、何がいけなかったのか説明して頂けませんか?」
アルストロイの言葉に、今度はセリアの付き人が激昂した。
「貴様はそれでも『守護者』なのか!?」
彼の怒りはセリアの比ではないらしく、テーブルを思い切り叩き、席から立ち上がる。
今にもつかみかからんという程に身を乗り出す男。
それを、セリアは窘めた。
「よしなさい、ウルカテ。彼女らは本当に知らないのよ」
「そんな筈が無いでしょう!?傀儡師になって真っ先に教えられる決まり事ですよ!?」
だがそれが事実であると、ローゼリエッタとアルストロイの態度が物語っていた。
セリアは事の顛末を説明し始める。
かつて傀儡師は、王の命令により戦場へと借り出され、素晴らしい戦果を上げた。
だが長き戦いで傀儡師も疲弊し、人形が恐怖の対象となる事を嫌い、やがて戦いの場から姿を消してしまう。
そして、姿を隠した傀儡師らは、国の追っ手を恐れ、各地へ散り散りとなり、再び戦いの場に駆り出されぬよう、傀儡師の技術を隠匿するべきだと決めたのだ。
結果生まれたのが、今回兄妹が犯してしまった戒律である。
これを犯してしまった末に起こるであろう出来事を、セリアはこう語る。
「先日の劇は踊るだけだったからどうなるかわからないけど、もし厄介な奴に目を点けられたら、貴女達だけの話じゃなく、他の傀儡師にも影響が出るでしょうね。最悪……再び戦争の中に身を投じることになるでしょう」
彼女の話を聞いて、ローゼリエッタとアルストロイは、国王の使者の事を思い出していた。
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