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5章 傀儡大会
二回戦 1
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日程は順調に進み、一回戦が全て消化される。
参加者は計八人で、初日には四回の試合が行われた。
演者らは一晩の休憩を挟み、明日、準決勝と決勝合わせて三つの試合に挑むことになる。
豪華な自室にて、ハルクエルは目的の人物が勝ち残ったことにほくそ笑んだ。
実のところ、勝ち抜き方式というのは口ばかりの方便であり、試合の組み合わせは、例の傀儡師の力量を計るように、国側で仕組まれた物だった。
(初日の収穫は上々であった。残す機会は二つ……その二試合で、あの娘は大陸一の人形技師として、名を轟かすであろう)
そうなった時が、彼の悲願が達成される時だ。
翌日も試合のある者達は、国王の計らいによって、王都にある高級宿泊店に泊まることとなっていた
だがそれはあくまで演者にのみ与えられた特権であり、演者でないセリアやウルカテは別の個所で一夜を明かす。
見たことも無い豪華な食事を平らげ、寝るまでの短い時間を、自室で寛ぐローゼリエッタ。
傀儡を持ち運ぶことは許可されていない為、今彼女の傍にアトラーはいない。
一抹の不安と、若干の寂しさを感じながら、少女は一人穏やかな時間を過ごす。
翌日。
午前の内から試合は予定されていて、朝食を取った演者たちは忙しなく会場入りを果たす。
それと同時に観客も会場入りし、観客席はあっという間に満席となった。
控室に入った演者たちは、それぞれ自らの人形の最終調整を始める。
ローゼリエッタもそれに漏れることなく、自身の傀儡を弄り出した。
胸部を開き、程なくして少女は一つの異変に気付く。
(……あれ?ここ……)
そこは、心臓部から伸びた四肢を操る糸が集う場所。
その糸の中で、左の腕を繋ぐ糸だけが切断されていたのだ。
(昨日試合が終わった時は、切れてなかったのに……)
切断面をよく観察してみれば、老朽化のように自然に切れたものでは無く、鋭利な刃物ですぱっと切られている。
明らかに作為的な妨害であった。
急いで修復を始めるローゼリエッタだったが、最悪なことに控室の戸が叩かれる音が部屋に響いた。
少女が慌てて戸を開けると、昨日と同じ女が部屋の前で佇んでいる。
「お早うございます、ローゼリエッタ様。早速ではありますが、試合会場までお越しいただけますでしょうか」
「お、お早うございます。……あ、あの!もう少し待っていただけませんか!?誰かがあの子を傷つけたみたいで……」
見つけた異変を慌てて伝えようとするローゼリエッタ。
だが呼び出しに来た女は、冷たい態度で言い放つ。
「申し訳ありませんが、時間を過ぎてしまった場合は棄権とみなし、敗北となります。お急ぎください」
少女は何度か異を唱えて見せたが、時間を浪費するばかり。
遂には試合の時間となり、ローゼリエッタは左腕が動かない状態のアトラーで、試合に臨むことになってしまった。
会場は、昨日の試合の影響などなかったかのように、綺麗な姿を維持し続けている。
不安げな表情を浮かべたまま、ローゼリエッタが姿を現すと、昨日とは少し違った歓声が上がった。
「昨日みたいな戦いをまた見せてくれよー!」
「鎧のお姉ちゃーん!がんばってー!」
それは、戦場を舞う人形に心奪われた人らの激励。
数は決して多くはないが、その声は少女に力を与える。
(傀儡師たる者……見てくれる人に暗い顔は見せられないわ!)
周囲の声に笑って手を振り答えるローゼリエッタ。
それから少女は、鋭い視線で対峙する人を見た。
ローゼリエッタの次の対戦者は、髪の長い女だった。
白衣を纏い杖を持った彼女は、血走った眼でローゼリエッタと、その従者を見る。
魔法人形に慣れた者らにとって、アトラーの存在は異形と言えた。
だが、今対峙する女が連れた魔法人形も、また異形の物と言えた。
体は真っ白で、日を浴びて輝く様から金属のように見える。
四肢は細く胴体も細い。角ばった個所は一切なく、全ての部品が丸みを帯びていた。
顔には大きな穴が開いていて、そこに見えるのは向こう側で無く真っ黒な穴だ。
対戦者が試合開始の準備を終えると、長い髪に隠れた顔を歪めた。
「くふふふ。いいわぁ、貴女たち。どうやって動いてるのかしら?内部構造は?製造工程は?ああ……調べたい!調べ尽くしたいわ!!」
両手を広げ、高笑いを上げる様は狂気を感じる。
存分に笑った後、白衣の女は渋々と名乗りを上げた。
「名乗るのが決まり事らしいから名乗らせて頂くわ。私の名前は“ジェシー”。愛するこの子は“プロト”。さあ、楽しみましょう!?」
ローゼリエッタも名乗りを上げると、試合開始の魔法が打ち上げられる。
破裂音が完全に消える前に、ローゼリエッタは動き出す。
左腕が機能しない今、いたずらに時間をかけるのは自分の首を絞める行為でしかない。
(情報が洩れる前に決めなくちゃ!)
幸いなことに、両足は問題なく動く為機動性は失われていない。
真っすぐ駆け抜け、反応させることなく剣を振り払う。
これが必勝法であると、ローゼリエッタは指示を出す。
アトラーは飛び出した。
地面が爆ぜ、白い弾丸となって広大な戦場を駆け抜ける。
目指すは異形の物。微動だにしないプロトに肉薄し、アトラーは魔鉱石の剣を振り払った。
白く細い四肢は、黒の剣によって断ち切られる。
本来であればそうなる筈だったのだが、今起きた現象に、ローゼリエッタは驚愕することになる。
一回戦で戦ったクレイマンは少しも反応が出来なかった。
だというのに、ジェシーが従えるプロトは、高速で振られる剣を見切り、回避して見せたのだ。
即ち、細く湾曲した四肢を持つ異形の魔法人形は、アトラーに匹敵する機動力を持つことになる。
勝利を確信しての行動を回避され、ローゼリエッタは露骨に表情を曇らせた。
それが酷く気に入ったようで、ジェシーは艶っぽい声を出して悶える。
「あぁ……いいわ、その顔!もっと……もっと見せて頂戴!!プロトォ!!」
主の指示に従い、プロトは腕を持ち上げ攻勢にうつる。
参加者は計八人で、初日には四回の試合が行われた。
演者らは一晩の休憩を挟み、明日、準決勝と決勝合わせて三つの試合に挑むことになる。
豪華な自室にて、ハルクエルは目的の人物が勝ち残ったことにほくそ笑んだ。
実のところ、勝ち抜き方式というのは口ばかりの方便であり、試合の組み合わせは、例の傀儡師の力量を計るように、国側で仕組まれた物だった。
(初日の収穫は上々であった。残す機会は二つ……その二試合で、あの娘は大陸一の人形技師として、名を轟かすであろう)
そうなった時が、彼の悲願が達成される時だ。
翌日も試合のある者達は、国王の計らいによって、王都にある高級宿泊店に泊まることとなっていた
だがそれはあくまで演者にのみ与えられた特権であり、演者でないセリアやウルカテは別の個所で一夜を明かす。
見たことも無い豪華な食事を平らげ、寝るまでの短い時間を、自室で寛ぐローゼリエッタ。
傀儡を持ち運ぶことは許可されていない為、今彼女の傍にアトラーはいない。
一抹の不安と、若干の寂しさを感じながら、少女は一人穏やかな時間を過ごす。
翌日。
午前の内から試合は予定されていて、朝食を取った演者たちは忙しなく会場入りを果たす。
それと同時に観客も会場入りし、観客席はあっという間に満席となった。
控室に入った演者たちは、それぞれ自らの人形の最終調整を始める。
ローゼリエッタもそれに漏れることなく、自身の傀儡を弄り出した。
胸部を開き、程なくして少女は一つの異変に気付く。
(……あれ?ここ……)
そこは、心臓部から伸びた四肢を操る糸が集う場所。
その糸の中で、左の腕を繋ぐ糸だけが切断されていたのだ。
(昨日試合が終わった時は、切れてなかったのに……)
切断面をよく観察してみれば、老朽化のように自然に切れたものでは無く、鋭利な刃物ですぱっと切られている。
明らかに作為的な妨害であった。
急いで修復を始めるローゼリエッタだったが、最悪なことに控室の戸が叩かれる音が部屋に響いた。
少女が慌てて戸を開けると、昨日と同じ女が部屋の前で佇んでいる。
「お早うございます、ローゼリエッタ様。早速ではありますが、試合会場までお越しいただけますでしょうか」
「お、お早うございます。……あ、あの!もう少し待っていただけませんか!?誰かがあの子を傷つけたみたいで……」
見つけた異変を慌てて伝えようとするローゼリエッタ。
だが呼び出しに来た女は、冷たい態度で言い放つ。
「申し訳ありませんが、時間を過ぎてしまった場合は棄権とみなし、敗北となります。お急ぎください」
少女は何度か異を唱えて見せたが、時間を浪費するばかり。
遂には試合の時間となり、ローゼリエッタは左腕が動かない状態のアトラーで、試合に臨むことになってしまった。
会場は、昨日の試合の影響などなかったかのように、綺麗な姿を維持し続けている。
不安げな表情を浮かべたまま、ローゼリエッタが姿を現すと、昨日とは少し違った歓声が上がった。
「昨日みたいな戦いをまた見せてくれよー!」
「鎧のお姉ちゃーん!がんばってー!」
それは、戦場を舞う人形に心奪われた人らの激励。
数は決して多くはないが、その声は少女に力を与える。
(傀儡師たる者……見てくれる人に暗い顔は見せられないわ!)
周囲の声に笑って手を振り答えるローゼリエッタ。
それから少女は、鋭い視線で対峙する人を見た。
ローゼリエッタの次の対戦者は、髪の長い女だった。
白衣を纏い杖を持った彼女は、血走った眼でローゼリエッタと、その従者を見る。
魔法人形に慣れた者らにとって、アトラーの存在は異形と言えた。
だが、今対峙する女が連れた魔法人形も、また異形の物と言えた。
体は真っ白で、日を浴びて輝く様から金属のように見える。
四肢は細く胴体も細い。角ばった個所は一切なく、全ての部品が丸みを帯びていた。
顔には大きな穴が開いていて、そこに見えるのは向こう側で無く真っ黒な穴だ。
対戦者が試合開始の準備を終えると、長い髪に隠れた顔を歪めた。
「くふふふ。いいわぁ、貴女たち。どうやって動いてるのかしら?内部構造は?製造工程は?ああ……調べたい!調べ尽くしたいわ!!」
両手を広げ、高笑いを上げる様は狂気を感じる。
存分に笑った後、白衣の女は渋々と名乗りを上げた。
「名乗るのが決まり事らしいから名乗らせて頂くわ。私の名前は“ジェシー”。愛するこの子は“プロト”。さあ、楽しみましょう!?」
ローゼリエッタも名乗りを上げると、試合開始の魔法が打ち上げられる。
破裂音が完全に消える前に、ローゼリエッタは動き出す。
左腕が機能しない今、いたずらに時間をかけるのは自分の首を絞める行為でしかない。
(情報が洩れる前に決めなくちゃ!)
幸いなことに、両足は問題なく動く為機動性は失われていない。
真っすぐ駆け抜け、反応させることなく剣を振り払う。
これが必勝法であると、ローゼリエッタは指示を出す。
アトラーは飛び出した。
地面が爆ぜ、白い弾丸となって広大な戦場を駆け抜ける。
目指すは異形の物。微動だにしないプロトに肉薄し、アトラーは魔鉱石の剣を振り払った。
白く細い四肢は、黒の剣によって断ち切られる。
本来であればそうなる筈だったのだが、今起きた現象に、ローゼリエッタは驚愕することになる。
一回戦で戦ったクレイマンは少しも反応が出来なかった。
だというのに、ジェシーが従えるプロトは、高速で振られる剣を見切り、回避して見せたのだ。
即ち、細く湾曲した四肢を持つ異形の魔法人形は、アトラーに匹敵する機動力を持つことになる。
勝利を確信しての行動を回避され、ローゼリエッタは露骨に表情を曇らせた。
それが酷く気に入ったようで、ジェシーは艶っぽい声を出して悶える。
「あぁ……いいわ、その顔!もっと……もっと見せて頂戴!!プロトォ!!」
主の指示に従い、プロトは腕を持ち上げ攻勢にうつる。
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