反魂の傀儡使い

菅原

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9章 集う思い

進軍の時

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 革命軍は立ち並ぶ巨鎧兵の前に集合する。
彼らが用意できた巨鎧兵は、赤き隊長機を含め計十五機。それに乗り込む人員らの選抜も出来ており、元巨鎧兵団の兵、魔法学校の生徒らの中から、それぞれ優秀どころを選出してある。

 立ち並ぶ仲間に向かって、ローゼリエッタは声を張り上げた。
「では作戦を開始します!巨鎧兵隊は打ち合わせ通り、三つの班に分かれてください。一班三機は、南西にある国ルルテラへ。二班三機は、南東にある国コーンウェルへ。残りの九機はこの場で、王国が来た時の為に待機です。これまで通り、戦闘は出来るだけ避け、国民の救出を優先してください!」
「「了解!」」
士気は上々。返る声も元気なものだ。
巨鎧兵隊は返事をすると、乗り込む準備を始める。

 ローゼリエッタはそのまま横に進み、次に人形と共に立ち並ぶ者達へと声をかけた。
二十いた傀儡師と守護者も、それぞれが五人五人十人の三班に分けられていて、同様に各所へと配置される。
「続いて傀儡師隊も、巨鎧兵隊に同行。作戦遂行の支援をお願いします!作戦終了の時まで、皆を守ってください」
「「はい!」」
声の半分以上は、年老いた老人たちだ。
だがその瞳は、若い者に引けを取らぬ程の闘志を宿している。
指示を受けた傀儡師たちは、自身の傀儡と共に巨鎧兵隊と合流し、細かな打ち合わせを始めた。

 最後に少女が向かったのは、パラミシア軍と魔法学校の生徒たちの下だ。
巨鎧兵に乗り込む選抜をした後、魔法学校の生徒らの中から、更に魔法石行使に当たる人員が選抜された。
そういった国民救出に関わる人員以外の者達が、ここに集う彼らだ。
「皆さんには、一番大事なこの場の警護をお願いします!私たちが帰るまでに、バルドリンガ軍がこの場に攻めてきたときは……」
ローゼリエッタがちらりとガンフを見ると、彼は力強く頷いた。
「この命に代えても、彼らを守って見せようぞ!」
彼は剣を抜き放ち、空高く突き出して見せる。
言い合いがあった当時の険悪な雰囲気はどこへやら。今では共に、一つの目的の為に奮起する大切な仲間である。
 尊敬する人の声に呼応し、周囲の戦士もそのしぐさを真似て見せた。
「「この命に代えても!!」」
一際高い咆哮が上がり、周囲の空気が振るえる。
パラミシア軍の数は僅か百九十余名。だが革命軍が集う今この場で、彼らほど戦場を経験した戦士はいない。


 全ての指示を終えたローゼリエッタは、他の兵士らと共に巨大な鉄車に乗り込む。
これも、彼らが作り出した新たな兵器だ。
通常の車よりも何倍も大きい巨大な車輪。全てが鉄でできたそれは、堅牢な防御力を有する。
彼らはこれを『鉄の箱舟アーク』と呼び、巨鎧兵以外の兵士を戦場へ移動するときに用いていた。
兵士が乗り込んだ箱舟を、巨鎧兵が引くことで、大群による移動を可能としていたのだ。

 こういった新兵器を開発するにあたって、彼女らはあることを取り決めた。
それは各兵器の呼称だ。
 軍人からすればこれまで通り、それぞれを『巨鎧兵きょがいへい』『箱舟はこぶね』『赤き巨鎧兵』と呼んでもなんら問題は無かった。
だが傀儡師の面々が、この事に異を唱えたのだ。
 傀儡師は、人形に並々ならぬ愛情を注ぎこむ。その表現の一つとして彼女らは、完成した人形に対し名を与えるという風習があった。
だというのに、傀儡師の手を持って作り上げた新たな巨鎧兵に対し、以前の名を流用するのに納得ができなかったのだ。
 そういった傀儡師らの要望により、先の移動兵器『鉄の箱舟アーク』をはじめ、一般巨鎧兵を『鉄の戦士アイン』と呼び、赤き隊長機を『赤鉄の戦士ルージュ』と呼ぶようになった。


 全ての兵が鉄の箱舟に乗り込むと、操者が乗り込んだ鉄の戦士たちは、巨大な布を体に纏う。
これはローゼリエッタが巨鎧兵に躍起になっている最中に、魔法学校の生徒らが考案したもので、透明化の魔法が付与された魔法道具の一種であった。
これを羽織ることで、巨体故の隠密性を若干補うことが出来るのだ。
ただし音までは消すことが出来ない為、行軍にはやはり細心の注意が必要となる。

 箱舟に対しても布をかぶせ、全ての準備が整った。
彼らが目指すは二つの国。
ローゼリエッタが組する救援軍は、三機の鉄の戦士を従え、ルルテラ国の救援に向かう。
セリアが組する救援軍は、一機の赤鉄の戦士と、二機の鉄の戦士を従え、コーンウェル国の救援に向かう。
 出立する際、各員の下へローゼリエッタの声が届けられた。
「皆、無事再開できることを願います!進軍開始!!」
戦場には似合わない可憐な少女の声だが、彼らの士気を挙げるには最上の選択肢である。
指導者の声を聞き、革命軍は高高に咆えた。
「「おおおお!!」」
重厚な音を鳴らしながら、彼らは目的地へと旅立つ。

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