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10章 救出作戦
コーンウェル救出作戦 1
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大地を走る鉄の箱舟。
その中は決して快適とは言い難く、均されてない凸凹した地面を進む度に、上下に激しく揺れてしまう。
その不安定な状態と同じく、ローゼリエッタの心の中は、言葉に言い表せない不快な感情で満たされていた。
巨鎧兵隊はよく頑張っている。予定よりも大分早く目的地にはつきそうだ。
だが箱舟に揺られるローゼリエッタは、恐ろしい焦燥感に駆られていた。
「お願い!もっと急いで!」
悲痛な声が、鉄の騎士を操る兵に届けられる。
彼女らとしても、本当はここまで余裕のない作戦を立てたくはなかった。
もっとじっくりと準備をし、万全の態勢で、王国の侵攻を気にすることなく実行できれば最上だった。
しかし、用意が整う前に王国が攻める動きを見せてしまったのだから仕方がない。
空間通門が封じ込められた魔法石の量産も、巨鎧兵の改良もまだまだ完全とは言い難く、前者に至っては辛うじて各都市に一回使える量しか用意できなかったのだ。
むしろよく間に合わせてくれたと、魔法学校の生徒らに感謝すべきだろう。千の人間を転移させる大魔法が封じ込められた魔法石だ。その作成工程も馬鹿にはならないのだから。
救援隊が人形の館を立ってから二日後、セリアが指揮する第二救援隊が、南東の小国コーンウェルに到着した。
隊自体は一時、王都の郊外に待機し、セリアとシャルルが代表でコーンウェル王の元へと話を付けに行く。
王城がある都には、四角く防壁が設けられていて、四方にある出入り口は門が固く閉ざされていた。
二人は一番近い門へと近づく。
「そこの者!止まれ!」
セリアらが門に近づくと、門のわきに備え付けられた兵舎から、衛兵と思われる男が現れた。
戦争が近づいているせいだろう。顔はやつれ、酷く落ち着きがない。
彼女らとしても争いに来たわけではないので、その言葉に従い話す機会を伺う。
「女二人組か?怪しい奴等だ……おいお前たち!コーンウェルに一体何の用だ!?」
「私たちは革命軍です。コーンウェル王に話があって来ました」
最初は訝しんでいた衛兵たちも、セリアが放った『革命軍』の言葉を聞いた瞬間、驚愕の表情を浮かべた。
言葉を無くす者が数名。その中には、思わず破顔し喜ぶ者もいる。
「まさか……噂の革命軍か!?本当にいたとは!ああ、すまない。直ぐに門を開けよう!おいお前!直ぐに王に報せるんだ!」
兵舎から飛びだした兵士らは、巨大な門を開け放ち、王城へ向かって駆けだした。
王への謁見はあっけなく果たされた。彼らコーンウェルの民も、救いの手を待ち望んでいたようだ。
これまで通り、広く趣向を凝らした謁見の間に通されると、王との対話が始まる。
コーンウェル王は、玉座に座り集う革命軍を見下ろす。
「其方たちが革命軍であるか。……女性が多いように見受けられるが……それに子供まで……」
彼の言う通り、革命軍の戦力は現在女性が主となっている。加えて魔法使いの戦力は大部分が魔法学校の生徒であった。
だが彼女らは、一般の女子供と同類にしてはならない。事、戦うことに至っては尚更だ。
王の言葉を受け、やはり隊を仕切る立場にあるセリアが口を開いた。
「私たちの今回の目的は、バルドリンガと戦うことにありません。貴方方を救うことが目的なのです」
「戦わずに救うだと?……ふうむ……もう既にバルドリンガは、この国に向けて兵を差し向けただろう。この状況下で、いったいどうやって戦闘を介さずに我々を救うというのだ?」
各国の王は、この話を持ち掛けた時、誰もがこの疑問を投げかけてきた。
それに対し革命軍は、小さな魔法石を四つ取り出すことで疑問を解消していた。
「ご説明しましょう。こちらがその種でございます」
それからセリアは、作戦の説明を始める。
少しして、コーンウェルの王都は騒がしく動き出した。
国の民が一か所に集められ、転送魔法の準備が行われているのだ。
選ばれた魔法学校の生徒が、魔法石に封印された魔法を紐解いていく。
小さな詠唱、注ぐ魔力に反応し、魔法石は淡く光ると、内から輝きを放つ糸が伸び、巨大な魔方陣を形成していった。
これが完成した時、千の人間を一度に転移させる大魔法が完成するのだ。
問題は、この準備の最中の安全確保にある。
この間にバルドリンガの軍勢が攻めてくれば、当然交戦せざるを得ない。
そのもしもに備え、防壁の外には革命軍に属する巨鎧兵が配置され、にらみを利かせていた。
魔法の開放が半分ほど終える頃、遂にバルドリンガの軍が姿を現した。
その数は巨鎧兵が十機。他に敵影は見えない。
姿を確認した一人の操者が叫んだ。
「西の方角に敵兵確認!巨鎧兵かと思われます!」
その知らせを受け、赤鉄の騎士に乗るシャルルは高らかに咆えた。
「たった十機に、私たちが負ける筈がないわ!総員戦闘準備!コーンウェルの防衛を第一に、場合によっては敵の殲滅に移行する!」
その声に呼応するように、バルドリンガの巨鎧兵は、コーンウェルを落とすべく進軍を始めた。
止まることのない巨鎧兵。
対して革命軍は、敵を排除するべく動き出す。
国の防衛の為に鉄の騎士二機はその場で待機し、赤鉄の騎士が単騎で駆け出した。
赤鉄の騎士の速度は尋常ではない。
その速度は敵巨鎧兵の比では無く、その差が性能の違いを物語っている。
先ずは先制攻撃を。魔法攻撃を担当するリエントが、一つの魔法石を開放した。
「赤色開放!火属性魔法『高位火炎槍』を放ちます!」
赤き機体の背に備え付けられた緑の支柱が輝き、赤色に光る魔法陣を形成してゆく。
無事魔法が解放されると、赤き体と同じ、真っ赤に燃え上がる炎の槍が三本、敵巨鎧兵目掛けて放たれた。
轟轟と燃え上がるそれは、瞬きも叶わぬ速度で飛翔し、見事三機の巨鎧兵に突き刺さる。
巨鎧兵の身体は大部分が鉄だ。灼熱の槍は、その体を見る見るうちに溶かし、三機の敵兵を容易に無力化してしまった。
味方が倒され、狼狽える七つの兵。
その一瞬の隙すらも、今のシャルルは逃さない。
腰につけた黒の双剣を抜き放ち、目標目掛けて駆け続ける。
それは、多くの魔法使い、そして錬金術師の力を借り生成された、黒鉄の剣だ。
鉄よりも強固で耐久性に優れている。
その二つの剣を腕を交差し引き抜くと、同乗する相方に声をかけた。
「リエント君!魔法で援護を!」
「任せてください!緑色開放!風属性魔法『高位風の通り道』を放ちます!」
まだ幼い声が常軌を逸する魔法の発動を知らせる。
赤鉄の騎士の眼前に、緑に輝く大きな魔法陣が現れた。
風を操りそこを通る者の速度を飛躍的に向上させる補助魔法だ。
赤鉄の騎士はその中へ飛び込むと、更に速度を上げて七機の巨鎧兵の中へと飛び込んだ。
「はあああ!」
飛び込んだ矢先、シャルルは一喝とともに双剣を振るった。
袈裟に振り下ろされた黒剣はそれぞれ、巨鎧兵の胴体へと突き刺さる。
鉄で出来た巨鎧兵が、それに耐えきれる筈がない。
当初は十あった巨鎧兵は、初激で七つに減り、一瞬のうちにその数を五つに減らしていた。
度重なる地鳴り。金属がかち合う騒音。そして魔法の発動を知らせる光の明滅。
巨鎧兵同士の戦いは、人間のそれとは比べ物にならない程周囲に影響を与える。
それらは傍から見ているだけで恐怖を与えるものであり、それらを間近で体験しているコーンウェルの民は、音が聞こえる度悲鳴を上げていた。
そんな彼らを守るのが、傀儡師隊の役目である。
セリアは新たに用意した傀儡、『漆黒の騎士』と共に、狼狽する国民を宥めていた。
転送魔法陣を形成する工程も残り少し。
このまま無事にこの国を救うことが出来る。
そう思った時だ。予期せぬ声が上がったのは。
「報告!ひっ、東の門が開け放たれ、大群が押し寄せてきています!」
傀儡師たちに、緊張が走る。
その中は決して快適とは言い難く、均されてない凸凹した地面を進む度に、上下に激しく揺れてしまう。
その不安定な状態と同じく、ローゼリエッタの心の中は、言葉に言い表せない不快な感情で満たされていた。
巨鎧兵隊はよく頑張っている。予定よりも大分早く目的地にはつきそうだ。
だが箱舟に揺られるローゼリエッタは、恐ろしい焦燥感に駆られていた。
「お願い!もっと急いで!」
悲痛な声が、鉄の騎士を操る兵に届けられる。
彼女らとしても、本当はここまで余裕のない作戦を立てたくはなかった。
もっとじっくりと準備をし、万全の態勢で、王国の侵攻を気にすることなく実行できれば最上だった。
しかし、用意が整う前に王国が攻める動きを見せてしまったのだから仕方がない。
空間通門が封じ込められた魔法石の量産も、巨鎧兵の改良もまだまだ完全とは言い難く、前者に至っては辛うじて各都市に一回使える量しか用意できなかったのだ。
むしろよく間に合わせてくれたと、魔法学校の生徒らに感謝すべきだろう。千の人間を転移させる大魔法が封じ込められた魔法石だ。その作成工程も馬鹿にはならないのだから。
救援隊が人形の館を立ってから二日後、セリアが指揮する第二救援隊が、南東の小国コーンウェルに到着した。
隊自体は一時、王都の郊外に待機し、セリアとシャルルが代表でコーンウェル王の元へと話を付けに行く。
王城がある都には、四角く防壁が設けられていて、四方にある出入り口は門が固く閉ざされていた。
二人は一番近い門へと近づく。
「そこの者!止まれ!」
セリアらが門に近づくと、門のわきに備え付けられた兵舎から、衛兵と思われる男が現れた。
戦争が近づいているせいだろう。顔はやつれ、酷く落ち着きがない。
彼女らとしても争いに来たわけではないので、その言葉に従い話す機会を伺う。
「女二人組か?怪しい奴等だ……おいお前たち!コーンウェルに一体何の用だ!?」
「私たちは革命軍です。コーンウェル王に話があって来ました」
最初は訝しんでいた衛兵たちも、セリアが放った『革命軍』の言葉を聞いた瞬間、驚愕の表情を浮かべた。
言葉を無くす者が数名。その中には、思わず破顔し喜ぶ者もいる。
「まさか……噂の革命軍か!?本当にいたとは!ああ、すまない。直ぐに門を開けよう!おいお前!直ぐに王に報せるんだ!」
兵舎から飛びだした兵士らは、巨大な門を開け放ち、王城へ向かって駆けだした。
王への謁見はあっけなく果たされた。彼らコーンウェルの民も、救いの手を待ち望んでいたようだ。
これまで通り、広く趣向を凝らした謁見の間に通されると、王との対話が始まる。
コーンウェル王は、玉座に座り集う革命軍を見下ろす。
「其方たちが革命軍であるか。……女性が多いように見受けられるが……それに子供まで……」
彼の言う通り、革命軍の戦力は現在女性が主となっている。加えて魔法使いの戦力は大部分が魔法学校の生徒であった。
だが彼女らは、一般の女子供と同類にしてはならない。事、戦うことに至っては尚更だ。
王の言葉を受け、やはり隊を仕切る立場にあるセリアが口を開いた。
「私たちの今回の目的は、バルドリンガと戦うことにありません。貴方方を救うことが目的なのです」
「戦わずに救うだと?……ふうむ……もう既にバルドリンガは、この国に向けて兵を差し向けただろう。この状況下で、いったいどうやって戦闘を介さずに我々を救うというのだ?」
各国の王は、この話を持ち掛けた時、誰もがこの疑問を投げかけてきた。
それに対し革命軍は、小さな魔法石を四つ取り出すことで疑問を解消していた。
「ご説明しましょう。こちらがその種でございます」
それからセリアは、作戦の説明を始める。
少しして、コーンウェルの王都は騒がしく動き出した。
国の民が一か所に集められ、転送魔法の準備が行われているのだ。
選ばれた魔法学校の生徒が、魔法石に封印された魔法を紐解いていく。
小さな詠唱、注ぐ魔力に反応し、魔法石は淡く光ると、内から輝きを放つ糸が伸び、巨大な魔方陣を形成していった。
これが完成した時、千の人間を一度に転移させる大魔法が完成するのだ。
問題は、この準備の最中の安全確保にある。
この間にバルドリンガの軍勢が攻めてくれば、当然交戦せざるを得ない。
そのもしもに備え、防壁の外には革命軍に属する巨鎧兵が配置され、にらみを利かせていた。
魔法の開放が半分ほど終える頃、遂にバルドリンガの軍が姿を現した。
その数は巨鎧兵が十機。他に敵影は見えない。
姿を確認した一人の操者が叫んだ。
「西の方角に敵兵確認!巨鎧兵かと思われます!」
その知らせを受け、赤鉄の騎士に乗るシャルルは高らかに咆えた。
「たった十機に、私たちが負ける筈がないわ!総員戦闘準備!コーンウェルの防衛を第一に、場合によっては敵の殲滅に移行する!」
その声に呼応するように、バルドリンガの巨鎧兵は、コーンウェルを落とすべく進軍を始めた。
止まることのない巨鎧兵。
対して革命軍は、敵を排除するべく動き出す。
国の防衛の為に鉄の騎士二機はその場で待機し、赤鉄の騎士が単騎で駆け出した。
赤鉄の騎士の速度は尋常ではない。
その速度は敵巨鎧兵の比では無く、その差が性能の違いを物語っている。
先ずは先制攻撃を。魔法攻撃を担当するリエントが、一つの魔法石を開放した。
「赤色開放!火属性魔法『高位火炎槍』を放ちます!」
赤き機体の背に備え付けられた緑の支柱が輝き、赤色に光る魔法陣を形成してゆく。
無事魔法が解放されると、赤き体と同じ、真っ赤に燃え上がる炎の槍が三本、敵巨鎧兵目掛けて放たれた。
轟轟と燃え上がるそれは、瞬きも叶わぬ速度で飛翔し、見事三機の巨鎧兵に突き刺さる。
巨鎧兵の身体は大部分が鉄だ。灼熱の槍は、その体を見る見るうちに溶かし、三機の敵兵を容易に無力化してしまった。
味方が倒され、狼狽える七つの兵。
その一瞬の隙すらも、今のシャルルは逃さない。
腰につけた黒の双剣を抜き放ち、目標目掛けて駆け続ける。
それは、多くの魔法使い、そして錬金術師の力を借り生成された、黒鉄の剣だ。
鉄よりも強固で耐久性に優れている。
その二つの剣を腕を交差し引き抜くと、同乗する相方に声をかけた。
「リエント君!魔法で援護を!」
「任せてください!緑色開放!風属性魔法『高位風の通り道』を放ちます!」
まだ幼い声が常軌を逸する魔法の発動を知らせる。
赤鉄の騎士の眼前に、緑に輝く大きな魔法陣が現れた。
風を操りそこを通る者の速度を飛躍的に向上させる補助魔法だ。
赤鉄の騎士はその中へ飛び込むと、更に速度を上げて七機の巨鎧兵の中へと飛び込んだ。
「はあああ!」
飛び込んだ矢先、シャルルは一喝とともに双剣を振るった。
袈裟に振り下ろされた黒剣はそれぞれ、巨鎧兵の胴体へと突き刺さる。
鉄で出来た巨鎧兵が、それに耐えきれる筈がない。
当初は十あった巨鎧兵は、初激で七つに減り、一瞬のうちにその数を五つに減らしていた。
度重なる地鳴り。金属がかち合う騒音。そして魔法の発動を知らせる光の明滅。
巨鎧兵同士の戦いは、人間のそれとは比べ物にならない程周囲に影響を与える。
それらは傍から見ているだけで恐怖を与えるものであり、それらを間近で体験しているコーンウェルの民は、音が聞こえる度悲鳴を上げていた。
そんな彼らを守るのが、傀儡師隊の役目である。
セリアは新たに用意した傀儡、『漆黒の騎士』と共に、狼狽する国民を宥めていた。
転送魔法陣を形成する工程も残り少し。
このまま無事にこの国を救うことが出来る。
そう思った時だ。予期せぬ声が上がったのは。
「報告!ひっ、東の門が開け放たれ、大群が押し寄せてきています!」
傀儡師たちに、緊張が走る。
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