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15章 神域戦線
開戦の時
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雨が両者を分かち三月と十三日経った。遂にバルドリンガ軍と革命軍は相まみえる。
場所はドワーフの山岳住居。背後が山であるこの町は、逃げ場のない背水の陣を引きながらも背後を気にする必要がない城塞都市でもあり、戦争では素晴らしい防御力を誇る。
二つの軍の戦力が立ち並ぶ姿は、圧巻の一言。両軍の戦力はこれまであった各国の保有する戦力とは比べ物にならない。
王国軍。巨鎧兵八百機。歩兵三百人。この内訳はパシウスの隊が百の、国の兵士団が二百。そして大将パシウスが一人。
革命軍。巨鎧兵四十機。歩兵、エルフが二百、セリオンが四百、ドワーフが二百二十、そしてパラミシア兵が九十八の計九百十八人。更に傀儡師隊が十六人。そして大将ローゼリエッタが一人。
数だけを見れば、巨鎧兵は王国軍が、歩兵戦士は革命軍がそれぞれを圧倒している。
戦地がこれ程奥地になると王国軍は露にも思わなかった。今いる土地は、もともと神域と称されていた未開の土地。誰がこれ程無抵抗に侵入を許すと考えるだろうか。だが彼らは今まさに、その神域の最奥とも呼べる位置まで侵入している。
革命軍は、戦地をドワーフの住む城塞都市に決めていた。その理由は大きく分けて二つある。
一つは、戦争前の長距離移動による疲弊を限りなく減らす為。巨鎧兵操者はそれほどでもないだろうが、己が足で歩く戦士たちは堪ったものではない。少しでも万全の状況を崩さぬ努力を、彼女らはとった。
もう一つは、王国軍の残党を逃がさない為だ。ただでさえ膨大な戦力を有する王国が相手である。今回進軍してきた戦力の半分も撤退を成功させれば、減らせる筈の膨大な戦力が再び王国に加算されてしまう。これを防ぐために、様々な工作を行い王国軍をこの場までおびき寄せた。
つまり今起きているこの状況は、革命軍が取った策の一つであり、王国軍はまんまと嵌ってしまったのだ。
立ち並ぶ両軍の兵士は、似ても似つかない。歩兵戦士一つを取って見てもそうだ。
片や鎧を着こみ美しい隊列を組む歴戦の戦士たち。一方では武具に統一性がなく、またその種族すらも違う異形の軍団。
森人だけでも驚愕に値する大発見だというのに、新たな種族が二つ加わった革命軍を見て、王国軍は震撼する。
驚くべきは歩兵戦士だけではない。双方の巨鎧兵は、大きな変貌を遂げていたのだ。その目に見えて分かる変化が、互いの戦士の動揺を誘う。
「嘘……あれって……」
ローゼリエッタが思わず呟いた。
彼女が見たのは王国の巨鎧兵の姿だ。
背中から突き出た六本の緑柱。太陽の光を浴びて燦然と輝くそれは、確かに精霊石の支柱。
それは、革命軍が開発した『鉄の騎士』の姿に酷似していた。
王国軍は、亡国の民を引き連れ避難していた革命軍の巨鎧兵を幾つか捕獲し、解体、研究していたのだ。その過程で、革命軍の巨鎧兵に施された改良の有効性を見抜き、模倣して見せた。これにより各機の性能が飛躍的に向上。その力は以前とは比べ物にならない。
しかし、ローゼリエッタが驚いたのはその強大さではない。
精霊石の支柱を加えるという強化は、存外繊細な物であった。大きすぎても駄目、小さすぎても駄目、この辺りは人形の構造をよく知る傀儡師だからこそ、一定の試行錯誤で到達できた境地である。
これを王国が手に入れた理由は唯一つ……味方兵が捕まったことを示唆する。恐らく、捕まった操者の命は既に失われてしまっただろう。
この強化された王国軍の巨鎧兵が皮肉にも、革命軍兵士の怒りを買うことになってしまった。
一方で革命軍の巨鎧兵も、大きく様変わりしていた。
緑の支柱は数を減らし、その数は僅かに四本。しかし素体の表面は全てがなだらかな曲線で作られていて、その体はかつて、人形大会にてローゼリエッタが戦ったジェシーの魔法人形『プロト』を彷彿させる。
またその素体は、多くの魔法使い、そして錬金術師であるジェシーの力を借りて、魔法人形として最高の品質に高められていた。
その性能はやはり、以前まで使っていた『鉄の騎士』を上回る。つまり王国軍と革命軍の巨鎧兵は、その力関係を変わらずに維持することが出来ていた。
王国軍の仕出かした行動に発奮する革命軍。
革命軍の異様な姿に困惑する王国軍。
両者の士気には大きな差が生まれていた。その差がこの戦いにどれだけの影響を与えるのか、戦に長けたパシウス、そしてガンフだけだがそれに気づく。
「狼狽えるでない! 敵は見たこともない姿をしていようと、我々が行うことは変わらぬ! 剣を振り、魔法を放て! これまで研磨した己が刃を振り翳し、敵を打ち崩すのだ!」
必死に鼓舞するパシウスの声を聞き、戦士たちは咆哮する。
「「おおおおお!!」」
この雄たけびは革命軍の下まで届き、彼女らに戦いの始まりを告げた。
革命軍が屯する陣地の中で、敵の声を聞いたローゼリエッタは、熱く煮えたぎる怒りを抑えきれずに叫ぶ。
「……っ! 皆! 戦いの時です! これまで犠牲になった人たちの為にも……この戦い、勝たねばなりません!」
それに同調するようにカーシンも叫んだ。
「勇敢なるエルフの戦士よ! 我らが友は、その命を犠牲に我々を救ってくれた! 今こそそれに報いる時だ! 勇敢なる戦士よ! 死を恐れるな! 敵は目の前である!!」
「「オオオオオ!!」」
僅か四十機の巨鎧兵に、巨鎧兵隊が乗り込む。戦士は剣を、槍を、槌を、斧を握り、魔法使いは杖を抜き放つ。
やがて王国軍は進軍を開始し、革命軍もそれに応え進軍を始めた。
いよいよ、王国を止める唯一にして最後となる戦いの始まりだ。
場所はドワーフの山岳住居。背後が山であるこの町は、逃げ場のない背水の陣を引きながらも背後を気にする必要がない城塞都市でもあり、戦争では素晴らしい防御力を誇る。
二つの軍の戦力が立ち並ぶ姿は、圧巻の一言。両軍の戦力はこれまであった各国の保有する戦力とは比べ物にならない。
王国軍。巨鎧兵八百機。歩兵三百人。この内訳はパシウスの隊が百の、国の兵士団が二百。そして大将パシウスが一人。
革命軍。巨鎧兵四十機。歩兵、エルフが二百、セリオンが四百、ドワーフが二百二十、そしてパラミシア兵が九十八の計九百十八人。更に傀儡師隊が十六人。そして大将ローゼリエッタが一人。
数だけを見れば、巨鎧兵は王国軍が、歩兵戦士は革命軍がそれぞれを圧倒している。
戦地がこれ程奥地になると王国軍は露にも思わなかった。今いる土地は、もともと神域と称されていた未開の土地。誰がこれ程無抵抗に侵入を許すと考えるだろうか。だが彼らは今まさに、その神域の最奥とも呼べる位置まで侵入している。
革命軍は、戦地をドワーフの住む城塞都市に決めていた。その理由は大きく分けて二つある。
一つは、戦争前の長距離移動による疲弊を限りなく減らす為。巨鎧兵操者はそれほどでもないだろうが、己が足で歩く戦士たちは堪ったものではない。少しでも万全の状況を崩さぬ努力を、彼女らはとった。
もう一つは、王国軍の残党を逃がさない為だ。ただでさえ膨大な戦力を有する王国が相手である。今回進軍してきた戦力の半分も撤退を成功させれば、減らせる筈の膨大な戦力が再び王国に加算されてしまう。これを防ぐために、様々な工作を行い王国軍をこの場までおびき寄せた。
つまり今起きているこの状況は、革命軍が取った策の一つであり、王国軍はまんまと嵌ってしまったのだ。
立ち並ぶ両軍の兵士は、似ても似つかない。歩兵戦士一つを取って見てもそうだ。
片や鎧を着こみ美しい隊列を組む歴戦の戦士たち。一方では武具に統一性がなく、またその種族すらも違う異形の軍団。
森人だけでも驚愕に値する大発見だというのに、新たな種族が二つ加わった革命軍を見て、王国軍は震撼する。
驚くべきは歩兵戦士だけではない。双方の巨鎧兵は、大きな変貌を遂げていたのだ。その目に見えて分かる変化が、互いの戦士の動揺を誘う。
「嘘……あれって……」
ローゼリエッタが思わず呟いた。
彼女が見たのは王国の巨鎧兵の姿だ。
背中から突き出た六本の緑柱。太陽の光を浴びて燦然と輝くそれは、確かに精霊石の支柱。
それは、革命軍が開発した『鉄の騎士』の姿に酷似していた。
王国軍は、亡国の民を引き連れ避難していた革命軍の巨鎧兵を幾つか捕獲し、解体、研究していたのだ。その過程で、革命軍の巨鎧兵に施された改良の有効性を見抜き、模倣して見せた。これにより各機の性能が飛躍的に向上。その力は以前とは比べ物にならない。
しかし、ローゼリエッタが驚いたのはその強大さではない。
精霊石の支柱を加えるという強化は、存外繊細な物であった。大きすぎても駄目、小さすぎても駄目、この辺りは人形の構造をよく知る傀儡師だからこそ、一定の試行錯誤で到達できた境地である。
これを王国が手に入れた理由は唯一つ……味方兵が捕まったことを示唆する。恐らく、捕まった操者の命は既に失われてしまっただろう。
この強化された王国軍の巨鎧兵が皮肉にも、革命軍兵士の怒りを買うことになってしまった。
一方で革命軍の巨鎧兵も、大きく様変わりしていた。
緑の支柱は数を減らし、その数は僅かに四本。しかし素体の表面は全てがなだらかな曲線で作られていて、その体はかつて、人形大会にてローゼリエッタが戦ったジェシーの魔法人形『プロト』を彷彿させる。
またその素体は、多くの魔法使い、そして錬金術師であるジェシーの力を借りて、魔法人形として最高の品質に高められていた。
その性能はやはり、以前まで使っていた『鉄の騎士』を上回る。つまり王国軍と革命軍の巨鎧兵は、その力関係を変わらずに維持することが出来ていた。
王国軍の仕出かした行動に発奮する革命軍。
革命軍の異様な姿に困惑する王国軍。
両者の士気には大きな差が生まれていた。その差がこの戦いにどれだけの影響を与えるのか、戦に長けたパシウス、そしてガンフだけだがそれに気づく。
「狼狽えるでない! 敵は見たこともない姿をしていようと、我々が行うことは変わらぬ! 剣を振り、魔法を放て! これまで研磨した己が刃を振り翳し、敵を打ち崩すのだ!」
必死に鼓舞するパシウスの声を聞き、戦士たちは咆哮する。
「「おおおおお!!」」
この雄たけびは革命軍の下まで届き、彼女らに戦いの始まりを告げた。
革命軍が屯する陣地の中で、敵の声を聞いたローゼリエッタは、熱く煮えたぎる怒りを抑えきれずに叫ぶ。
「……っ! 皆! 戦いの時です! これまで犠牲になった人たちの為にも……この戦い、勝たねばなりません!」
それに同調するようにカーシンも叫んだ。
「勇敢なるエルフの戦士よ! 我らが友は、その命を犠牲に我々を救ってくれた! 今こそそれに報いる時だ! 勇敢なる戦士よ! 死を恐れるな! 敵は目の前である!!」
「「オオオオオ!!」」
僅か四十機の巨鎧兵に、巨鎧兵隊が乗り込む。戦士は剣を、槍を、槌を、斧を握り、魔法使いは杖を抜き放つ。
やがて王国軍は進軍を開始し、革命軍もそれに応え進軍を始めた。
いよいよ、王国を止める唯一にして最後となる戦いの始まりだ。
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