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16章 休息の時
仮面の舞闘士 2
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円形に作られた仮闘技場で二つの影がぶつかり合う。
王国の一般兵士よりもがたいの良いパシウスと、年は定かではないが小柄な女。
対照的ながらもその力は意外にも拮抗し、誰もが目を見張る素晴らしい戦いとなる。
パシウスの力は強大だ。例え実践から暫し離れていたとしても、その力はそうそう錆び付くことがない。
「ふんっ!!」
先ずは小手調べの一撃をと剣を振るう。
(まずはどんな戦い方をするのか、見せてもらおうか!)
パシウスが放った様子見の一撃は、それでも一介の剣士とは一線を画す。
その速度は目視することも難しく、陽の光を浴びて煌めく残光を追うのみだ。
これに対し仮面の少女は、手に付けた籠手をうまく使って、見事にその一撃を捌いて見せた。
長く伸びた袖が靡き綺麗な円形を描く。それはまるで舞踏のようで、また神秘的な仮面も相まって、パシウスはその姿に一瞬視線を奪われてしまった。
(なんと美しい……む、いかんいかん。あれは私の敵だというのに)
先の様子見の一撃で、敵の大まかな力量を察することは出来た。結果、パシウスは目の前にいる仮面の舞闘士を強敵と認識する。
よく訓練された王国の兵士ですら、パシウスの剣をまともに受けることは難しい。それをいとも容易く熟す程の実力を有する戦士を前に、パシウスは口角を釣り上げた。
少なくとも一介の剣士を相手にするよりも楽しめる試合となるであろうと確信し、胸を高鳴らせる。
しかし奢ることはしない。最上の戦いを楽しむ為にも、彼は更に敵の情報を探るべく注意深く剣を振るう。
パシウスは、仮面の少女と数合打ち合って一つの確信を得た。
(むぅ、どうやらあの少女は武闘家のようだ。そう考えればあの釣り合いの取れない巨大な籠手も、そこはかとなく合点がいく)
華麗に舞い踊る仮面の少女は、両腕に似つかわしくない巨大な籠手をはめていた。もはやそれは籠手とは言い難く、手全体を覆い隠しているところから動物の爪のようにも見える。
ドワーフの名匠が作ったその籠手は、パシウスの振る剣を受けても傷一つつかない。
少女の体術がそれだけ高水準にある証拠でもあるが、やはりドワーフの作る武具は人間の者よりも一味も二味も違うようだ。
その頑丈な籠手に殴られれば、いかに屈強な戦士であろうとも無事では済まないだろう。
両者の技力は程よく拮抗しており、試合は誰もが感嘆する程上等なものとなる。
パシウスが振る剣撃を、仮面の少女は華麗な動きで回避する。体を独楽のように回転させながらしゃがみ込み、それと同時に足払いを仕掛けたのだ。回避と攻撃を同時に行うその攻撃にパシウスは驚愕した。
だが彼も数多の戦場を生き抜いた歴戦の戦士である。意表を突かれつつも、咄嗟に飛び退くことで何とか攻撃範囲を脱することが出来た。しかし攻撃はこれで終わりではない。逃げた剣士を逃すまいと少女は跳ぶと、細くしなやかな足を振りかぶった。
しなる細足はまるで鞭のようにパシウスを襲う。一つ破裂音が響き、次いでくぐもった声が漏れた。少女の足が見事パシウスの足を蹴り飛ばしたのだ。
しかし彼は怯むことなく続く攻撃を回避すると、伸びきった足を狙って剣を振るった。がそこに既に足はなく、代わりに巨大な籠手が剣を受け止める。
そこから先の光景は、まるで寸止め稽古のようであった。
文字通り目にもとまらぬ攻防が繰り返されているにも関わらず、指示したかのように回避され、受け止められる。
どんな洗練された一撃を放とうとも、どんな渾身の一撃を放とうとも、悉く回避される歯がゆい状況にあっても、パシウスの顔には歓喜の声がにじみ出ていた。絶えず剣を振るっているせいで息こそ上がってはいるが、表情はまるで苦しんでいない。
(素晴らしい! やはり実力の拮抗した者との戦いが、一番心が躍る!)
大抵のことは心の内で問答できる彼だが、こういった時ばかりは抑えることが出来ない。歓喜は自然と口から洩れ、高圧的な態度で辺りに力をひけらかす。
「ふははは! 一体どこにこんな素晴らしい戦士を隠していたのだ!? それとも最近合流したのか!? 兎も角、楽しい時間を感謝するぞ!!」
もう既に彼の中には、交換条件だった『拘束の緩和』など存在せず、ただただ目の前の強者と戦えることを喜ぶだけだ。
一回の攻防が終わる度に更なる欲望が湧き上がり、瞬く間に満たされていく。
もう一つ……もう一つ……
全力で打ち合える至福の時間。似通った実力を持つ友がいない彼にとって、それは夢のような時間だった。
だがそれも唐突に終わりを迎える。
突如、試合を傍観していたガンフが駆けだす。それに合わせ周囲のパラミシア兵、果てには傀儡師たちも傀儡と共に駆け出した。
「止まれ! 試合終了だ!」
ガンフの制止の声が上がる。
だが興奮したパシウスは止まることが出来ない。
「邪魔をするな! 私はまだこの者と……!」
そう叫んで剣を振るう。
丁度その時だ。仮面の少女が突然、動くことをやめ前に倒れ始めたのだ。
その先にはパシウスの剣。避けるであろうと思い振られた剣は、咄嗟に止めることが出来ない。
(何故急に止まる!? いかん! このままでは最高の好敵手が!)
既に意識が途切れているのか、仮面の少女は身じろぎ一つしない。唯振られる剣に向かって倒れてくるのみ。
パシウスの剣が少女の首を刈り取ろうかという瞬間、白く煌めく剣は同じく白く輝く剣によって止められる。
「うぉぉおお!!」
雄たけびと共に間一髪、ガンフの剣が間に合った。
振り上げた精白銀の剣により、パシウスの剣は弾かれ草原に突き刺さる。
武装が解除されたパシウスはそのまま、数人のパラミシア兵に押さえつけられ試合の終了となった。
仮面の少女は革命軍の面々に取り囲まれ、その集団を取り押さえられたパシウスは呆然と見つめていた。
王国の一般兵士よりもがたいの良いパシウスと、年は定かではないが小柄な女。
対照的ながらもその力は意外にも拮抗し、誰もが目を見張る素晴らしい戦いとなる。
パシウスの力は強大だ。例え実践から暫し離れていたとしても、その力はそうそう錆び付くことがない。
「ふんっ!!」
先ずは小手調べの一撃をと剣を振るう。
(まずはどんな戦い方をするのか、見せてもらおうか!)
パシウスが放った様子見の一撃は、それでも一介の剣士とは一線を画す。
その速度は目視することも難しく、陽の光を浴びて煌めく残光を追うのみだ。
これに対し仮面の少女は、手に付けた籠手をうまく使って、見事にその一撃を捌いて見せた。
長く伸びた袖が靡き綺麗な円形を描く。それはまるで舞踏のようで、また神秘的な仮面も相まって、パシウスはその姿に一瞬視線を奪われてしまった。
(なんと美しい……む、いかんいかん。あれは私の敵だというのに)
先の様子見の一撃で、敵の大まかな力量を察することは出来た。結果、パシウスは目の前にいる仮面の舞闘士を強敵と認識する。
よく訓練された王国の兵士ですら、パシウスの剣をまともに受けることは難しい。それをいとも容易く熟す程の実力を有する戦士を前に、パシウスは口角を釣り上げた。
少なくとも一介の剣士を相手にするよりも楽しめる試合となるであろうと確信し、胸を高鳴らせる。
しかし奢ることはしない。最上の戦いを楽しむ為にも、彼は更に敵の情報を探るべく注意深く剣を振るう。
パシウスは、仮面の少女と数合打ち合って一つの確信を得た。
(むぅ、どうやらあの少女は武闘家のようだ。そう考えればあの釣り合いの取れない巨大な籠手も、そこはかとなく合点がいく)
華麗に舞い踊る仮面の少女は、両腕に似つかわしくない巨大な籠手をはめていた。もはやそれは籠手とは言い難く、手全体を覆い隠しているところから動物の爪のようにも見える。
ドワーフの名匠が作ったその籠手は、パシウスの振る剣を受けても傷一つつかない。
少女の体術がそれだけ高水準にある証拠でもあるが、やはりドワーフの作る武具は人間の者よりも一味も二味も違うようだ。
その頑丈な籠手に殴られれば、いかに屈強な戦士であろうとも無事では済まないだろう。
両者の技力は程よく拮抗しており、試合は誰もが感嘆する程上等なものとなる。
パシウスが振る剣撃を、仮面の少女は華麗な動きで回避する。体を独楽のように回転させながらしゃがみ込み、それと同時に足払いを仕掛けたのだ。回避と攻撃を同時に行うその攻撃にパシウスは驚愕した。
だが彼も数多の戦場を生き抜いた歴戦の戦士である。意表を突かれつつも、咄嗟に飛び退くことで何とか攻撃範囲を脱することが出来た。しかし攻撃はこれで終わりではない。逃げた剣士を逃すまいと少女は跳ぶと、細くしなやかな足を振りかぶった。
しなる細足はまるで鞭のようにパシウスを襲う。一つ破裂音が響き、次いでくぐもった声が漏れた。少女の足が見事パシウスの足を蹴り飛ばしたのだ。
しかし彼は怯むことなく続く攻撃を回避すると、伸びきった足を狙って剣を振るった。がそこに既に足はなく、代わりに巨大な籠手が剣を受け止める。
そこから先の光景は、まるで寸止め稽古のようであった。
文字通り目にもとまらぬ攻防が繰り返されているにも関わらず、指示したかのように回避され、受け止められる。
どんな洗練された一撃を放とうとも、どんな渾身の一撃を放とうとも、悉く回避される歯がゆい状況にあっても、パシウスの顔には歓喜の声がにじみ出ていた。絶えず剣を振るっているせいで息こそ上がってはいるが、表情はまるで苦しんでいない。
(素晴らしい! やはり実力の拮抗した者との戦いが、一番心が躍る!)
大抵のことは心の内で問答できる彼だが、こういった時ばかりは抑えることが出来ない。歓喜は自然と口から洩れ、高圧的な態度で辺りに力をひけらかす。
「ふははは! 一体どこにこんな素晴らしい戦士を隠していたのだ!? それとも最近合流したのか!? 兎も角、楽しい時間を感謝するぞ!!」
もう既に彼の中には、交換条件だった『拘束の緩和』など存在せず、ただただ目の前の強者と戦えることを喜ぶだけだ。
一回の攻防が終わる度に更なる欲望が湧き上がり、瞬く間に満たされていく。
もう一つ……もう一つ……
全力で打ち合える至福の時間。似通った実力を持つ友がいない彼にとって、それは夢のような時間だった。
だがそれも唐突に終わりを迎える。
突如、試合を傍観していたガンフが駆けだす。それに合わせ周囲のパラミシア兵、果てには傀儡師たちも傀儡と共に駆け出した。
「止まれ! 試合終了だ!」
ガンフの制止の声が上がる。
だが興奮したパシウスは止まることが出来ない。
「邪魔をするな! 私はまだこの者と……!」
そう叫んで剣を振るう。
丁度その時だ。仮面の少女が突然、動くことをやめ前に倒れ始めたのだ。
その先にはパシウスの剣。避けるであろうと思い振られた剣は、咄嗟に止めることが出来ない。
(何故急に止まる!? いかん! このままでは最高の好敵手が!)
既に意識が途切れているのか、仮面の少女は身じろぎ一つしない。唯振られる剣に向かって倒れてくるのみ。
パシウスの剣が少女の首を刈り取ろうかという瞬間、白く煌めく剣は同じく白く輝く剣によって止められる。
「うぉぉおお!!」
雄たけびと共に間一髪、ガンフの剣が間に合った。
振り上げた精白銀の剣により、パシウスの剣は弾かれ草原に突き刺さる。
武装が解除されたパシウスはそのまま、数人のパラミシア兵に押さえつけられ試合の終了となった。
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