反魂の傀儡使い

菅原

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21章 画策

町の様子

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 食事も終わる頃、三人はすっかり打ち解けていた。町での生活の話や人形の話、好きな食べ物の何か、といった世間話が続く。その過程で、話は今後の動向へと移り始めた。
「ところで、ロゼは今後どうするつもりだ?」
 ジェインの問いかけに、ローゼリエッタは迷わずに答える。
「まずは近くの町まで行くつもりです。町の様子も気になるし……それにお店の方も……」
「お店?」
 呟きとなった少女の言葉を聞き、次に問いかけたのはキャロルだ。露店を眺めるのが趣味である彼女は、少女の言葉にとても興味を持った。
「ええ、私、スフィロニアに人形を売るお店を持っているんです。兄さんの提案で始めたんですけど、お休みにしっぱなしだったから心配で」
「まぁ、お人形のお店!? 聞いたこともないわ!」
 ここから女二人組は、更に声を上げて盛り上がる。


 翌朝。三人は早々に旅支度を済ますと、スフィロニアを目指し人形の館を立つ。
 町への道は慣れたものだ。
 昨晩の魔物の存在から皆大分警戒を強めてはいるが、特別彷徨ったりするわけではない。
 隊列はジェインが前に立ち、間にキャロルとローゼリエッタが並ぶ。そして最後尾はローゼリエッタが操る傀儡人形パンドラが防衛についていて、四方隙の無い布陣となっている。

 森は、ローゼリエッタが知る森と何ら変わらない姿でそこにあった。
 相変わらず空は青く、木々の隙間から漏れる光が森の道を照らしている。野鳥の囁きに風が木々を揺らす音。その環境音の中に、まだ不穏な音は聞こえない。
「昨日はあんなのが出ましたけど……あんまり大きな変化があるようには見えませんが」
 周囲を見渡しながら呟くローゼリエッタ。
 それには前を歩くジェインが、振り向くことなく答えた。
「気を抜くな。三日あった調査期間中もこうだった。……平穏なんだ。森はな」
 意味深長な言葉に、続いてキャロルが口を開く。
「多分だけど、黒き獣は生物じゃないんだと思うの。だから、鳥が囀るような音は自ら出さない。だから……感知魔法にも反応しない」
 再び昨日の事を思い出したのか、キャロルは悔し気な表情を浮かべた。

 視界の悪い森の中で、感知魔法に頼ることが出来ないのは非常に厄介だ。戦士の中には魔法を使わずに気配を感知できる者もいるにはいるが、そういった技能を持つ者はごく少数で、多くの戦士、部隊は、魔法使いの感知魔法を頼ることになる。
 キャロルにジェインが参加した五人の調査部隊も通例通りで、キャロルの感知魔法に反応がないからと、すっかり気を抜いていた。
 だがその結果起きた事柄を知る今の彼女たちに、そういった慢心は一切ない。
 少なくとも森を抜けるまでは、三人の警戒水準は最上級まで引きあがっている。

 人形の館からスフィロニアまでは、子供の足でも往復一日程度の旅路となる。こんなもの、旅慣れた戦士にとって旅とは言えない。当然ここに集まる三人にとっても同じことで、一番日の浅いであろうローゼリエッタでさえも、ドワーフの集落から人形の館までの道のりと比べれば、散歩のような距離でしかない。
 程なくして、無事森から抜け出た三人は、一番近くにある町、スフィロニアに辿り着くことが出来た。


 スフィロニアに辿り着いたローゼリエッタたちは、後で再び会うことを約束し、一時解散することに決める。
 キャロルとジェインは雇い主への報告へ。ローゼリエッタは自分の店舗へと向かう事になり、各々目的地へと急いだ。

 町の様子も先程までの森と同様、以前と然程変わらぬ姿だった。活気にあふれ、中はまだまだ人がいて賑やかな物だ。
 しかし微々たる違いはある。例えば……町を往来する人の種類。かつてのスフィロニアでは、子供を連れ夕食の買い出しをする女や仕事帰りの農夫。自店の為に行商を行う商人が大多数を占めていた。ところが今では大分違う。剣や斧を携えた屈強な戦士、杖を腰に差す聡明な魔法使い。戦う事を本職とした者達が多くを占めている。
 また、街に幾つかある商店街通りの店構えも大分変わっていた。
 以前は食料や生活要因を扱う店ばかりだったのだが、今では数多くの武具屋、薬屋で埋め尽くされている。
 どれもこれも、黒き獣、魔物が現れたからだ。
「風変りしたのね。私のお店は大丈夫かしら」
 少女のうちにふと湧き上がる疑問。これだけ店構えが変わっているのに、店主がいない人形店が許されているのだろうか。
 ローゼリエッタはその疑問を払拭すべく、足早にドール・ロゼへと向かう。
 
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