探求の槍使い

菅原

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真実の姿

平和の意味

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 彼らの選択肢は確実に狭まっていた。かつては皇国を陰から支配する者の下で、あらゆる自由が保障されていたが、現在その支配者は夢の中だ。更に正当な指導者が現れ、これまでの不正を裁こうとしている。
 ふつふつと、スィックルの怒りが湧き上がる。
「……今更のこのこ出てきて何を偉そうに……! これまでこの国を支えていたのは貴方ではない! 優しき前法皇様と、そこに居られる総帥様ではないか! この国を誰からも称えられる国に作り上げたのは、先人様方の努力の賜物なのだ!」
 今はまだ剣を出さない。苛立ちを唯ぶつけているだけだ。

 かつてのコルクレアであれば、その迫力に恐れをなしていただろう。背後に控える兵士の背に隠れ、がくがくと震えていたかもしれない。だが今の彼は違う。凶悪な顔の戦士を前に、怯むことをしない。
「確かに貴方方は、これまで皇国の為に尽力してくださった。前法皇……僕の父上もその事にはよく感謝していました。だけど、皇国の為という理由を盾に何をしても良いわけじゃない」
「知った風な口を叩かれる! ではどうなさるおつもりで? 大陸一平和と謳われる法国でも、こうした族が犯罪を積み重ねているのです。それを逐一国民に告げていては、国の民の心に平穏など訪れないでしょうに」
 スィックルは視界の端に佇んでいる盗賊一行を睨みつけた。
 コルクレアは、彼が言う罪人を見渡した。傷ついている者もいる。中でもスィックルの横に倒れている槍使いと、少女の足元に倒れている上級兵士は身動きをしていない。
(急がないと……)
 コルクレアは一生懸命考えた。この場を早く収める方法を。だが有効な打開策が思いつかない。どれだけ心情に変化があろうとも、彼はまだ子供。持ち得る情報にも限りがある。
 それでも幼き指導者は必死に考え、一つの答えを出した。
「罪を犯すからには相応の理由がある筈。それを少しずつ解決していけば、何時かは平和な国になれると思う」
 精一杯考えて出した平和の道筋。しかしスィックルには届かない。
「……法皇様、貴方はやはりまだ子供であられる。そんな綺麗事が通じる程、この世は優しくないのです。弱肉強食、弱き者は強き者に貪り食われているのが現実なのですよ。罪人の要求を聞くですって? そんなことをすれば要求がどんどん激化していくだけです。話し合いで全てが解決するのであれば、我々のような兵士も、戦いも必要ない」
 大きな落胆のため息が聞こえた。
 コルクレアは、自身が幼く、知識が無いと知っている。そのうえで、彼なりの打開策を打ち出して見せた。だが幼き指導者が求める平和の国と、戦いに明け暮れた兵士が求める平和の国には、大きなずれが生じていた。そしてコルクレアには、その違いを解く話術を持ち合わせていない。

 言葉に詰まるコルクレア。
 静まり返る中庭に、更にため息が聞こえる。
「……ほら、この通り話し合いで解決できないこともあるのですよ。当然です。どちらも我を通せば、着地点は永久に訪れない。だから私たちは……剣を握るのです」
 スィックルは腹を決めた。彼と、彼の指導者が目指す平和の国の為に、武力行使に移ることを。その為に彼は、剣を握る手に力を籠める。相手は見下ろすのも恐れ多い皇国の王。だが彼はまだ唯の子供だ。一刀のもと、容易く屠ることが出来るだろう。法皇の周囲には兵士が何人も控えているが、それらの実力では彼の剣を止めることは出来ない。仮に法皇を葬り去った後一斉に襲い掛かってきたとしても、彼の背後には英雄の卵が六人も控えている。
(これは……法国の平和のためだ!)
 その大義名分のもと、スィックルは剣を振り上げた。

 彼が剣を振り下ろそうとした瞬間。彼の集中力を邪魔する声が蹴られた。
「弱肉強食。分かり易くて僕は好きだよ」
 神経を逆なでするような軽口。それを無視してスィックルは剣を振るった。しかし……

ギィイン!!

 突如、腕に衝撃が走る。鈍重な痛み。容易く屠れると思っていたためか、若干手を抜いていたのがいけなかった。
 唐突に与えられた下への衝撃により、スィックルが振るった剣は狙いを逸れ地面に突き刺さる。
「ぐっ!? 一体何が……!」
 驚愕するスィックルだったが、近くに転がっていた物を見て更に驚愕した。
 転がっていたのは一本の矢。それを見たスィックルは、咄嗟に頭上の木を見上げる。
「お前が言うこと、僕にはわかるよ。だから存分にやり合おうじゃないか」
 放ち終えた弓に再び矢を番える。それを見て、スィックルは笑った。
「ふっ、良く抗えるものだ。この胸の徽章の意味が分かりますか? この徽章は、時と場所が違えば、貴方の父君と同じ英雄となれるだろうと認められた証です。私を含め、この場に七人。貴方は父君と同等の戦士七人を相手にすることになるのですよ? 大人しくしておくのが利口だと思いますが」
 地面に刺さった剣を抜き、魔法の木の下に立たずむ狼を睨む。彼の周囲にいる英雄の卵らもそれぞれ武器を構えた。
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