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1章
人殺し
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僕は走り出そうとする男の子の腕をつかむ。
「なんだよ!離せ!俺はリンナを助けに行くんだ!」
かなり自暴自棄になっているようだ。
一度落ち着かせなくては。
連れていかれたという言葉から、昨日の盗賊団が思い出される。
幾ら奴等が弱くても子供ではどうしようもないだろう。
僕は膝をつき、目線を合わせると努めて優しく声をかける。
「少し落ち着け!……いいか?僕に任せて。力になれると思うよ」
「おじさん、冒険者か?」
おじさん……まぁ、確かにおじさんか……
気落ちしてる場合じゃない。
「そうだ。妹を連れて行ったのは例の盗賊団か?」
無言で頷く少年は、小さな声でいった。
「俺、金ないぞ」
「いらないよ。困っている人を助けるのは当り前だろ」
こんな切羽詰まった状況でも、金の事を心配しなければならない程に、この世界には救いの手が無いのだろうか?
無料ということを聞いて、漸く男の子に笑顔が見えた。
「あ、後で出せっつっても駄目だからな!」
「わかったわかった。それで、そいつらは何処に行ったんだ?」
「町はずれの洞窟に……」
町はずれにある洞窟というと、ララウの洞窟の事だろうか。
聞いてみると少年は確かにそうだと頷いた。
目的地は判った。
後はこの子の昂った気持ちを落ち着かせるだけだ。
「君、名前は?」
「リ……リッツ」
「よし、リッツ君。僕が必ずリンナちゃんを助ける。だから君は町で待っているんだ」
こういう時は不安を与えては駄目だ。
百パーセントなんてありえないけど、断言しないと被害者は安心できない。
案の定リッツは安堵の表情を浮かべると、黙って頷き町の中へと走っていった。
その姿を見守って立ち上がる。
目指すはララウの洞窟だ。
宿に戻って少し外出することを伝える。
全ては伝えてないため、騒ぎにはならなかった。
ヤナには町から出ないことを伝えて、僕は急いで準備をするとクイカの町を飛び出した。
森の中を歩き、目的地を目指す。
ララウの洞窟はクイカの町から北東にある洞窟で、町で起きるイベントで行く場所だった。
ゲームではこれほど切迫したイベントではなかったけど……
程なくして洞窟につく。
やはり一度通ったことがあるというのは全然違う物だ。
洞窟の入口には見張りが二人立っていた。
辺りには動物の死骸や、食い散らかした果物のへたとかが散乱している。
前の世界の生活を知っている身としては、何とも不衛生な景色に顔を顰めざるを得ない。
様子見もほどほどに、兎も角行動に移さねばならない。
あの少年が妹というのだから、性的暴行なんてことにはならないだろうが、代わりに生命が失われる危険性が高い。
僕は武器屋で買った苦無を道具袋から取り出した。
LSOでは、道端に転がる石や、木の枝を折って手に持つことで、アイテム化して所持することが出来た。
それ故にそういったものを使うスキルも幾つか用意されている。
僕が発動したのは、『投擲術』のスキル。
投げるものに威力的な補正をかけ、更に命中率にも補正がかかる。
視界がまるで、カメラのズーム機能に加えスロウ機能が備わったように変化し、身体がイメージ通りの軌道に投擲を可能とする。
一つ。二つ。
飛んでいった苦無は見張りの喉へと突き刺さる。
……喉へと……?
見張り兵は驚愕と苦痛に目を見開き、助けを呼ぶことも出来ず、多量の血を吐いて地面に倒れる。
辺りには血の匂いが充満し、僕は吐き気がこみ上げてきた。
人を……殺した。
何の気無しだった。
ゲームの時のように、声が出なくなるギミックが発動する喉を目掛けて投擲したのだ。
確かに彼らは声が出なくなった。
だがそれと同時に命も潰えてしまった。
僕は……人を……?
何とも呆気なく人殺しとなってしまった物だ。
吹き出る脂汗。
焦燥感に自責感。
僕の精神は必死に人を殺した事を正当化する理由を模索する。
こうしなければ応援を呼ばれていた。
こうしなければリンナちゃんに危害が及んでいた。
こうしなければ……こうしなければ……
「うっ、げぇぇぇ!」
こみ上げる吐き気を抑えきれず、朝食を吐き戻す。
(僕は人殺しに……?)
これが正義の味方を目指した僕がしたこと?
僕は知っている。
この世界で命の奪い合いは日常茶飯事であることを。
僕は知っている。
アイツらはこれまで、死んで当然と言える程人を苦しめていただろう事を。
僕は知っている。
盗賊団を全員殺したとしても、町の人たちは僕に感謝するだろうことを。
でも僕は……
はいてすっきりしたのか、開き直ったおかげか、僕は当初の目的を思い出す。
そうだ。僕は人を助けに来たんだ。
倒れる死体を出来るだけ見ないように、僕は洞窟の中へと入っていった。
「なんだよ!離せ!俺はリンナを助けに行くんだ!」
かなり自暴自棄になっているようだ。
一度落ち着かせなくては。
連れていかれたという言葉から、昨日の盗賊団が思い出される。
幾ら奴等が弱くても子供ではどうしようもないだろう。
僕は膝をつき、目線を合わせると努めて優しく声をかける。
「少し落ち着け!……いいか?僕に任せて。力になれると思うよ」
「おじさん、冒険者か?」
おじさん……まぁ、確かにおじさんか……
気落ちしてる場合じゃない。
「そうだ。妹を連れて行ったのは例の盗賊団か?」
無言で頷く少年は、小さな声でいった。
「俺、金ないぞ」
「いらないよ。困っている人を助けるのは当り前だろ」
こんな切羽詰まった状況でも、金の事を心配しなければならない程に、この世界には救いの手が無いのだろうか?
無料ということを聞いて、漸く男の子に笑顔が見えた。
「あ、後で出せっつっても駄目だからな!」
「わかったわかった。それで、そいつらは何処に行ったんだ?」
「町はずれの洞窟に……」
町はずれにある洞窟というと、ララウの洞窟の事だろうか。
聞いてみると少年は確かにそうだと頷いた。
目的地は判った。
後はこの子の昂った気持ちを落ち着かせるだけだ。
「君、名前は?」
「リ……リッツ」
「よし、リッツ君。僕が必ずリンナちゃんを助ける。だから君は町で待っているんだ」
こういう時は不安を与えては駄目だ。
百パーセントなんてありえないけど、断言しないと被害者は安心できない。
案の定リッツは安堵の表情を浮かべると、黙って頷き町の中へと走っていった。
その姿を見守って立ち上がる。
目指すはララウの洞窟だ。
宿に戻って少し外出することを伝える。
全ては伝えてないため、騒ぎにはならなかった。
ヤナには町から出ないことを伝えて、僕は急いで準備をするとクイカの町を飛び出した。
森の中を歩き、目的地を目指す。
ララウの洞窟はクイカの町から北東にある洞窟で、町で起きるイベントで行く場所だった。
ゲームではこれほど切迫したイベントではなかったけど……
程なくして洞窟につく。
やはり一度通ったことがあるというのは全然違う物だ。
洞窟の入口には見張りが二人立っていた。
辺りには動物の死骸や、食い散らかした果物のへたとかが散乱している。
前の世界の生活を知っている身としては、何とも不衛生な景色に顔を顰めざるを得ない。
様子見もほどほどに、兎も角行動に移さねばならない。
あの少年が妹というのだから、性的暴行なんてことにはならないだろうが、代わりに生命が失われる危険性が高い。
僕は武器屋で買った苦無を道具袋から取り出した。
LSOでは、道端に転がる石や、木の枝を折って手に持つことで、アイテム化して所持することが出来た。
それ故にそういったものを使うスキルも幾つか用意されている。
僕が発動したのは、『投擲術』のスキル。
投げるものに威力的な補正をかけ、更に命中率にも補正がかかる。
視界がまるで、カメラのズーム機能に加えスロウ機能が備わったように変化し、身体がイメージ通りの軌道に投擲を可能とする。
一つ。二つ。
飛んでいった苦無は見張りの喉へと突き刺さる。
……喉へと……?
見張り兵は驚愕と苦痛に目を見開き、助けを呼ぶことも出来ず、多量の血を吐いて地面に倒れる。
辺りには血の匂いが充満し、僕は吐き気がこみ上げてきた。
人を……殺した。
何の気無しだった。
ゲームの時のように、声が出なくなるギミックが発動する喉を目掛けて投擲したのだ。
確かに彼らは声が出なくなった。
だがそれと同時に命も潰えてしまった。
僕は……人を……?
何とも呆気なく人殺しとなってしまった物だ。
吹き出る脂汗。
焦燥感に自責感。
僕の精神は必死に人を殺した事を正当化する理由を模索する。
こうしなければ応援を呼ばれていた。
こうしなければリンナちゃんに危害が及んでいた。
こうしなければ……こうしなければ……
「うっ、げぇぇぇ!」
こみ上げる吐き気を抑えきれず、朝食を吐き戻す。
(僕は人殺しに……?)
これが正義の味方を目指した僕がしたこと?
僕は知っている。
この世界で命の奪い合いは日常茶飯事であることを。
僕は知っている。
アイツらはこれまで、死んで当然と言える程人を苦しめていただろう事を。
僕は知っている。
盗賊団を全員殺したとしても、町の人たちは僕に感謝するだろうことを。
でも僕は……
はいてすっきりしたのか、開き直ったおかげか、僕は当初の目的を思い出す。
そうだ。僕は人を助けに来たんだ。
倒れる死体を出来るだけ見ないように、僕は洞窟の中へと入っていった。
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