正義の味方!

菅原

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1章 

スニーキングミッション

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 ララウの洞窟は入り組んだ迷路のようになっている。
ゲームの中ではマップを表示出来たから迷うことは無かったけど、現実ではそんなこと出来ない。
それでもこの切迫した状況下で泣き言は言えないから、僕は頭の中で、必死にマップを思い出しながら、静かに奥へと進んでいく。

 程なくして、少し広めの部屋につく。
切り出された石で舗装されているようで、綺麗な四角い部屋だ。
通路の入口付近には食料のような荷物が積まれていて、身を隠すことも出来そうだ。
僕は荷物の陰に身を潜め、注意深く辺りを確認する。
 部屋の奥には通路が二本続いていた。
そして、部屋の左右に設けられた通路を監視するかのように、部屋の中央には机と椅子が置いてあり、三人のガラが悪い男たちがグラスを傾けている。
空いたグラスに注いでいるのは、瓶の形からワインのような酒類のようだ。
 寄った人間は判断力、注意力が散漫になる。
僕は腰に付けた苦無に手を伸ばしたが、先の事を思い出し手をひっこめた。
(駄目だ。どんな理由があってもこれ以上殺しちゃ駄目だ。そんなんじゃ正義の味方だなんて言えない)
もう既に二人殺しているのだけど、二人殺したからじゃあもう一人、なんて許される筈が無い。
落ち込む気力を必死に支え、無理やりテンションを上げていく。
(これは……そう!隠密作戦スニーキングミッションだ。敵に気付かれずに近づき、気絶させる。仲間を呼ばれなかったらボーナスさ)
軽い現実逃避を行いながら、僕はスキル『隠密スニーキング』を発動する。

 『隠密』とは体から出る足音、衣擦れといった音を限りなく消し、気づかれずに移動するスキルだ。
少し乱暴に服を擦り、足を軽く踏み鳴らす。
どれも音が出ないことを確認して、僕は荷物の陰から歩き出した。
お誂え向きに何か所かに荷物が置いてある。
何か問題があった時に全てをダメにしないための対処なのだろうか?
兎も角これは有難い。
 奴等が酒の入ったグラスを傾ける度に、荷物から荷物へと身を移す。
それを三度繰り返して漸く、僕は一息で奴らに近づける場所までやって来た。

 近づいたことで、奴らの声が聞こえてくる。
それでなくても此処は洞窟の中。
男たちのげひた言葉が響く。
「しかし、親分にも困ったものだなぁ」
「まったくだ。あんな小さいガキのどこがいいんだか」
「しっ、聞かれたらどうすんだ!……まぁ、俺ももっと熟れた女の方がいいけどよ」
下品な笑い声をあげながら、酒とつまみを食らう男たち。
その行動を羨ましく思いつつも、言葉は聞き逃せる筈が無い。
(嘘だろ……?リッツが十歳も行かない位なのに……どんだけ少女趣味なんだよ!)
これで命を奪われる危険は薄くなったが、代わりに幼い少女の純潔が危うくなってしまった。
子供の、それも女性の力では屈強な男に適うはずもない。
一層時間に余裕がなくなる。

 男たちの一人がグラスを傾けた時を狙って、僕は物陰から躍り出る。
『隠密』の効果はまだ続いているうえに、こちらを向く男はグラスを煽っていて視線は上を向いている。
残りの二人もこちらに背を向けつまみを貪っているから誰も僕には気づかない。
 背を向ける男の一人に、気絶状態を引き起こす武闘スキル『霞撃ち』を発動する。
背後から二つの腕が伸び、顎に軽い打撃を加える。
もう一つの手で頭の上を叩き、その衝撃は脳に激しい振動を与えた。
 注意していれば気付けたかもしれないが、注意力散漫な男達に腕を見られることは無く、咀嚼していたものを口から垂らして頭が机に落ちた。
 突然上がる大きな音に驚き、すぐ隣の男が声を上げる。
「おい!どうし……」
叫ぶ声を遮るように、次のスキルを発動する。
相手を睡眠状態にする『#催眠__スリープ__#』は相手を深い眠りに落とす魔法スキルだ。
こういった状態異常を引き起こすスキルは、大抵が彼我のレベル差によって成功率が変わる。
幸運なことにもこれまで失敗は無かったが、確実性を求め『霞撃ち』を使いたかった。
しかし各スキルには、レベルに比例する準備時間(クールタイム)が存在する。
確認はしていないけど、今の今その存在に邪魔されても困る。
そして恐らく……
気絶した男に声をかけた奴は、耐えがたい睡魔を受け、間抜けな声を出して地面に崩れ落ちた。
『催眠』は無事成功し男は深い眠りについたのだ。
 二人を無力化して漸く、こちらを向いてグラスを傾けている男が反応を見せる。
「きっ、貴様!」
叫び声とは程遠いかすれ声をあげ、男は椅子に立てかけてある剣に手を伸ばす。
僕は慌ててその手を掴み、地面に引き倒した。
アルコールが入り、酔いが回った頭は、強かに地面に叩きつけられ、あっさりと意識を手放す。
後に残ったのはだらしなく突っ伏す三人の男だけ。
 僕はそいつらの両腕を、食料を縛っていたであろう近くにあった縄で縛ると、一つため息を吐いて通路を見渡した。
 
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