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第一章 最強聖女の復讐
第4話「光の女神」
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懐かしい声が、古びた神殿の内部から聞こえ、
私はそっと開かれた扉から
神殿内部へ足を踏み入れた。
そこには、何も装飾品などもなく、
大きな丸い円を描く場所の奥に
光の女神の像があるだけで人もいない。灯りもない。そんな場所の中央、円の中央にこちらを見て
微笑む美しい女性がただ一人佇んでいた。
「ソルティア様……」
「お久しぶりです、ルミエール。
あなたを呼んだのは、
他でもない今回の件に関してです」
私は少しだけ歩を進めてソルティア様の表情が
見えやすい近い距離まで詰めてその場で会釈をする。
私が次期王太子妃として王城に招かれる前。
まだ病弱だった母と暮らしていた6歳の頃に、
ソルティア様とは、デルソーレ王国内にある
教会でお会いしたことがある。
幼かった私は、ほぼ部屋の中に篭りきりで、
どこかへ母とお出かけをしたことがなかったから、
いつもいつも、ソルティア様とお会いする日が
楽しみでならなかった。
10年近くぶりに見る、ソルティア様は
あの時から何一つ変わっていない。
ただ、変わっているとしたら、私を見つめる瞳が
哀しみを帯びていることくらいだろうか。
「はい……デルソーレ王国の第一王子、クシオン様から
婚約破棄と国外追放を命じられまして」
「ええ、私も見ていましたから知っています。
……もうこの国に生きる人々は、
私たち神々の存在を信じてはいないのですね……」
「ソルティア様、ですから私に
この国へ復讐をする機会を頂けませんか?」
哀しみと呆れの色を宿すソルティア様の瞳を
一心に見つめながら、私はただ今心の内を満たす
彼らへの復讐心をソルティア様へ曝け出す。
「復讐……ですか。それは彼らが
あなたに何か酷い真似をした、ということですね?」
「えぇ。第一王子殿下は私が母の形見として
大切に持っていたペンダントを
子爵令嬢のエメラルダス様に貢ぐためにお金に替え、ましてや聖女の力などまやかしだといつも
怒鳴り散らしては私に暴力を振るうお方でした。
加えて、この国の貴族たちは
私が平民出身であることをどうにも
毛嫌いしていらっしゃったようで、
社交界の場であらぬ噂や陰口を叩いて、
私を見下しておりました。
国王陛下や王妃殿下にも
婚約者であるクシオン殿下から
暴力を振るわれていると報告をしたのですが、
聞く耳を持ってくれず……そうして今に至るわけです」
私がデルソーレ王国へ復讐をしたいと言い出すとは
思っていなかったようで驚いた表情をしていた
ソルティア様だが、何か察しがついたようで
私にここ6年間のことを話すように、と言われた。
大雑把ではあるけれど、今までされてきたことを
ソルティア様へ打ち明けることにした。
「そして、つい最近になって、
平民の皆さんにも聖女なんてまやかしだ!
結界なんて存在しない!という
罵倒を浴びせられました」
「なんということを……!」
私が大雑把に、日々言われてきたことを告げると
今まで見たことのなかった、ソルティア様の
怒りの表情が垣間見えました。
ソルティア様はとても情に厚いお方で、怒ることなど
ほとんどなかったようなお優しい方です。
そんなお方をここまで苛立たせるだなんて……
つくづくこの国は終わりだな、と思うのです。
「良いでしょう。
あなたのその心が満足するまで、復讐を決行なさい。
私はあなたを非難などしません。
これは、神を信じぬ愚か者へ与える罰です。
それを、あなたが私の代行者となり、行いなさい」
「分かりました。
……そして、許可を頂き感謝致します」
「いいえ。あなたは6年間、良く堪えました
あなたのその苦悩に気付かず、
手を差し伸べなかった私にも非はあるのです」
私はソルティア様に深く頭を下げ、
最大限のお辞儀をした。
そんな私の頭を優しく撫で、ソルティア様は
微笑みを残して、この場から姿を消した。
──さぁ、ここからが本番。
神の怒りをその身に喰らえよ、愚かなる王国民たち。
私はそっと開かれた扉から
神殿内部へ足を踏み入れた。
そこには、何も装飾品などもなく、
大きな丸い円を描く場所の奥に
光の女神の像があるだけで人もいない。灯りもない。そんな場所の中央、円の中央にこちらを見て
微笑む美しい女性がただ一人佇んでいた。
「ソルティア様……」
「お久しぶりです、ルミエール。
あなたを呼んだのは、
他でもない今回の件に関してです」
私は少しだけ歩を進めてソルティア様の表情が
見えやすい近い距離まで詰めてその場で会釈をする。
私が次期王太子妃として王城に招かれる前。
まだ病弱だった母と暮らしていた6歳の頃に、
ソルティア様とは、デルソーレ王国内にある
教会でお会いしたことがある。
幼かった私は、ほぼ部屋の中に篭りきりで、
どこかへ母とお出かけをしたことがなかったから、
いつもいつも、ソルティア様とお会いする日が
楽しみでならなかった。
10年近くぶりに見る、ソルティア様は
あの時から何一つ変わっていない。
ただ、変わっているとしたら、私を見つめる瞳が
哀しみを帯びていることくらいだろうか。
「はい……デルソーレ王国の第一王子、クシオン様から
婚約破棄と国外追放を命じられまして」
「ええ、私も見ていましたから知っています。
……もうこの国に生きる人々は、
私たち神々の存在を信じてはいないのですね……」
「ソルティア様、ですから私に
この国へ復讐をする機会を頂けませんか?」
哀しみと呆れの色を宿すソルティア様の瞳を
一心に見つめながら、私はただ今心の内を満たす
彼らへの復讐心をソルティア様へ曝け出す。
「復讐……ですか。それは彼らが
あなたに何か酷い真似をした、ということですね?」
「えぇ。第一王子殿下は私が母の形見として
大切に持っていたペンダントを
子爵令嬢のエメラルダス様に貢ぐためにお金に替え、ましてや聖女の力などまやかしだといつも
怒鳴り散らしては私に暴力を振るうお方でした。
加えて、この国の貴族たちは
私が平民出身であることをどうにも
毛嫌いしていらっしゃったようで、
社交界の場であらぬ噂や陰口を叩いて、
私を見下しておりました。
国王陛下や王妃殿下にも
婚約者であるクシオン殿下から
暴力を振るわれていると報告をしたのですが、
聞く耳を持ってくれず……そうして今に至るわけです」
私がデルソーレ王国へ復讐をしたいと言い出すとは
思っていなかったようで驚いた表情をしていた
ソルティア様だが、何か察しがついたようで
私にここ6年間のことを話すように、と言われた。
大雑把ではあるけれど、今までされてきたことを
ソルティア様へ打ち明けることにした。
「そして、つい最近になって、
平民の皆さんにも聖女なんてまやかしだ!
結界なんて存在しない!という
罵倒を浴びせられました」
「なんということを……!」
私が大雑把に、日々言われてきたことを告げると
今まで見たことのなかった、ソルティア様の
怒りの表情が垣間見えました。
ソルティア様はとても情に厚いお方で、怒ることなど
ほとんどなかったようなお優しい方です。
そんなお方をここまで苛立たせるだなんて……
つくづくこの国は終わりだな、と思うのです。
「良いでしょう。
あなたのその心が満足するまで、復讐を決行なさい。
私はあなたを非難などしません。
これは、神を信じぬ愚か者へ与える罰です。
それを、あなたが私の代行者となり、行いなさい」
「分かりました。
……そして、許可を頂き感謝致します」
「いいえ。あなたは6年間、良く堪えました
あなたのその苦悩に気付かず、
手を差し伸べなかった私にも非はあるのです」
私はソルティア様に深く頭を下げ、
最大限のお辞儀をした。
そんな私の頭を優しく撫で、ソルティア様は
微笑みを残して、この場から姿を消した。
──さぁ、ここからが本番。
神の怒りをその身に喰らえよ、愚かなる王国民たち。
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