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秘密の関係
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あれから一週間が経った。俺とユーリの暮らしは以前と変わらず、穏やかに続いている。
あの会見後も、ユーリの人気は変わらぬままだ。いや、今まで抱かれたい男一位の最上位種というユーリに、嫉妬からくる嫌悪感を抱いていた者もユーリに好意的になったので、上向きになったといった方がいいのかもしれない。耳色に関係なく、相手の能力を認めているという発言が、ユーリの上っ面だけを見て毛嫌いしていた連中も魅了したのだ。
その話を聞き、皮肉なもんだな、と苦い顔をした俺に対し、ユーリは抱きついてきてこう言った。
ダイくんに想いを受け入れてもらった充実感が人の心の幸せな箇所を刺激したんだと思うよ、と。
俺のことで満たされたユーリを見て、周りの人々にも幸せが感染していったのか。胸が擽ったくなるような喜びと同時に、ユーリの幸せで俺以外の奴が満たされることへの嫉妬も沸き上がってきた。
ユーリは、会見での発言を撤回していない。想いを告げる前の俺に、会見で本心を語るのを躊躇った故の嘘だったのだが、ユーリの株が上がっている今、嘘をついていたとは口が避けても言えないのだ。
それは、プロデューサーのアンナさんの指示なのだけれど、ユーリはそれに従っている。だから、世間では俺とユーリは、ただの家政夫と雇い主という関係だと認識されている。
それに不満を抱える俺を見て、ユーリは嬉しそうに微笑むのだ。
ダイくんが僕を想ってくれている証拠だね、と。
俺自身は、この気持ちが恋なのかは、まだよく分かっていない。
ただ、ユーリを独占したいと思う。何度キスをしても、もっとしたいと思うし、抱きたいとも思う。
それは、自分が満たされるからというのもあるが、ユーリがとても幸せそうな顔になるから、それを見たいという思いの方が強い。
最近のモデルのユーリは、今までにも増して輝いている。
俺に向けての輝きだったものが、今は俺以外にも向いているからだ。それは両親であったり、かつての自分のように自信がなくて俯いている人に対してであったり。
ユーリの仕事に影響が出たら困るので、世間の捉え方に不満でも我慢ができるのだ。
ユーリを第一に考えられるということは、ユーリに恋しているということなのだろうか?
一週間前から、ユーリのベッドで一緒に眠るようになった。そこで体を繋げて、そのまま眠っているからだ。
繋がりを解き、眠りにつくまでの間、ユーリは十年にも渡る俺への片想いの話を聞かせてくれる。世間には公表できない秘密の関係に不満を抱えている俺を、こんなにも想っているんだと安心させてくれるための、ユーリの気遣いなのだろう。
連れ込み宿屋での出会いは偶然だったが、ユーリは探し求めていた相手だとすぐに分かったそうだ。凛とした真っ直ぐで力強い瞳が同じだったから、とうっとりして言うユーリに、なんだか照れてしまった。
あのあとユーリは、俺の後をつけたのだという。そして、俺の住処を突き止めた。更に、俺の住処の近くに家を探して、引っ越してきたと言うではないか。
例の女社長とホテルの関係は事実だが、気に病むほどのものではなかったそうだ。俺の住処の近くで暮らしたいというのが、引っ越しの真相だったのだ。
ストーカーみたいでごめんね、と泣きそうな顔で謝ってきたユーリだが、一切不快感は沸いてこなった。反対に、そこまで想われていたと知り、嬉しさが込み上げてきた。
時間ができると、俺の住処を見つめていたというユーリ。全然気づかなかったが、玄関の左側の扉の先にある物置から、俺の住処が見えるのだそうだ。
部屋が引っ越ししたままの状態で片付いていなかったのは、仕事が忙しかったのもあるが、全ての時間を俺の住処を眺めるのに使っていたからだったのだという。
公園での再会も、彷徨う俺を見つけたユーリが、偶然を装って声を掛けてきたのだという。
俺にくれた服も、サイズ間違いをプレゼントされたわけではなく、いつか俺に着てもらえたらと俺の着た姿を想像して、ユーリが選んで買っておいてくれたものだった。
服を抱き締めて、自分を慰めたことがあると聞いた時には、さすがに驚いたが。
俺に抱かれるのを想像して後孔を弄り、溢れる想いに耐えていたのだという。
自分の指は挿れていたが、誰にも抱かれたことはないと教えてくれた。恋をしたのも俺が初めてで、キスをしたのも、体を繋げたのも俺が初めてなのだそうだ。
嘘はつきたくないと、全てを赤裸々に語ってくれたユーリ。
狂愛と背中合わせの行動も、それだけ俺を想ってくれていたのだと思うと、愛しさを覚えた。
あの会見後も、ユーリの人気は変わらぬままだ。いや、今まで抱かれたい男一位の最上位種というユーリに、嫉妬からくる嫌悪感を抱いていた者もユーリに好意的になったので、上向きになったといった方がいいのかもしれない。耳色に関係なく、相手の能力を認めているという発言が、ユーリの上っ面だけを見て毛嫌いしていた連中も魅了したのだ。
その話を聞き、皮肉なもんだな、と苦い顔をした俺に対し、ユーリは抱きついてきてこう言った。
ダイくんに想いを受け入れてもらった充実感が人の心の幸せな箇所を刺激したんだと思うよ、と。
俺のことで満たされたユーリを見て、周りの人々にも幸せが感染していったのか。胸が擽ったくなるような喜びと同時に、ユーリの幸せで俺以外の奴が満たされることへの嫉妬も沸き上がってきた。
ユーリは、会見での発言を撤回していない。想いを告げる前の俺に、会見で本心を語るのを躊躇った故の嘘だったのだが、ユーリの株が上がっている今、嘘をついていたとは口が避けても言えないのだ。
それは、プロデューサーのアンナさんの指示なのだけれど、ユーリはそれに従っている。だから、世間では俺とユーリは、ただの家政夫と雇い主という関係だと認識されている。
それに不満を抱える俺を見て、ユーリは嬉しそうに微笑むのだ。
ダイくんが僕を想ってくれている証拠だね、と。
俺自身は、この気持ちが恋なのかは、まだよく分かっていない。
ただ、ユーリを独占したいと思う。何度キスをしても、もっとしたいと思うし、抱きたいとも思う。
それは、自分が満たされるからというのもあるが、ユーリがとても幸せそうな顔になるから、それを見たいという思いの方が強い。
最近のモデルのユーリは、今までにも増して輝いている。
俺に向けての輝きだったものが、今は俺以外にも向いているからだ。それは両親であったり、かつての自分のように自信がなくて俯いている人に対してであったり。
ユーリの仕事に影響が出たら困るので、世間の捉え方に不満でも我慢ができるのだ。
ユーリを第一に考えられるということは、ユーリに恋しているということなのだろうか?
一週間前から、ユーリのベッドで一緒に眠るようになった。そこで体を繋げて、そのまま眠っているからだ。
繋がりを解き、眠りにつくまでの間、ユーリは十年にも渡る俺への片想いの話を聞かせてくれる。世間には公表できない秘密の関係に不満を抱えている俺を、こんなにも想っているんだと安心させてくれるための、ユーリの気遣いなのだろう。
連れ込み宿屋での出会いは偶然だったが、ユーリは探し求めていた相手だとすぐに分かったそうだ。凛とした真っ直ぐで力強い瞳が同じだったから、とうっとりして言うユーリに、なんだか照れてしまった。
あのあとユーリは、俺の後をつけたのだという。そして、俺の住処を突き止めた。更に、俺の住処の近くに家を探して、引っ越してきたと言うではないか。
例の女社長とホテルの関係は事実だが、気に病むほどのものではなかったそうだ。俺の住処の近くで暮らしたいというのが、引っ越しの真相だったのだ。
ストーカーみたいでごめんね、と泣きそうな顔で謝ってきたユーリだが、一切不快感は沸いてこなった。反対に、そこまで想われていたと知り、嬉しさが込み上げてきた。
時間ができると、俺の住処を見つめていたというユーリ。全然気づかなかったが、玄関の左側の扉の先にある物置から、俺の住処が見えるのだそうだ。
部屋が引っ越ししたままの状態で片付いていなかったのは、仕事が忙しかったのもあるが、全ての時間を俺の住処を眺めるのに使っていたからだったのだという。
公園での再会も、彷徨う俺を見つけたユーリが、偶然を装って声を掛けてきたのだという。
俺にくれた服も、サイズ間違いをプレゼントされたわけではなく、いつか俺に着てもらえたらと俺の着た姿を想像して、ユーリが選んで買っておいてくれたものだった。
服を抱き締めて、自分を慰めたことがあると聞いた時には、さすがに驚いたが。
俺に抱かれるのを想像して後孔を弄り、溢れる想いに耐えていたのだという。
自分の指は挿れていたが、誰にも抱かれたことはないと教えてくれた。恋をしたのも俺が初めてで、キスをしたのも、体を繋げたのも俺が初めてなのだそうだ。
嘘はつきたくないと、全てを赤裸々に語ってくれたユーリ。
狂愛と背中合わせの行動も、それだけ俺を想ってくれていたのだと思うと、愛しさを覚えた。
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