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レンジとレオ④
目が覚めた俺は、反乱軍の本部のベッドに眠っていた。
俺を探していた若者たちに見つけられ、ここに運ばれたそうだ。
俺の怪我は重く、完治するのに二年もかかった。
熱病にかかっている若者たちは、その間も反乱を続けていた。
ドラゴーナの人々を思うレオを思い、街には被害をもたらすな、騎士団の奴らでも殺してはだめだと、釘を刺すことだけは忘れなかった。
怪我が完治してからレオを迎えに城に向かったが、警備が厳しくて中に入れなかった。
レオの方から訪ねてくることも考え、森の奥の小屋に戻った。
刻々と流れていく時間の中で思うのは、愛しい我が子のことだけだった。
ひとりで対の世界に行った我が子は無事だろうか?
レオと再び愛し合うようになった時、レオがこんなことを言っていた。
ふたつの世界を繋ぐ扉は、開けた人の求める人を対の世界から引き寄せてくれるのではないか、と。
そうならば、きっと我が子も良い里親の元で育っているはずだ。
すぐに、レオと共に迎えにいくから……。
逃避行の失敗から三年が過ぎた時、遂にその時がきた。
今日もレオに会えなかったと項垂れていると、夜半に扉をノックされたのだ。
すぐにレオが来たのだと分かり、急いで外に飛びだした。
「レオ!」
予想した通りに扉の外にいた愛しい人を抱きしめる。
「レンジ、会いたかった……」
涙声で、懸命に気持ちを伝えてくれるレオ。
この愛しい人と、もう絶対に離れないと誓った。
「レンジ、早くあの子の元に行こう」
「あぁ。会いたくて堪らなかったんだ」
固く手を繋ぎ、対の世界へ続く扉がある花園を目指す。
警備の配置表を見て、入念に侵入ルートを練ってきたというレオの道案内で、無事に花園まで辿り着いた。
もうすぐ我が子に会えるのだと、逸る気持ちを抑えられずに井戸に向かって駆けている時だった。
突然、風を斬る音がした。
「レンジ、危ないっ!」
レオの緊迫した叫び声。
肉が切れる生々しい音。
飛び散る血潮。
「レオ?」
ばたり、と花の中に倒れたレオを、呆然と見つめる。
「レンジ……あの子を、たのむ、ね」
掠れた声で必死にそう紡いだレオは、そのまま動かなくなってしまった。
「レオ様? レオ様ぁー!」
レオを斬って呆然としていた騎士団長が、握っていた剣を落としてレオの脇に崩れ落ちた。
「貴様、レオを!」
落ちた剣を手に取り、騎士団長に斬りかかる。
抵抗せずに斬られていく騎士団長を、何度も何度も斬った。
騎士団長が斬ろうとしたのは俺だ。
だが、俺を庇ったレオが代わりに斬られてしまった。
レオが死んだのは、俺のせいなのだ。
「俺のせいで……。ごめんな、レオ」
真っ赤に染まったレオに口付けをしていると、たくさんの足音が近付いてくるのを耳が捉えた。
俺は我が子に会い、生みの親であるレオのことを伝えなければならない。
だが、この距離だと、井戸に辿り着く前に警備に見つかってしまう。
俺は、我が子に会うまで死ぬわけにはいかないのだ。
レオの髪を一房摘まんで剣で斬って、ぎゅっと握りしめて森の奥に逃げた。
レオの髪は、森の小屋の脇に埋めた。
そこは、ギターケースの中に紛れ込んでいた桜の種を蒔いた場所だった。
まだ我が子が腹の中にいる時、ドラゴーナには桜がないのでどんな花が咲くのか見たいと言ったレオと共に、ここに埋めたのだ。
花見の文化を知ったレオは、いつか三人で花見をしようとも言った。
「願い、叶えてやれなくてごめんな」
三人では無理でも、いつか我が子と共にこの桜を眺めて、レオの話に花を咲かせたい。
王と騎士団長が死んだことで、より戦争は激しくなってしまった。
王家軍は、反乱軍を躊躇なく殺すようになった。
反乱軍も、俺が消えたのは王と騎士団長と相討ちになったせいだと思い込み、俺の仇をとるのだと禁止していた殺害をはじめてしまった。
幸い、両軍ともに街には手を出さなかったので、レオが護りたかったものが壊されずにほっとした。
なかなか花園に近付けないまま、気付くと二十年余りが経ってしまっていた。
あの子は、もう成人したのだろうか?
あっちの世界で王の角が生えてしまったら、好奇の目に晒されてしまう。
俺があっちの世界で感じた息苦しさを、あの子も感じていたらどうしよう。
そう危惧している時、王家軍の参謀と出会った。
藁をも掴む思いで、レオとのこと、あっちの世界にやった我が子のことを話した。
平和になったら、すぐに我が子を呼び寄せると約束してくれた彼に、対の世界へと続く扉の場所を教えた。
長年の戦争も終わった。
もうすぐ、レオが愛したドラゴーナに、我が子が戻ってくる。
早く、あの子に会いたい。
早く、早く……
俺を探していた若者たちに見つけられ、ここに運ばれたそうだ。
俺の怪我は重く、完治するのに二年もかかった。
熱病にかかっている若者たちは、その間も反乱を続けていた。
ドラゴーナの人々を思うレオを思い、街には被害をもたらすな、騎士団の奴らでも殺してはだめだと、釘を刺すことだけは忘れなかった。
怪我が完治してからレオを迎えに城に向かったが、警備が厳しくて中に入れなかった。
レオの方から訪ねてくることも考え、森の奥の小屋に戻った。
刻々と流れていく時間の中で思うのは、愛しい我が子のことだけだった。
ひとりで対の世界に行った我が子は無事だろうか?
レオと再び愛し合うようになった時、レオがこんなことを言っていた。
ふたつの世界を繋ぐ扉は、開けた人の求める人を対の世界から引き寄せてくれるのではないか、と。
そうならば、きっと我が子も良い里親の元で育っているはずだ。
すぐに、レオと共に迎えにいくから……。
逃避行の失敗から三年が過ぎた時、遂にその時がきた。
今日もレオに会えなかったと項垂れていると、夜半に扉をノックされたのだ。
すぐにレオが来たのだと分かり、急いで外に飛びだした。
「レオ!」
予想した通りに扉の外にいた愛しい人を抱きしめる。
「レンジ、会いたかった……」
涙声で、懸命に気持ちを伝えてくれるレオ。
この愛しい人と、もう絶対に離れないと誓った。
「レンジ、早くあの子の元に行こう」
「あぁ。会いたくて堪らなかったんだ」
固く手を繋ぎ、対の世界へ続く扉がある花園を目指す。
警備の配置表を見て、入念に侵入ルートを練ってきたというレオの道案内で、無事に花園まで辿り着いた。
もうすぐ我が子に会えるのだと、逸る気持ちを抑えられずに井戸に向かって駆けている時だった。
突然、風を斬る音がした。
「レンジ、危ないっ!」
レオの緊迫した叫び声。
肉が切れる生々しい音。
飛び散る血潮。
「レオ?」
ばたり、と花の中に倒れたレオを、呆然と見つめる。
「レンジ……あの子を、たのむ、ね」
掠れた声で必死にそう紡いだレオは、そのまま動かなくなってしまった。
「レオ様? レオ様ぁー!」
レオを斬って呆然としていた騎士団長が、握っていた剣を落としてレオの脇に崩れ落ちた。
「貴様、レオを!」
落ちた剣を手に取り、騎士団長に斬りかかる。
抵抗せずに斬られていく騎士団長を、何度も何度も斬った。
騎士団長が斬ろうとしたのは俺だ。
だが、俺を庇ったレオが代わりに斬られてしまった。
レオが死んだのは、俺のせいなのだ。
「俺のせいで……。ごめんな、レオ」
真っ赤に染まったレオに口付けをしていると、たくさんの足音が近付いてくるのを耳が捉えた。
俺は我が子に会い、生みの親であるレオのことを伝えなければならない。
だが、この距離だと、井戸に辿り着く前に警備に見つかってしまう。
俺は、我が子に会うまで死ぬわけにはいかないのだ。
レオの髪を一房摘まんで剣で斬って、ぎゅっと握りしめて森の奥に逃げた。
レオの髪は、森の小屋の脇に埋めた。
そこは、ギターケースの中に紛れ込んでいた桜の種を蒔いた場所だった。
まだ我が子が腹の中にいる時、ドラゴーナには桜がないのでどんな花が咲くのか見たいと言ったレオと共に、ここに埋めたのだ。
花見の文化を知ったレオは、いつか三人で花見をしようとも言った。
「願い、叶えてやれなくてごめんな」
三人では無理でも、いつか我が子と共にこの桜を眺めて、レオの話に花を咲かせたい。
王と騎士団長が死んだことで、より戦争は激しくなってしまった。
王家軍は、反乱軍を躊躇なく殺すようになった。
反乱軍も、俺が消えたのは王と騎士団長と相討ちになったせいだと思い込み、俺の仇をとるのだと禁止していた殺害をはじめてしまった。
幸い、両軍ともに街には手を出さなかったので、レオが護りたかったものが壊されずにほっとした。
なかなか花園に近付けないまま、気付くと二十年余りが経ってしまっていた。
あの子は、もう成人したのだろうか?
あっちの世界で王の角が生えてしまったら、好奇の目に晒されてしまう。
俺があっちの世界で感じた息苦しさを、あの子も感じていたらどうしよう。
そう危惧している時、王家軍の参謀と出会った。
藁をも掴む思いで、レオとのこと、あっちの世界にやった我が子のことを話した。
平和になったら、すぐに我が子を呼び寄せると約束してくれた彼に、対の世界へと続く扉の場所を教えた。
長年の戦争も終わった。
もうすぐ、レオが愛したドラゴーナに、我が子が戻ってくる。
早く、あの子に会いたい。
早く、早く……
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