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うたかたの春、永遠に咲く花
諒たちが小屋に来た翌日、父は静かに息を引き取った。
「お父上がこんな状態になられるまで、お連れできずに申し訳ありませんでした」
ルーンは顔面蒼白でそう謝ってきたが、怒りはしなかった。
父に会わせようとしてくれていた矢先に、俺が妊娠してしまったのだ。
俺の体を気遣い、連れ出すことも、父の話をするのも控えていたのだという。それはルーンだけの気遣いではなく、父の気遣いでもあったそうだ。
たった数日だったけれど、父の口から母の話を聞けた。
父からも母からも、愛されていたのだと分かった。
孫の満月も見てもらえ、伴侶の諒にも会ってもらえた。
「朔夜さんを一生護り続けるので、安心してください」
父の日記を読んで、父を俺の父だと認めてくれた諒が、命のタイムリミットが迫っている父に力強く宣言してくれた。
父は、安心したように目尻を下げた。
父が逝くまで、父と俺と諒と満月の四人で過ごした。
とても穏やかで、優しい時間だった。まるで、近くに天使がいるような……。
父は、母のことを天使のようだったと言っていた。
きっと母が、父を迎えに来ていたのだろう。
母も、俺の家族を見てくれたのだろうな。
ドラゴーナの家族も、有坂の家族も、いなくなってしまった。
だが、隣には諒が、腕の中には満月がいる。
俺の家族が、ちゃんといる。
「諒、桜を見に行こう」
「えぇ」
三人で小屋の外に出て、父が植えた桜を見上げる。大きく育ったそれは、咲き溢れている。
母が見たいと言っていた桜が満開になった日に、父は母の元に旅立ったのだ。
「綺麗だな」
「そうですね」
ひらひらと舞い落ちる薄紅色の花弁を、諒と寄り添いながら眺める。
「桜には、たくさんの思い出があるな」
「春になるたびに、この桜を見上げて思い返せますね」
「満月にも、桜の思い出ができるといいな」
「家族三人で、シャボン玉を吹かなければいませんね」
諒と出会って、たくさんの思い出ができ、その数だけシャボン玉を吹いた。
家族も増えて、もっとたくさんの思い出ができるだろう。
いつか諒とふたりで、数えきれないシャボン玉の中に召されていくのだろうな。
それは、まだまだ先の話だけれど。
諒の伴侶として、満月の親として、ドラゴーナの王として、まだまだやることがたくさんあるのだから。
俺が諒と迎えた四度目の春も、とても素敵な春だった。
「お父上がこんな状態になられるまで、お連れできずに申し訳ありませんでした」
ルーンは顔面蒼白でそう謝ってきたが、怒りはしなかった。
父に会わせようとしてくれていた矢先に、俺が妊娠してしまったのだ。
俺の体を気遣い、連れ出すことも、父の話をするのも控えていたのだという。それはルーンだけの気遣いではなく、父の気遣いでもあったそうだ。
たった数日だったけれど、父の口から母の話を聞けた。
父からも母からも、愛されていたのだと分かった。
孫の満月も見てもらえ、伴侶の諒にも会ってもらえた。
「朔夜さんを一生護り続けるので、安心してください」
父の日記を読んで、父を俺の父だと認めてくれた諒が、命のタイムリミットが迫っている父に力強く宣言してくれた。
父は、安心したように目尻を下げた。
父が逝くまで、父と俺と諒と満月の四人で過ごした。
とても穏やかで、優しい時間だった。まるで、近くに天使がいるような……。
父は、母のことを天使のようだったと言っていた。
きっと母が、父を迎えに来ていたのだろう。
母も、俺の家族を見てくれたのだろうな。
ドラゴーナの家族も、有坂の家族も、いなくなってしまった。
だが、隣には諒が、腕の中には満月がいる。
俺の家族が、ちゃんといる。
「諒、桜を見に行こう」
「えぇ」
三人で小屋の外に出て、父が植えた桜を見上げる。大きく育ったそれは、咲き溢れている。
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「綺麗だな」
「そうですね」
ひらひらと舞い落ちる薄紅色の花弁を、諒と寄り添いながら眺める。
「桜には、たくさんの思い出があるな」
「春になるたびに、この桜を見上げて思い返せますね」
「満月にも、桜の思い出ができるといいな」
「家族三人で、シャボン玉を吹かなければいませんね」
諒と出会って、たくさんの思い出ができ、その数だけシャボン玉を吹いた。
家族も増えて、もっとたくさんの思い出ができるだろう。
いつか諒とふたりで、数えきれないシャボン玉の中に召されていくのだろうな。
それは、まだまだ先の話だけれど。
諒の伴侶として、満月の親として、ドラゴーナの王として、まだまだやることがたくさんあるのだから。
俺が諒と迎えた四度目の春も、とても素敵な春だった。
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