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セゾンとシキ
送別会
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「送別会?」
「はい」
教室に現れたサッカー部の後輩が、今夜七時から学食で送別会を開くと告げ、一礼して足早に去っていった。
「うわっ」
指定された時間の少し前にセゾンとそこに行くと、テーブル一杯に料理が並べられ、色とりどりの紙で作った輪が天井を飾っていた。
まるで、お誕生日会みたいだ。
「あっ、セゾンさん、シキさん、こちらへどうぞ」
後輩に案内されたテーブルには既に何人かの同級生が座っていて、普段と違うこの部屋を物珍しそうに眺めていた。
セゾンが一番隅の椅子に座り、俺もその右隣に腰掛ける。
「何かドキドキするな」
「シキは泣き虫だから、泣かないように気を付けないとな」
「誰が泣き虫だと?」
「エッチの時、いっつも泣いてんじゃん」
「なっ……」
あんまりな発言にギッと睨み付けてそっぽを向いた俺の左手を、セゾンの右手が握ってくる。
「あれは、てめぇが下手くそで痛いからだろ」
「じゃあ上手くなるように、もっと練習させてくれよ」
その提案に了承するように重ねられた掌を握り返すと、俺の掌の指の間に自分の指を絡めてきたセゾンがクスクスと笑いだした。
送別会が始まるまで、テーブルの下で手を握り合っていた。
七時になると監督やコーチも集まって、サッカー部の送別会が始まった。
「まずは監督、一言お願いします」
司会役の後輩の声に監督が席を立ち、俺達三年生にメッセージをくれる。
この三年間のことが頭の中を駆け巡り、目頭が熱くなってくる。
そんな俺に気付いたのか、ぎゅっと掌を握ぎってきたセゾンの方を見ると、大丈夫だと言うように笑いかけてくれた。
いろんなことがあったけれど、一番素敵で大切で感謝すべきことは、セゾンに出会えたことだ。
ありがとう、という気持ちを込めて笑い返す。
「じゃあ、キャプテン、一言お願いします」
突然の言葉に司会の顔を見ると、お願いします、と頭を下げられた。
部屋を見渡すと全員が俺に注目していて、ごくりと唾を飲み込んで席を立つ。
「えっと、選手権で優勝できて最高に幸せでした。一、二年生は、まだ次があるので後悔しないように頑張って下さい。俺みたいに、まだまだサッカーを続ける人達は、今度は日本代表のユニホームを着て会いましょう。別の道を進んでいく人達は、その道の日本代表になれるように頑張って下さい。みんな、そうなれる人材だって信じています。三年間、凄く楽しかったです。ありがとうございました」
頭を下げると、部屋全体を拍手の音が包んだ。
「いい話だった。流石キャプテン様」
照れ臭くて頭を掻きながら席に着くと、またセゾンに掌を握られる。
「お疲れ様でした。カンパーイ」
ウーロン茶の入ったグラスを掲げ、宴は始まった。
「シキ、俺、その唐揚げが食いたい」
セゾンが、白い大皿に山盛りになっている鳥の唐揚げを指さす。
「分かった」
箸で挟んでセゾンの取り皿にのせてやる。
「利き腕でシキと手ぇ繋いでっから箸握れねーよ。だから責任とって食べさせてくれよ」
「なっ……」
「腹減りすぎて死んじまうよー。早くぅー!」
「しょうがねぇなぁ。本当、セゾンはお子ちゃまだな」
なんだかんだで握った手を離したくない俺は、あーん、と雛鳥のように口を開けているセゾンの口元に唐揚げを差し出す。
「うめぇ!」
嬉しそうにそれを頬張るセゾン。
その後もセゾンのリクエストする料理を、何度も口に運んでやった。
「シキも食べさせてやるな。あーん」
フライドポテトを掴んだセゾンが、俺の口元にそれを差し出してくる。
「やめろ! 俺は、てめぇみたいなガキじゃねぇぞ」
「大丈夫、大丈夫。誰も見てねーから」
周りを見ると、最初は一緒のテーブルで食事をしていた同級生は席を立ち、みんな後輩の席で談笑している。
「俺様のあーんで食うとただの料理も高級店の味になるんだから、早く口開けろって」
「旨くなってなかったら吐き出すからな」
渋々といった感じを装い口を開けると、ポテトが入ってきた。
「旨いだろ?」
「不味くはない」
「指についた塩も舐めろよ」
「……っ……」
言葉を言い終わると同時に、口内に指を差し込んでくるセゾン。
ちらっと部屋を見渡すけれど、誰もこっちを見てはいない。
入れられた指に舌を這わせると、口内に塩の味が広がっていった。
「シキの舌遣いって、すげーエッチ」
指を抜いたセゾンが、耳元で囁いてくる。
「後でさ、俺のも舐めてよ」
「ざけんなっ」
夜モードのスイッチの入ったセゾンから離れようとすると、繋がれている手をぐいっと引っ張られて、体がぴたっりとくっついてしまった。
「嫌なの? シキはしたくないわけ?」
「そりゃ……してぇよ」
「正直でよろしい。俺もシキの舐めてやるからな」
耳元で囁いていたセゾンの唇が下に移動し、頬に触れる。
「やめっ……見られる」
急いで体を離して疚しいことは何もしてないことをアピールするように料理を食べ始めると、楽しそうなセゾンの笑い声が聞こえた。
こういう風に食事をするのも後ちょっとなんだなって思うと少し寂しいけれど、今生の別れってわけではないし、今度は日本代表の一員としてセゾンとこんな風に食事を楽しめるように頑張ろうと誓った。
その頃、後輩用テーブルでは――
「先輩……」
二人しかいない先輩用テーブルの様子を見てしまった一年生が、真っ赤な顔で三年生達を見る。
「あっちは見るな。見たら石になるぞ」
「あいつらメデューサかよ」
「メデューサより質悪いかもな」
ははは、と乾いた笑い声がテーブルに響く。
「お前らはまだいいよ。俺なんか、これから年代別代表の合宿で、またあいつらと一緒に過ごさなきゃなんねーんだよ……」
トホホ、と肩を落とすのは副キャプテンだ。
「まぁ、頑張れよ」
年代別日本代表にセゾンとシキと共に選ばれた副キャプテンに、おめでとうと声を掛ける者はなく、皆が皆、哀れんだ顔をして肩を叩くのであった。
「はい」
教室に現れたサッカー部の後輩が、今夜七時から学食で送別会を開くと告げ、一礼して足早に去っていった。
「うわっ」
指定された時間の少し前にセゾンとそこに行くと、テーブル一杯に料理が並べられ、色とりどりの紙で作った輪が天井を飾っていた。
まるで、お誕生日会みたいだ。
「あっ、セゾンさん、シキさん、こちらへどうぞ」
後輩に案内されたテーブルには既に何人かの同級生が座っていて、普段と違うこの部屋を物珍しそうに眺めていた。
セゾンが一番隅の椅子に座り、俺もその右隣に腰掛ける。
「何かドキドキするな」
「シキは泣き虫だから、泣かないように気を付けないとな」
「誰が泣き虫だと?」
「エッチの時、いっつも泣いてんじゃん」
「なっ……」
あんまりな発言にギッと睨み付けてそっぽを向いた俺の左手を、セゾンの右手が握ってくる。
「あれは、てめぇが下手くそで痛いからだろ」
「じゃあ上手くなるように、もっと練習させてくれよ」
その提案に了承するように重ねられた掌を握り返すと、俺の掌の指の間に自分の指を絡めてきたセゾンがクスクスと笑いだした。
送別会が始まるまで、テーブルの下で手を握り合っていた。
七時になると監督やコーチも集まって、サッカー部の送別会が始まった。
「まずは監督、一言お願いします」
司会役の後輩の声に監督が席を立ち、俺達三年生にメッセージをくれる。
この三年間のことが頭の中を駆け巡り、目頭が熱くなってくる。
そんな俺に気付いたのか、ぎゅっと掌を握ぎってきたセゾンの方を見ると、大丈夫だと言うように笑いかけてくれた。
いろんなことがあったけれど、一番素敵で大切で感謝すべきことは、セゾンに出会えたことだ。
ありがとう、という気持ちを込めて笑い返す。
「じゃあ、キャプテン、一言お願いします」
突然の言葉に司会の顔を見ると、お願いします、と頭を下げられた。
部屋を見渡すと全員が俺に注目していて、ごくりと唾を飲み込んで席を立つ。
「えっと、選手権で優勝できて最高に幸せでした。一、二年生は、まだ次があるので後悔しないように頑張って下さい。俺みたいに、まだまだサッカーを続ける人達は、今度は日本代表のユニホームを着て会いましょう。別の道を進んでいく人達は、その道の日本代表になれるように頑張って下さい。みんな、そうなれる人材だって信じています。三年間、凄く楽しかったです。ありがとうございました」
頭を下げると、部屋全体を拍手の音が包んだ。
「いい話だった。流石キャプテン様」
照れ臭くて頭を掻きながら席に着くと、またセゾンに掌を握られる。
「お疲れ様でした。カンパーイ」
ウーロン茶の入ったグラスを掲げ、宴は始まった。
「シキ、俺、その唐揚げが食いたい」
セゾンが、白い大皿に山盛りになっている鳥の唐揚げを指さす。
「分かった」
箸で挟んでセゾンの取り皿にのせてやる。
「利き腕でシキと手ぇ繋いでっから箸握れねーよ。だから責任とって食べさせてくれよ」
「なっ……」
「腹減りすぎて死んじまうよー。早くぅー!」
「しょうがねぇなぁ。本当、セゾンはお子ちゃまだな」
なんだかんだで握った手を離したくない俺は、あーん、と雛鳥のように口を開けているセゾンの口元に唐揚げを差し出す。
「うめぇ!」
嬉しそうにそれを頬張るセゾン。
その後もセゾンのリクエストする料理を、何度も口に運んでやった。
「シキも食べさせてやるな。あーん」
フライドポテトを掴んだセゾンが、俺の口元にそれを差し出してくる。
「やめろ! 俺は、てめぇみたいなガキじゃねぇぞ」
「大丈夫、大丈夫。誰も見てねーから」
周りを見ると、最初は一緒のテーブルで食事をしていた同級生は席を立ち、みんな後輩の席で談笑している。
「俺様のあーんで食うとただの料理も高級店の味になるんだから、早く口開けろって」
「旨くなってなかったら吐き出すからな」
渋々といった感じを装い口を開けると、ポテトが入ってきた。
「旨いだろ?」
「不味くはない」
「指についた塩も舐めろよ」
「……っ……」
言葉を言い終わると同時に、口内に指を差し込んでくるセゾン。
ちらっと部屋を見渡すけれど、誰もこっちを見てはいない。
入れられた指に舌を這わせると、口内に塩の味が広がっていった。
「シキの舌遣いって、すげーエッチ」
指を抜いたセゾンが、耳元で囁いてくる。
「後でさ、俺のも舐めてよ」
「ざけんなっ」
夜モードのスイッチの入ったセゾンから離れようとすると、繋がれている手をぐいっと引っ張られて、体がぴたっりとくっついてしまった。
「嫌なの? シキはしたくないわけ?」
「そりゃ……してぇよ」
「正直でよろしい。俺もシキの舐めてやるからな」
耳元で囁いていたセゾンの唇が下に移動し、頬に触れる。
「やめっ……見られる」
急いで体を離して疚しいことは何もしてないことをアピールするように料理を食べ始めると、楽しそうなセゾンの笑い声が聞こえた。
こういう風に食事をするのも後ちょっとなんだなって思うと少し寂しいけれど、今生の別れってわけではないし、今度は日本代表の一員としてセゾンとこんな風に食事を楽しめるように頑張ろうと誓った。
その頃、後輩用テーブルでは――
「先輩……」
二人しかいない先輩用テーブルの様子を見てしまった一年生が、真っ赤な顔で三年生達を見る。
「あっちは見るな。見たら石になるぞ」
「あいつらメデューサかよ」
「メデューサより質悪いかもな」
ははは、と乾いた笑い声がテーブルに響く。
「お前らはまだいいよ。俺なんか、これから年代別代表の合宿で、またあいつらと一緒に過ごさなきゃなんねーんだよ……」
トホホ、と肩を落とすのは副キャプテンだ。
「まぁ、頑張れよ」
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