BLUE DREAMS

オトバタケ

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要くんと唯斗さん

こたつ

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 オフに入ってから、ずっとこうやって唯斗さんの部屋で過ごしている。

「はい、お茶です」
「ありがと」

 湯気があがるカップをフーフーして口に運ぶ、僕の愛しい太陽。
 特に何をするというわけではないけれど、手を伸ばせばすぐに触れられる距離でのたわいのない日常が、全て輝いているように感じられる。
 本当に幸せだな、とつくづく思う。

「ちょっと行きたいとこがあるんだけど」
「僕が運転するんで、案内お願いしますね」
「ありがと」

 眩しい笑顔向けてくれた唯斗さんは、ゆっくり立ち上がって身支度を始めた。

「僕も着替えていった方がいいですかね?」
「んー、そのままでいいよ」

 パーカーにジーンズ姿の僕を見て、ジャケットを羽織りながら唯斗さんが言う。

 車に乗り込み、唯斗さんのナビ通りに進むと、一軒の民家の前に着いた。

「ここでいいんですか?」
「うん。運転ご苦労様」

 車を降りて助手席側に回り、唯斗さんの手を引いて足に負担がかからないように降ろす。

「あの……ここは誰の家なんです?」

 友達の家だったりしたら、僕が付いて行ってもいいものかと不安になり、聞いてみる。

「ん? 俺の家だよ」

 えっ、唯斗さんの家? どういう事だ?
 さっき出てきたのは唯斗さんの家。ここも唯斗さんの家……
 まさか、唯斗さんの実家!?

「どうしたの? 早く行こうよ」

 呆然と立ち尽くしている僕の手を引いて、門の中へと入っていく唯斗さん。
 玄関の前でチャイムを鳴らす唯斗さんの後ろで、唯斗さんのご両親になんと挨拶したらいいのか、ぼーっとしている頭の中で必死に考える。

「はーい。あっ、唯斗」

 扉を開けたのは、唯斗さんと同じ色白で瞳が大きい美人な女性だ。
 恐らく、唯斗さんのお母さんなのだろう。

「アルバムを見たいんだけどさ、出してくれない?」
「いいけど、もうすぐお父さんと出掛けるからね」
「いいよ、帰る時に鍵は閉めとくから。鍵はあそこに入れとけばいいんでしょ?」
「えぇ。あの……」

 唯斗さんのお母さんが僕を見て、お辞儀をしてくる。
 僕も、それに応えてお辞儀をする。

「要くんです」

 僕の腕を掴んで自分の前に立たせ、お母さんに紹介する唯斗さん。

「あっ……初めまして、要と言います」
「こちらこそ初めまして。いつも唯斗がお世話になってます」

 にこっと上品に笑ったお母さんが、どうぞと家の中に案内してくれる。

 通されたのは床の間で、水墨画の掛け軸と素朴な生け花の飾られた部屋の中央には、こたつが置いてあった。
 こたつに入った唯斗さんの正面に、僕も座る。

「あの……」
「ん? あぁ、要くんの事は両親に話してあるから」
「その……」
「俺の恋人ですって」
「えっ!?」

 オープンな唯斗さんだけど、まさかご両親にまで……。

「何? 言っちゃ駄目だった?」
「僕は構わないですけど、ご両親は反対しなかったんですか?」

 男同士で付き合っているというのは、子孫は残せないと告げるということだからだ。

「反対? なんで?」
「男同士じゃ結婚出来ないし、孫を見せてあげることも出来ないし……」
「兄貴が結婚してて孫もいるから、その心配はいらないんだ。それに俺が俺らしく生きることを両親は望んでるから、反対なんてしないよ」

 むしろ応援してくれてるよ、とケラケラ笑い、こたつの中の僕の足を戯れるように蹴ってくる唯斗さん。
 唯斗さんの太陽のような明るさは、唯斗さんを優しく包む大空のようなご両親のお陰なんだなと、ご両親に感謝した。

「失礼します」

 ゆっくり障子を開けて入ってきたお母さんは、お茶と蜜柑を机に並べてくれ、古いアルバムを三冊持ってきてくれた。

「ありがと」
「じゃ、出掛けてくるから。要くん、ごゆっくり」

 上品な笑みを浮かべ去っていくお母さん。
 嬉しそうにアルバムを抱えて机の上に置いた唯斗さんが、隣にくるように僕を手招きしてくる。

「幼き日の唯斗くんです」

 ジャーンっと効果音をつけながら、アルバムをめくる唯斗さん。
 今の唯斗さんの面影が残る小さな唯斗さんは、本当に可愛らしくて自然と頬が緩んでいった。

「どぉ?」
「凄く可愛いです」
「今の俺より?」
「どっちも唯斗さんじゃないですか」

 昔の自分と今の自分を比べる唯斗さんに思わず吹き出してしまうと、頬を膨らませた唯斗さんは寝転がって横を向いてしまった。

「どの唯斗さんも可愛いですけど、僕は今の唯斗さんが一番好きですよ」

 柔らかい髪に指を通しながら言うと、ゆっくり振り返った唯斗さんが色っぽい瞳で僕を見上げてきた。

「じゃあ、キスしてよ」
「え……ここで、ですか?」
「大丈夫。もう二人共出ていったから」

 部屋の外を確認するが誰も入ってくる気配は無かったので、ゆっくり唇を重ねる。
 満足そうな顔をした唯斗さんは体を起こすと、アルバムを閉じて蜜柑を食べ始めた。

「これ凄く甘いよ。要くんも食べる?」
「はい」

 机の上に盛られた蜜柑に手を伸ばそうとすると、そうはさせまいとその手を掴んだ唯斗さん。

「俺が食べさせてあげる」

 あのクリスマスの夜のように、口移しで蜜柑を与えてくれる。
 甘い蜜柑が、より甘く感じられる。
 何個目かの蜜柑を口に入れると、同時に入ってきた生温かい肉の感触。
 唯斗さんが、濡れた大きな瞳を閉じる。
 狂ったように互いのそれを絡め合う。
 口の中いっぱいに、甘い果汁が広がっていく。

「は……ふぁ……」

 唯斗さんの口から漏れる甘い声が更に僕をかき立てて、深い口付けは暫く続いた。
 唇を離すと、口の端からオレンジの液体を垂らした唯斗さんが肩で大きく息をして、濡れた瞳で僕を見つめていた。
 熱が、体の一点に集まっていくのを感じる。

「疲れちゃった」

 意味深な笑みを浮かべた唯斗さんはお茶に手を伸ばし、机の上に両肘をついて飲み始めた。
 僕も、悶々としたままお茶をすする。
 湯呑みを置いた唯斗さんが、色っぽい表情で僕の顔を覗き込んでくる。

「ねぇ、したくなっちゃったんでしょ?」

 ズボンの上から、熱くなっている僕自身に触れてくる。

「あっ……」

 それだけで声が漏れてしまって恥ずかしくて俯くと、ファスナーを下げて僕自身を握った唯斗さん。

「要くんの声、もっと聞きたい」

 そう言って、ゆっくりと手を動かし始めてしまう。

「ん……」

 段々と熱に侵されてきた僕は、無意識に唯斗さんをまさぐって唯斗さん自身を握り、自分がされていることと同じことをしていた。

「はぁん……」

 唯斗さんが甘い声を漏らす。
 僕が激しく手を動かすと、唯斗さんの手も同じように動く。
 駄目だ、このままじゃ……
 手の動きを止めると唯斗さんも止めて、ん?、と不思議そうに僕の顔を見つめてくる。

「このままじゃ、こたつ布団を汚しちゃいますよ」
「分かった」

 にこっと笑った唯斗さんが、こたつの中に潜る。

「あっ……」

 僕自身に生温かい感触が広がる。
 唯斗さんの激しい舌の動きに、さっきの行為もあって、すぐに欲望を吐き出してしまった。

「俺も、すっきりしたいよー」

 こたつの中から顔を出した唯斗さんが、濡れた瞳で僕を見上げる。
 今度は僕がこたつの中に入り、唯斗さんを口に含む。

「あっ……ふぁん……」

 唯斗さんが激しく腰を振り、こたつがガタガタと音を立てる。

「やっ……」

 口の中に、生温い苦みが広がった。
 唯斗さんが僕に感じ、満足してくれた証を飲み込む。
 こたつから出ると、うっすらと汗を浮かべた唯斗さんが妖艶な色香を漂わせ、天井を見上げていた。
 また体の中が熱くなってきたけれど、これ以上の事は唯斗さんの実家では出来ない。
 唯斗さんの隣に寝転がり、さっき見たアルバムの頃の思い出話を聞いたり、また蜜柑を食べさせ合いっこしたりしたけれど、唯斗さんの部屋に戻るまでは体を繋げる事はしなかった。
 それがまた新鮮で、その夜は一段と熱い夜を過ごした。
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