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第六話 名前~瑠璃~
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「金・銀・瑠璃・水晶・珊瑚・瑪瑙・真珠……」
小学校の時。自分の名前の意味を調べてきましょう、という宿題があった。
私の名前は瑠璃。熱心な仏教徒だった祖母が、仏教の七宝の一つからとったのだと言う。その祖母が亡くなって、早七回忌を迎えようとしていた。
「瑠璃ー!ちょっとこっち来て頂戴。」
母の声がこだまする。
七回忌、そして同時に私も今年20を迎える。私は亡くなった祖母が大好きだった。祖母が死んだ時、私は悲しくて悲しくて、1人、葬儀に出ることができずに部屋で泣いていたことを覚えている。
「ちょっと。瑠璃!」
母が、私の部屋までやってきて扉を開ける。
「何よ、さっきからうるさいなぁ。」
私は物思いにふけっていた顔を上げると、扉のところに立つ母を見た。
「母親に向かってうるさいとは何よ!」
「あ~もうわかった、ごめんって。で、何?」
「今年、お祖母ちゃんの七回忌でしょう。ちょうどあんたの誕生日も近いから、お祖母ちゃんのタンスの鍵を開けようと思って。ちょっと来て頂戴。」
母は私の言葉を待たずに、踵を返すと亡き祖母の部屋に向かった。
「私の誕生日とお祖母ちゃんの七回忌が、ナンの関係があるのよ。」
「……お祖母ちゃんのね、遺言だったの。」
祖母は父方の人だったが、母とはとても仲がよかった。同居だったし、母方の祖母は私が生まれる前には亡くなっていたせいもあるかもしれない。
祖母は初孫で内孫の私を、とても可愛がってくれていた。その祖母の遺言……。
2人して、祖母の部屋にあったタンスの前に来ると、母は私に鍵を差し出した。
「……自分で開ける?」
母が目の前に差し出した小さな鍵は、今まで見たことがないものだった。
これが祖母のタンスを開ける鍵……。
私はなんだか祖母の秘密を見るようで、ドキドキしながらその鍵を小さな鍵穴に差し込んだ。
カチリ。
微かな音とともに、私の手に鍵が開いた感触が伝わってきた。
お祖母ちゃん。
私は何故か祖母を呼びながらその扉を開いた。
「あら、空っぽ?」
母が素頓狂な声を出す。
何故かタンスは空っぽだった。このタンスをあげる、という意味だったのだろうか?だが私はそんなはずはない、と引き出しを片っ端から開けていった。
祖母はそういう冗談めいたことはあまりしない人だったから。
「……あった。」
最後に開けた、一番小さな引き出しの中に、ちょっと長めの箱が入っていた。上には封筒が乗っている。
「……お祖母ちゃんったら……。」
母は何故かちょっと涙ぐんでいるように感じた。
私は恐る恐るその封筒を手に取ると、中身を出して読み上げた。そこには達筆な祖母の字が並んでいた。
「瑠璃。この手紙を見るのはきっと貴女が二十歳になった時ですね。おめでとう。直接貴女に渡したかったのだけれど、これはおばあちゃんから瑠璃へ二十歳のお祝いです。天国でずっと瑠璃を見守っているからね。元気で頑張ってね。おばあちゃんより……」
私は最後の方は涙声になってしまっていた。そして、涙ながらに小さな長い箱の蓋をそっと開けた。
そこには、ラピスラズリのトップがついた金色のネックレスが入っていた。
その青はとても美しく、金色の散らばりが、輝いているようにさえ見えた。
「……瑠璃、ね。」
母はそれを見ると、ぼそりと呟いた。
「え?」
「この石、瑠璃って名前の石なのよ。瑠璃色って昔から言うでしょう?この色を指すのね、きっと。」
後から調べたら、ラピスラズリには幸運をもたらすという言い伝えがあるらしい。高貴な石で、古代から使われていたそうだ。日本でも仏教の七宝として取り入れられ、美しい青をさして瑠璃色と呼んでいたそうだ。
私の名前は、祖母のたくさんの想いが詰まった名前。
小学生の私には少し難しくてわからなかった意味が、今なら分かるような気がする。
お祖母ちゃん……ありがとう。
小学校の時。自分の名前の意味を調べてきましょう、という宿題があった。
私の名前は瑠璃。熱心な仏教徒だった祖母が、仏教の七宝の一つからとったのだと言う。その祖母が亡くなって、早七回忌を迎えようとしていた。
「瑠璃ー!ちょっとこっち来て頂戴。」
母の声がこだまする。
七回忌、そして同時に私も今年20を迎える。私は亡くなった祖母が大好きだった。祖母が死んだ時、私は悲しくて悲しくて、1人、葬儀に出ることができずに部屋で泣いていたことを覚えている。
「ちょっと。瑠璃!」
母が、私の部屋までやってきて扉を開ける。
「何よ、さっきからうるさいなぁ。」
私は物思いにふけっていた顔を上げると、扉のところに立つ母を見た。
「母親に向かってうるさいとは何よ!」
「あ~もうわかった、ごめんって。で、何?」
「今年、お祖母ちゃんの七回忌でしょう。ちょうどあんたの誕生日も近いから、お祖母ちゃんのタンスの鍵を開けようと思って。ちょっと来て頂戴。」
母は私の言葉を待たずに、踵を返すと亡き祖母の部屋に向かった。
「私の誕生日とお祖母ちゃんの七回忌が、ナンの関係があるのよ。」
「……お祖母ちゃんのね、遺言だったの。」
祖母は父方の人だったが、母とはとても仲がよかった。同居だったし、母方の祖母は私が生まれる前には亡くなっていたせいもあるかもしれない。
祖母は初孫で内孫の私を、とても可愛がってくれていた。その祖母の遺言……。
2人して、祖母の部屋にあったタンスの前に来ると、母は私に鍵を差し出した。
「……自分で開ける?」
母が目の前に差し出した小さな鍵は、今まで見たことがないものだった。
これが祖母のタンスを開ける鍵……。
私はなんだか祖母の秘密を見るようで、ドキドキしながらその鍵を小さな鍵穴に差し込んだ。
カチリ。
微かな音とともに、私の手に鍵が開いた感触が伝わってきた。
お祖母ちゃん。
私は何故か祖母を呼びながらその扉を開いた。
「あら、空っぽ?」
母が素頓狂な声を出す。
何故かタンスは空っぽだった。このタンスをあげる、という意味だったのだろうか?だが私はそんなはずはない、と引き出しを片っ端から開けていった。
祖母はそういう冗談めいたことはあまりしない人だったから。
「……あった。」
最後に開けた、一番小さな引き出しの中に、ちょっと長めの箱が入っていた。上には封筒が乗っている。
「……お祖母ちゃんったら……。」
母は何故かちょっと涙ぐんでいるように感じた。
私は恐る恐るその封筒を手に取ると、中身を出して読み上げた。そこには達筆な祖母の字が並んでいた。
「瑠璃。この手紙を見るのはきっと貴女が二十歳になった時ですね。おめでとう。直接貴女に渡したかったのだけれど、これはおばあちゃんから瑠璃へ二十歳のお祝いです。天国でずっと瑠璃を見守っているからね。元気で頑張ってね。おばあちゃんより……」
私は最後の方は涙声になってしまっていた。そして、涙ながらに小さな長い箱の蓋をそっと開けた。
そこには、ラピスラズリのトップがついた金色のネックレスが入っていた。
その青はとても美しく、金色の散らばりが、輝いているようにさえ見えた。
「……瑠璃、ね。」
母はそれを見ると、ぼそりと呟いた。
「え?」
「この石、瑠璃って名前の石なのよ。瑠璃色って昔から言うでしょう?この色を指すのね、きっと。」
後から調べたら、ラピスラズリには幸運をもたらすという言い伝えがあるらしい。高貴な石で、古代から使われていたそうだ。日本でも仏教の七宝として取り入れられ、美しい青をさして瑠璃色と呼んでいたそうだ。
私の名前は、祖母のたくさんの想いが詰まった名前。
小学生の私には少し難しくてわからなかった意味が、今なら分かるような気がする。
お祖母ちゃん……ありがとう。
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