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第一章
第十三話
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「戻ったか!私の魔法使い!!」
深夜にもかかわらず、ラドクリフ様は私を待っていた。
「お騒がせして申し訳ありません。どうかよろしく、お願いいたします」
私はそう言って一礼した。
「そう硬くならずともよい。これからは義理とはいえ親子になるのだから」
ラドクリフ様は始終ご機嫌だった。こういう人なのかな…
そして、案内されたのは大きなお部屋。
セカの家のお部屋も立派だったけど、こちらのお部屋は広いうえ、豪華絢爛だった。
そのほかの部屋は広いのに、シンプルな感じだったのに、私の部屋だけ豪華だった。
そして無駄にキングサイズのベッド。
「すげー…」
力なく言葉が出てきて、私はその巨大なベッドに身を預けた。
次の日。
「でだね。さっそくなんだけど、また君の魔法を見たいと思ってね!!」
「いいですよー」
早朝6時。こんな時間に起きているはずもなく、私はでかいノックの音に起こされ、眠い目をこすりながら話している。
ラドクリフ様は相変わらず怖い要素は一つもなかった。
(なんか、想像していたのと違う?)
そう思い始めていたけど、私の魔法を見せているときに入ってきたご側近の方かな?めちゃくちゃビクビクしていた。
そして、ラドクリフ様は採決の結果が何とかという仕事を素早く終わらせると、側近さんには一瞥もくれずに私のほうに来た。
なるほど。魔法のこと以外に興味がない感じね。
そして、私は長く思っていたことを言ってみた。
「あの、ラドクリフ様…」
「お父さまでもいいんだよ」
「いや、それはちょっと呼びにくいのですが…あ!すみません、ご命令ならば…」
「いいんだよ君は。呼びたくなったら呼んでくれれば」
「はぁ…。」
調子が狂うな、この方は…
なんで私にはゲロ甘なんだろ。
「私、このシルクハットじゃないと、たぶんこの魔法は使えないと思うんですけど、このシルクハットは魔道具とかなんですかね?」
そう言って、シルクハットをテーブルの上に置いた。
「触ってもいいのかい!!???」
だいぶ興奮した感じでラドクリフ様が聞いてきた。
「はい…大丈夫です」
そう言うと、ラドクリフ様は手袋をはめて、最初は控えめに触っていたが、最終的にはなめまわすんじゃないかってくらいベタベタ触っていた。
「そうですね。私が見る限り、この帽子には魔法の気配はありません」
「…え、そうなんですか?でも、使うとき、私は変な気配を感じます」
他の帽子で試したことはないけど、きっとできないだろうと思ってるし、あの金眼の男の気配を感じるし…。
「『妙な気配』というのが、とても気になりますが、長年魔法職をやっている私が見ても、この帽子には何も感じませんね」
と言って、私にシルクハットを返した。
「そして、この前いただいた防火頭巾は本当に素晴らしかったですよ」
ああ、ミスリルなんとかの皮の頭巾だったっけ。なんかガスマスクみたいなやつ。
「火を防いでくれましたか?」
「それはもう。…皮自体も素晴らしいのですが、その頭巾にも強い火の守りの魔法が施してありましてね」
「え!!?火の守りですか…?」
このシルクハット、そこまで有能なんだ…、こわ。
「また、出していただいてもいいですか。今度は防毒頭巾をお願いします」
なぜか仕事の話になると、敬語になるお茶目なおじさんだなーと思いました。
そんな話が夕方まで続き、夕飯の時刻に。
「そろそろ、夕飯時だね。広間に、君の婚約者が待ってるよ」
そう言われて、私は一瞬セカの顔が浮かんで、ブンブンと頭を振った。
部屋に入ると、いつもよりかしこまった格好をしているユラくんがいた。
声をかけていいのかわからず、私は上目遣いで軽く会釈をすると、彼もまた軽く会釈した。
「君たちもだいぶ仲良くなったみたいでうれしいよ。未来の僕の娘と息子だもんね」
「シアン様とは少しの間過ごさせていただき、打ち解けてきたところでございます」
そう言ってうやうやしく礼をするユラくん。
「まあ、席についてくれ」
その言葉を聞くと、ユラくんは流れるような動きで私をエスコートして席まで案内してくれた。
「あ、ありがとう…」
あーきたよ。お食事タイム。
正しいのかわからない、テーブルマナー。
私はだいぶ固い動きで食事をしていた。食べた気しない…。
ぎこちない動きを察したのか、ユラくんが私に目で合図してくれて、使うべきフォークを教えてくれた。
その後からは、困ったらユラくんを見つつ食事ができた。
デザートを食べ終わると、ラドクリフ様は嬉しそうに頬杖をついて言った。
「あ、シアンちゃん。君の養女入りはもう終わったから。これで私と君は親子になったんだよ」
「え!!もうですか!」
私は驚いて、椅子から落ちそうになった。
「これから、どうぞよろしくね」
そう言ってにこりとした。
うーん、そんなに悪い人に見えないけどなぁ…。
「それで、シアンちゃんとユラの結婚式の日程だけど…」
「けっこんしき!!」
何もかも急な話だ。
「ま、待ってください、私、貴族らしいふるまいとかできなくて…」
「まあ、それは追い追いでいいよ。私はそういうの気にしないから」
私が気になりますーー!!と言いたかった。
「とにかく、私は早く孫が欲しいからね。魔法使いの孫が」
魔法使いの孫。
そうか、たしかユラくんも魔法が使えたから…
「どんな魔法を使う孫ができるか、たのしみだねー!」
と、ラドクリフ様は相変わらず終始ご機嫌だった。
私の気持ちを置いてったまま…
こうして、魔法の話しかしない日が何日も続いたある日。
屋敷がにわかにざわめいた。
(お客さんかな…?)
私は部屋から半身覗いてみるが、メイドさんたちがドタバタと何事か話しながら走って準備している。
「どうか、したんですか?」
「あ、ああ。お嬢様。実は今日、大奥様がいらっしゃって…」
大奥様?奥様じゃなくて、大奥様ってことは、ラドクリフ様のお母さまということでしょうか。
聞き返せずにいると、
「ラドクリフ様のお母さまですよ。ラドクリフ様自身は独身主義ですので」
と、後ろから来ていたユラくんが言った。
「この時代に、独身主義の大貴族がいるんですね…」
少し、結構驚いた。
「主様は少し変わり者ですので」
「たしかにー」
そんな話をしていると、言い争う声が一階から聞こえてきた。
「ちなみに、大奥様は、私たちをラドクリフ家に迎えることを大反対しています」
「そりゃ…そうだよね…」
嫌な予感がして、冷や汗が出てきた。
言い争う声がだんだん近づいて来て、そして、目の前に現れた。
真っ赤なドレスを身にまとい、大きなセンスを持った、60代から70代くらいの女性でしょうか。
とにかく身のこなしからも気品あふれる方だった。
「イアン。この二人がそうなのか」
思ったより高い声。
「そうですよ、母上。まあ、貴女には私の思想は理解できないでしょうが」
「当たり前でしょう。…一人は遠縁とは言え、下級貴族の息子。養女として迎えたのは、薄汚い町民ではないか!!わが一族を破滅に導くつもりか!!!」
「私は、長男でもありませんし、自由に生きてもよいと言ったではありませんか」
その言葉に、大奥様はめまいを感じたのか、ふらりとしながら大きくため息をついた。
「確かに言いました。言った結果がこれとは。とにかくわたくしは絶対何があっても認めません」
そう言った後、私のほうにやってきた大奥様。
「…貴女。貴族社会でやっていけると思ってるの?毎日が戦い。戦場なのよ。
…見たところ、まだ若いみたいだし、ユーモアのある気の利いた会話なんて、できるのか。…みものね」
そう言って、踵を返して去っていった。
私は情けないことに、迫力のあまり、背中にびっしょり冷や汗をかいてしまった。
(私には、無理だ…)
深夜にもかかわらず、ラドクリフ様は私を待っていた。
「お騒がせして申し訳ありません。どうかよろしく、お願いいたします」
私はそう言って一礼した。
「そう硬くならずともよい。これからは義理とはいえ親子になるのだから」
ラドクリフ様は始終ご機嫌だった。こういう人なのかな…
そして、案内されたのは大きなお部屋。
セカの家のお部屋も立派だったけど、こちらのお部屋は広いうえ、豪華絢爛だった。
そのほかの部屋は広いのに、シンプルな感じだったのに、私の部屋だけ豪華だった。
そして無駄にキングサイズのベッド。
「すげー…」
力なく言葉が出てきて、私はその巨大なベッドに身を預けた。
次の日。
「でだね。さっそくなんだけど、また君の魔法を見たいと思ってね!!」
「いいですよー」
早朝6時。こんな時間に起きているはずもなく、私はでかいノックの音に起こされ、眠い目をこすりながら話している。
ラドクリフ様は相変わらず怖い要素は一つもなかった。
(なんか、想像していたのと違う?)
そう思い始めていたけど、私の魔法を見せているときに入ってきたご側近の方かな?めちゃくちゃビクビクしていた。
そして、ラドクリフ様は採決の結果が何とかという仕事を素早く終わらせると、側近さんには一瞥もくれずに私のほうに来た。
なるほど。魔法のこと以外に興味がない感じね。
そして、私は長く思っていたことを言ってみた。
「あの、ラドクリフ様…」
「お父さまでもいいんだよ」
「いや、それはちょっと呼びにくいのですが…あ!すみません、ご命令ならば…」
「いいんだよ君は。呼びたくなったら呼んでくれれば」
「はぁ…。」
調子が狂うな、この方は…
なんで私にはゲロ甘なんだろ。
「私、このシルクハットじゃないと、たぶんこの魔法は使えないと思うんですけど、このシルクハットは魔道具とかなんですかね?」
そう言って、シルクハットをテーブルの上に置いた。
「触ってもいいのかい!!???」
だいぶ興奮した感じでラドクリフ様が聞いてきた。
「はい…大丈夫です」
そう言うと、ラドクリフ様は手袋をはめて、最初は控えめに触っていたが、最終的にはなめまわすんじゃないかってくらいベタベタ触っていた。
「そうですね。私が見る限り、この帽子には魔法の気配はありません」
「…え、そうなんですか?でも、使うとき、私は変な気配を感じます」
他の帽子で試したことはないけど、きっとできないだろうと思ってるし、あの金眼の男の気配を感じるし…。
「『妙な気配』というのが、とても気になりますが、長年魔法職をやっている私が見ても、この帽子には何も感じませんね」
と言って、私にシルクハットを返した。
「そして、この前いただいた防火頭巾は本当に素晴らしかったですよ」
ああ、ミスリルなんとかの皮の頭巾だったっけ。なんかガスマスクみたいなやつ。
「火を防いでくれましたか?」
「それはもう。…皮自体も素晴らしいのですが、その頭巾にも強い火の守りの魔法が施してありましてね」
「え!!?火の守りですか…?」
このシルクハット、そこまで有能なんだ…、こわ。
「また、出していただいてもいいですか。今度は防毒頭巾をお願いします」
なぜか仕事の話になると、敬語になるお茶目なおじさんだなーと思いました。
そんな話が夕方まで続き、夕飯の時刻に。
「そろそろ、夕飯時だね。広間に、君の婚約者が待ってるよ」
そう言われて、私は一瞬セカの顔が浮かんで、ブンブンと頭を振った。
部屋に入ると、いつもよりかしこまった格好をしているユラくんがいた。
声をかけていいのかわからず、私は上目遣いで軽く会釈をすると、彼もまた軽く会釈した。
「君たちもだいぶ仲良くなったみたいでうれしいよ。未来の僕の娘と息子だもんね」
「シアン様とは少しの間過ごさせていただき、打ち解けてきたところでございます」
そう言ってうやうやしく礼をするユラくん。
「まあ、席についてくれ」
その言葉を聞くと、ユラくんは流れるような動きで私をエスコートして席まで案内してくれた。
「あ、ありがとう…」
あーきたよ。お食事タイム。
正しいのかわからない、テーブルマナー。
私はだいぶ固い動きで食事をしていた。食べた気しない…。
ぎこちない動きを察したのか、ユラくんが私に目で合図してくれて、使うべきフォークを教えてくれた。
その後からは、困ったらユラくんを見つつ食事ができた。
デザートを食べ終わると、ラドクリフ様は嬉しそうに頬杖をついて言った。
「あ、シアンちゃん。君の養女入りはもう終わったから。これで私と君は親子になったんだよ」
「え!!もうですか!」
私は驚いて、椅子から落ちそうになった。
「これから、どうぞよろしくね」
そう言ってにこりとした。
うーん、そんなに悪い人に見えないけどなぁ…。
「それで、シアンちゃんとユラの結婚式の日程だけど…」
「けっこんしき!!」
何もかも急な話だ。
「ま、待ってください、私、貴族らしいふるまいとかできなくて…」
「まあ、それは追い追いでいいよ。私はそういうの気にしないから」
私が気になりますーー!!と言いたかった。
「とにかく、私は早く孫が欲しいからね。魔法使いの孫が」
魔法使いの孫。
そうか、たしかユラくんも魔法が使えたから…
「どんな魔法を使う孫ができるか、たのしみだねー!」
と、ラドクリフ様は相変わらず終始ご機嫌だった。
私の気持ちを置いてったまま…
こうして、魔法の話しかしない日が何日も続いたある日。
屋敷がにわかにざわめいた。
(お客さんかな…?)
私は部屋から半身覗いてみるが、メイドさんたちがドタバタと何事か話しながら走って準備している。
「どうか、したんですか?」
「あ、ああ。お嬢様。実は今日、大奥様がいらっしゃって…」
大奥様?奥様じゃなくて、大奥様ってことは、ラドクリフ様のお母さまということでしょうか。
聞き返せずにいると、
「ラドクリフ様のお母さまですよ。ラドクリフ様自身は独身主義ですので」
と、後ろから来ていたユラくんが言った。
「この時代に、独身主義の大貴族がいるんですね…」
少し、結構驚いた。
「主様は少し変わり者ですので」
「たしかにー」
そんな話をしていると、言い争う声が一階から聞こえてきた。
「ちなみに、大奥様は、私たちをラドクリフ家に迎えることを大反対しています」
「そりゃ…そうだよね…」
嫌な予感がして、冷や汗が出てきた。
言い争う声がだんだん近づいて来て、そして、目の前に現れた。
真っ赤なドレスを身にまとい、大きなセンスを持った、60代から70代くらいの女性でしょうか。
とにかく身のこなしからも気品あふれる方だった。
「イアン。この二人がそうなのか」
思ったより高い声。
「そうですよ、母上。まあ、貴女には私の思想は理解できないでしょうが」
「当たり前でしょう。…一人は遠縁とは言え、下級貴族の息子。養女として迎えたのは、薄汚い町民ではないか!!わが一族を破滅に導くつもりか!!!」
「私は、長男でもありませんし、自由に生きてもよいと言ったではありませんか」
その言葉に、大奥様はめまいを感じたのか、ふらりとしながら大きくため息をついた。
「確かに言いました。言った結果がこれとは。とにかくわたくしは絶対何があっても認めません」
そう言った後、私のほうにやってきた大奥様。
「…貴女。貴族社会でやっていけると思ってるの?毎日が戦い。戦場なのよ。
…見たところ、まだ若いみたいだし、ユーモアのある気の利いた会話なんて、できるのか。…みものね」
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