ヤンデレ双子姉妹と離れられない姉

畜生

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 意識が混濁している。
 ぐらぐらぐらと波に揺られているような感覚と、意識が安定せず気持ち悪い感覚…。
 私はさっきまで何をしてたのでしょうか?
 サツキとヒナタのお姉ちゃん好きを改善するために、一人暮らしを始めようとしたところまでは覚えているのですが、どうやら記憶が曖昧です。

 二人に止められて、それでも私の意思は変わらなくて。
 少し良心が痛みましたが、それでも二人のためと思って離れようとして…それで、二人が。

「おねーちゃん♪」
「……ん?」
「起きて…お姉ちゃん♡」
「…な、なに…ここ、どこ?」

 聞き慣れた二人の声が、暗闇にいた私の意識を引き上げます。
 絡みつくような甘い二人の声に巻きつかれながら、私は未だ抜けきれない虚脱感に苛まれながらも声に招かれて起き上がりました。
 
「ここは私の部屋だよ、お姉ちゃん」
「ヒナタの部屋?」
「そう…じゃんけんに負けてヒナタの部屋に寝ているお姉ちゃんを連れてきた…」

 未だぼやぼやとした意識の中でも、なんとなく見覚えがあるこの部屋はヒナタの部屋…。
 高校でスポーツ選手として優遇されているヒナタらしく、部屋にはトレーニングの道具が視界の中に幾つも入ってくる。
 でも、その部屋の景色に紛れるように…壁には私の写真がいくつも並んでいました。

「なんで…私、ここに…」
「?おかしなこと言うねお姉ちゃん…なんでって私達から逃げようとしたからでしょ?」
「うん…お姉ちゃんは"約束"を破った…だから強引だけど、薬を使って眠らせて今ここで…」
「「監禁してるの」」

 その言葉は、日常生活では聞かない非日常の言葉でした…。
 でも、その言葉を聞いた瞬間に意識してなかった腕の方に違和感を感じます。
 じゃらりと聴こえたのは金属の擦れる音。
 締め付けられる感覚は、どこにも逃さないという意思を感じるほど強固なもの…。
 曖昧な意識の中、滑らせるように視線を動かしていくと私の両腕には手枷が付いていました…。
 
「…こ、これって」

 手枷には鎖がじゃらりと付いており、壁に繋がっています…。
 唖然としている私に、二人は愉しそうな声音で言いました。

「これはお姉ちゃんが逃げないためのおまもり」
「私達から離れるなんて言うお姉ちゃんには、反省のために部屋に繋いでおく必要があったから…」
「監禁…繋ぐって、別に私は…二人から逃げようとした訳じゃ…」

 ただ、私から離れて欲しかっただけなのに…どうしてこんなことに。

「どうしてこんなことに…って考えてる顔してる」
「な、なんで分かって…」
「分かるよ…お姉ちゃんすぐに顔に出るからバレバレ…」

 私の胸の内を言い当てられて、ドキリと心臓が跳ね上がります。
 サツキは少し自信のある表情を浮かべた後、繋がれて身動きの出来ない私に寄り添うように左肩に手を添えてから…サツキの顔が一気に近付いて来ました。

「好きだから…」
「え?」
「私とヒナタは…ずっとずっとず~っと前からお姉ちゃんが好きだった」
「それも家族愛とか友愛とか…そんな小さなものじゃない…私達はお姉ちゃんのことを恋愛対象…いえ性的対象としてずっと見てた…」
「え?えぇっ…!?」
「でも、お姉ちゃんは鈍感だから気付かないよね…私達がどんな想いをして今まで一緒にいたのか…」

 それは告白のようでした。
 溜め込んだ水を一気に放出するように、感情の波が濁流となって押し寄せてきます。
 しかし、二人とも私のことが恋愛として…性的な意味で好き…!?
 確かに距離感近かったですが、まさかそんな…!

「だからほら…私ね?ずっとお姉ちゃんにこんなことしたかったの…」
「な、ちょっ…サツキ!?」

 滑るようにサツキの手が私の太ももに触れる。
 まるで肌の質感を確かめるように、大胆に触れるサツキの姿は今まで見たことのない姿で驚きを隠せません。
 それに、触れた掌はゆっくりと私の肌を触っていくと、なめらかな挙動で上へと上がっていきます。
 ふとももから臀部へ…初めて経験するいやらしいその手つきに感情が追いつかないまま、サツキの瞳は熱を帯びていきます。

「お姉ちゃん…お姉ちゃん…♡」

 湿った吐息が肌を濡らします。
 熱っぽいサツキの想いが私の肌に伝っては、ぞわぞわと皮膚が裏返る感覚を覚えました。
 男の人ならきっと嫌がってました、でも私より可愛いサツキにこんなことをされて嫌なはずなのに…なぜだか不快感はありませんでした。

 それは女の子同士だからなのでしょうか?もしかしたら別の理由があるのかもしれませんが、今は何も思い浮かびません。
 
「だめ…サツキ、触っちゃ…だめっ…!」

 とりあえず、今の現状はダメです…!
 身体をくねらせて抵抗して、この場から逃げ出そうと試みます…。
 ですが繋がれた手枷は強固なもので、細い腕の私では抜け出すことはおろか、壊すことなんて百年掛けても出来ないでしょう。
 ただサツキに触れられるだけな現実を待つだけなのか…と思っていた矢先に、興奮するサツキの頭上にチョップが降り注ぎました。

「なに私抜きで遊んでるのさ…サツキ!」
「いたっ…!?……せっかく人が楽しんでる所を…!もしかしてヒナタ死にたいの?」
「体育成績1のサツキが私相手によくそんなこと言えるね?てかなんでお姉ちゃんを独り占めするわけ?サツキだけで楽しむとかそんなのズルいじゃん!」
「ズルくない…そもそもヒナタなんかにお姉ちゃんを触らせたくない…」
「な、なんかって…!そもそもお姉ちゃんの隣に相応しいのはサツキじゃなくて私だから!私の方が先に好きになったんだから!」
「じゃあその証拠を出しなよヒナタ…」
「…ぐっ、それは」

 私そっちのけで、やいのやいのとサツキとヒナタが喧嘩をしている…。
 その姿はお気に入りのおもちゃを取り合う子供のようで、こんな危機的状況なのにも関わらず、思わず気が緩んでしまう。
 あんな怖い姿をした二人を見ても、やっぱり二人は私の妹なのだと思っていると、サツキに詰められたヒナタが苦しそうな表情で私の方を見ました。

「証拠はないけど…なら、お姉ちゃんに決めてもらおう」
「…わ、私?」
「うん…それは名案かも。私とヒナタ…どっちが相応しいかなんて私に決まってるけど、お姉ちゃんに決めてもらった方が白黒付けやすい…」
「は?私こそがお姉ちゃんに相応しいんだけど!」
「あの、ちょっと…決めるってなにを?」
「「なにって…そんなの決まってるでしょ?」」

 にまりと口角を上げた二人が、ゆらゆらと幽霊のように私の方に近付きます。
 一体何が始まるのか分からない私は、額から汗が流れ始め…一粒の汗は頬を伝って落ちようとしていました。
 そんな一粒の汗をヒナタの指が受け止めます。
 ヒナタは汗のついた指を口の方に近付けて、獲物を狩る狩人のような目付きで言いました。

「誰がお姉ちゃんのお嫁さんになるのか♪」

 ぺろりと私の汗を舐めて、ヒナタは悪戯っぽく笑います…。
 私の汗なんて舐めて汚いですよ…!と注意したいのですが、状況が状況なので黙って見てる事しか出来ません。
 ですが、お嫁…お嫁さん!?

「い、いや…お嫁さんって、私達姉妹ですし…!同性婚なんてそんなこと出来ませんよ!」
「じゃあ同性婚が出来る国に住めばいい…そんな簡単な手段があるのだから、そこは気にしなくていいよお姉ちゃん」
「か、簡単って…!」

 さも当然のように言ってますが、中々ハードル高いですよサツキ!?

「じゃあヒナタ…どっちがお姉ちゃんの隣にいるべきか、勝負しよっか…」
「オッケー…お姉ちゃんをモノにするのは私だから!」
「あの…そもそも私そんな勝負認めてないのですが…!あとこの手枷いい加減に…!」
「「じゃあ、まずは…お姉ちゃんをどれだけ満足させられるか…勝負しよっか?」」

 私そっちのけ二回目…。
 火花散らす二人を横に、話に置き去りにされた私はさりげなく反対の意思を主張しますが、二人の耳には届いていない様子。
 私の話聞いてくださ~い!!と涙目になりかけたその時、二人の顔がくるりと私の方へ向くと、二人の目は見たことがないくらい怖い目をしていました。
 それは、本当に二人は私を性的対象として見ているように…二人の目は、とても。

「…え?」

 いやらしく見えました……。



「おねーちゃん!大人になったら私と結婚してください!」

 人生初めてのプロポーズはヒナタからでした。
 公園で摘んできたシロツメクサの束を掴んで、精一杯のプロポーズをしてきたヒナタはとても熱心な表情で、期待に膨らんだ瞳は宝石のようにキラキラと輝いています。
 当時はまだまだ子供な私でしたが、一番上の長女だったこともあり、妹のプロポーズは一種の遊びのようなものだと思っていました。

 幼稚園の頃だって、私と同い年の男の子が先生に告白している姿を見たことがあります。
 ヒナタのプロポーズも、幼稚園の頃に見たプロポーズと同じように本気のものではないのでしょう。
 それに私は長女なので、ヒナタのプロポーズを無碍にするわけにもいきません…。

 なので。

「嬉しい…ありがとうヒナタ♡じゃあ大人になったら私と結婚しましょうね」
「~~!ほんとっ!?ほんとにほんと!!?絶対だからね?忘れたりしたらダメだからね!」
「うん、忘れない…なら忘れないように約束する?」
「約束する!」

 ヒナタの想いを一度受け止めて、お姉ちゃんらしく振る舞いました。
 ヒナタは大層喜んでいて、約束として絡めた人差し指にはこれでもかというくらい熱が篭っていました。

 そして、二度目のプロポーズはヒナタのプロポーズから1時間も後のこと。
 部屋で勉強をしていた私の前にサツキは幽霊のように、いつのまにか私の横に立っていました。
 びくりと肩を震わせて驚いた私は、声も出せずにサツキを見ます。

「……」

 サツキはもじもじと身体を揺らしていて、何か言いたげな様子でした。
 そんなサツキの内心を悟った私は、ゆったりと柔らかい笑みを浮かべて「どうしたの?」と聞いてみました。
 すると、サツキは安心したのかほのかに笑みを浮かべます。

「お姉ちゃん…私、言いたいことがあるの」
「なあにサツキ?」
「私、お姉ちゃんのこと…好き、大好き」
「………あら」

 …流行ってるのでしょうか?
 この一日の間に私…二回もプロポーズをされてしまいました。
 それも二回とも私の妹にです。
 これ、モテモテなのでしょうか?確かに私は妹達に好かれるようにいい姉として振る舞ってはいますが、まさかこんなすぐに告白されるなんて!

「ね、お姉ちゃん…私が大人になったら結婚して」
「私から離れないで、約束して…お姉ちゃん」
「そ、そんなグイグイ来なくても…!約束しますから小指出してください!」
「ん……お姉ちゃん、好き♡」

 ヒナタの約束がありましたが、きっとこれも子供の遊び。
 そんな楽観的な考えで私はサツキの小指を手に取って、絡めて約束を交わします。
 この時の私は言葉の重みを知りませんでしたし、何よりこの時から二人に家族としてではなく恋愛として見られていたなんて、知りもしませんでした。
 
 …このプロポーズの前から、二人の恋は始まっていたのかもしれません。
 そんな二人の想いに気付きもしない私は、ただの子供の遊びだと勘違いして…とんでもない約束をしてしまいました。
 まさか、十数年前に交わした約束からこんなことになるなんて、思いもしないでしょう…。

「や、やだっ…二人とも、やめっ…あっ♡」

 脳の片隅に追いやられた僅かな意識の中で…。
 全身が溶けるくらいの快楽の海に溺れていた私はそんな事を考ええいました。
 お腹から喉にかけて甘い声が飛び出ている。
 私の事なのにどこか他人事で、私の声とは思えないその甘い声は二人を喜ばせるためにあるような、そんな声でした。

 腰がずっと浮かんだままだから、腰が痛い。
 首筋は二人の唾液にまみれていて、べとべとしています。
 敏感なところを何度も何度も責められたせいで、空気が触れただけで跳ねてしまいそう。

 子供の頃の約束だからと、忘れていた私が悪いのでしょうか?
 二人の気持ちを真に理解しなかった私が悪かったのでしょうか?
 そんなことを考えていても、答えは出ません。
 甘い声を上げながら、私はこの時間が終わるのをただただ待つのでした…。

 
 

 


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