転生幼女アイリスと虹の女神

紺野たくみ

文字の大きさ
15 / 362
第一章 先祖還り

その12 イリス・マクギリス

しおりを挟む
         12

 前世の一つ?
 いちばん大きく叫びたいのはそこだったけれど。
 表示されてる内容、ぜんぶ、おかしいんじゃないの?

 大事なことだからもう一度、確認しますけど。

ーーーーーーーーーー

 個人名……システム・イリス(アイリスの前世の一つ)

 年齢………10000歳

 種族名……レプリカノイド(合成人間)

 生命力……100000000/∞

 魔力量……0/ ∞

 魔力適性……全属性に適性あり(魔力の色・白・クリアカラー)

 職業…………人類の管理者。執政官コンスル

 権限…………人類保護プログラムにおけるルート管理者権限・最上位を所有する

 加護…………古き園ティエラ白き太陽ソルの愛情。
       世界セレナンの根源(世界の大いなる意思)のお気に入り
       四大精霊の加護。大地の女神の加護。真月の女神の加護

      『魔眼の王セラニス・アレム・ダル』の想い人

ーーーーーーーーーー

 あたしの前世?(の一つ、ってどういうこと?)

 レプリカ? 合成人間?
 なにそれ。
 人間じゃ、ないの?


 そのせいなのか。年齢と生命力の数値おかしくない?
 っていうか、どれもこれも。
 おかしいよ!

 おかしいといえば、お母さまやお父さまには、この文字が見えていないのかな。
 女性の姿をながめて「きれい」と言ってるけど、表示されてる文字を読んだら、そんなこと言ってる場合じゃないって思うよね?

「案ずることはない。見えないことになっとる。アイリス嬢や」
 コマラパ老師が、少しだけ笑った。
 むう。
 あたしの悩みが、見透かされていた!

「この『魔力診』ではの。表示されるステータスは、本人と『診断者』にしか読み取れないしくみだ。まぁ、そうでなければ、肉親にも立ち会いを許可はできないところじゃ。エステリオ・アウルには、わしの講座の研究員ではあるからの、特別に、見えるようにしているが」

「わたしは沈黙を守ります。そのほうがアイリスのためなら」
 エステリオ叔父さまは、約束してくれた。

「……よかった」

 なんか、まだ……受け入れられないけど、これも、あたし?
 とんでも数値なのも?

 優しいお父さま、お母さまが、こんなのを見て、あたしのこと、今までと同じように愛してくれなくなるかもしれないって、考えてしまってたから。
 知られないとわかって、ほっとした。
 でもコマラパ老師さまとエステリオ叔父さまには、ぜんぶわかってしまってる。

 あたし。
 人間じゃ、なかったの?

「心配せんでもよろしい」
 コマラパ老師さまは、あたしの頭に手を置いた。

「きみは、三歳のアイリス・リデル・ティス・ラゼル。そのことに変わりは無い。それより《魂の映し鏡》をごらん。まことに興味深い。まだ……階層レイヤーがあるようだぞ」

 魂は、いくつもの階層構造になっていると、コマラパ老師さまは、おっしゃった。

「生命というものは、輪廻する。死んで生まれ変わるときに、前世の記憶を全て晒されて真っさらになってしまえたら、新しい人生に心おきなく踏み出し謳歌できるものをな……魂に刻まれるような強い記憶は、痛みや苦しみや心残りは、輪廻しても残ってしまうことが……ある」

 どうしてかな。
 それは、あたしのことを言っているだけじゃない、ですよね?
 そんな気がした。
 コマラパ老師さまの顔が、どことなく寂しげに見えたから。

          ※

 やがて、
 鏡に映る姿が、変わった。

 さっきと同様に、波打つ長い金髪でエメラルド色の瞳をした美貌の成人女性で、顔も同じ。

 なんてきれいな女性。
 けれど、さきほどまでとは明らかに何かが違う。

 そうだわ! より人間的な表情をしてる。
 そこが、もっとも大きく違う。
 
 黒いカシミヤのコート。
 黒い毛皮のストール。
 すっきりとした動きやすそうなパンツスタイルに、足元はピンヒール。

 くっきりと弧を描いた、金色の眉は力強く。
 若いにもかかわらず堂々とした貫禄が感じられた。

ーーーーーーーーー


 個人名………イリス・マクギリス(アイリス・リデル・ティス・ラゼルの封印された前世の一つ)

 年齢…………25歳(享年)

 種族名………人間(アイルランドから、曾祖父の代でアメリカに移民)

 生命力………3000(成人女性の平均値に比較して300パーセント)

 魔力量………0/∞(魔力が存在しない世界である)

 魔力適性……全属性に適性あり(魔力の色・白・クリアカラー)

 職業…………会社員。広報部営業

 スキル………営業能力・時間管理・洗脳・対人・歌唱(カラオケで100点)

 加護…………商売の神様・親友の友情

 持病…………心臓に難あり(死因・ストレスと過労に起因する心不全)

 家族…………なし。両親に先立たれ天涯孤独。配偶者、子供はいない。

ーーーーーーーーー



 この人も、あたしの前世?
 魂の階層に刻まれていたっていうの?
 だとしたら。

 いったい、どんな記憶が、この人を、傷つけたんだろう?

 だって、まるでダイヤモンドみたいな、誰にも傷つけることなんてできそうにない。そんな強靱な精神が宿っているように感じられたのだ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。 「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」 どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。 彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。 幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。 記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。 新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。 この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。 主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。 ※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。

処理中です...