42 / 345
第二章 アイリス三歳『魔力診』後
その9 サヤカとアリスの学園生活(中編)
しおりを挟む
9
「お待たせ! あたしは螺堂瑠璃亜。日本とスウェーデンのハーフ。ま、そんなことはどうでもいいんだけどね。よろしく。この私立旭野学園高校のスクールカウンセラーよ。今回の相談者は、あなたたち?」
北欧系の美少女は、あたしと紗耶香を見た。
足が、すくんだ。
なんか。なんていうか、オーラ? すごい『圧』を感じた。
あたし、月宮アリスは、返答できなかった。
だって……スーパーモデルみたいな並河香織さんは、あたしと同じ人類とは思えないような、すっごい美少女。
スクールカウンセラーさんも、まったく普通じゃない美形だったのだ。
完璧な美を形にあらわしたような美貌の、二十歳にもなっていなそうな少女。
ほのかに青みを帯びた銀色の長いストレートヘア。
透き通るような肌、眉毛もまつげも銀色。形のいい、薄い唇は、ごく淡いピンク、瞳はまるでアクアマリンみたいなきれいな水色。
ほんとに人間!? って、疑いたくなる。
まるで妖精みたいな……。
「すっごい、きれい」
あたしの隣にいる紗耶香が、思わず、呟いた。
「うん。ものすごいキレイ」
うなずき合う、あたしたち。
ドキドキ、胸が高まる。
この生徒会準備室……別名、よろず相談所、に集まっている、生徒会のトップ4は、全員美形なんだもの!
(あ、副会長の山本雅人さんは普通なのですけどね)
あたしたちがアイドルやってる芸能界というところは、とにかく超美形で超可愛くてオーラがバッチリ輝いてる人たちが大勢いるわけだけど……この生徒会、なんで、とんでもないレベルの美形が揃っているの~!?
なんかすでに、自分たちの悩みなんて、ささいなことなんじゃないかって気になってきたわ。
「なんでも相談してね!」
「はい、先生」
「あら、違うわよ。教師でも医者でもないから。そうねえ、瑠璃亜さん、って。名前で呼んでね」
美少女が、ウィンクする。
破壊力あるわ~。
「ちなみに、この学校の校医は、うちの兄なの。日本人だけど。病気については兄に、法律の絡む案件はスクールロイヤーに話を通すけど、それ以外の、もろもろ、よろず相談は、お任せね。 まっとうな方法でも、そうじゃなくても。スッキリ解決してあげる」
「瑠璃亜さんのは、かなり強引だけどね」
生徒会長の伊藤杏子さん。背中の半ばまで届く、柔らかい巻き毛のような癖のある栗色の髪と、茶色い瞳。顔立ちは純粋に日本人っぽいから、色素が少しだけ薄いのかな。
「これまでにも前例があるから。解決は保証するよ」
副会長の山本雅人さん。親しみのある、安心感の『普通人』枠。
「まかせて問題なし!」
ちょっと目が覚めてきた感じの生徒会書記……名前はなんだったっけ? そうだ、充(みつる)って。それこそ芸能界にいそうな、かわいい系の美少年。
「うん、そういうことだ」
早くもまとめに入ろうとしている、書記だと名乗ったけども、なんとなく……ラスボス感が漂う、並河香織さん。超美人。気になるのは隣に座っている『充』さんと婚約してるって。高校2年ですよね?
「じゃあ、話を聞かせてもらおうかな?」
まだ少しだけ迷いがあった、あたしたちの背中を押したのは、並河香織さんだった。
※
「ストーカー? 気づいたのは、いつ頃から?」
「最近……高校に入った頃からです」
「今は五月だ。ここ一、二ヶ月のこと?」
主に質問をするのは並河香織さん。
あたしたちはうなずいて、話を始めた。
高校入学を契機に電車で通学したいって決めて。
四月の半ば頃からだった。
その視線に気づいたのは。
初めは握手会だった。
ファンの人と直接、顔を見て握手してサイン。
それは大好きなイベントだった。
けど、この春先の会では、こわいことがあったの。
ひとり、いつまでも手を握って離さない人がいて。
スタッフの人が注意をしてくれて、助かった。
そのことがあってから、握手会はとりやめになった。
会場のスタッフから、あたしたち『サヤカとアリス』の所属事務所の社長に報告があがって、所属タレントの身の安全が第一だってことで、社長さんが決断した。
だから、今後、このプロダクションでは握手会は行わない。
このときは、ほっとした。
だけど終わらなかったの。
TVに出演して、局を出るとき。
最寄り駅のホーム。
駅の階段を降りるとき。
帰宅するためのバスに乗り換えるとき。
ありふれた毎日の、生活の中で、ふと、誰かの『視線』を感じるようになったの。
自宅まで来たらどうしよう?
思いあまって紗耶香に打ち明けた。
そしたら紗耶香も同じように悩んでた。
でも両親に心配かけたくないというのは、紗耶香もあたしも同じ気持ちだったから。
マネージャーに相談して、電車通学はやめることにしたの。
仕事には車で送迎。
学校は休みたくなかった。
学園では、いやな視線は感じなかった。
でも、外では、ずっと視線や、気配を感じていて。
マネージャーから社長へ。
そして、学園のオーナーをしている社長夫人から、伝言があったの。
困っているなら、生徒会の『よろず相談』に、話しておくから。
そこに行ってごらんなさいって。
「そうなのー。わかったわ。もうだいじょうぶ! まかせて問題なし!」
自信たっぷりに、瑠璃亜さんは、宣言した。
「ぜんぶおまかせで。どういう手段をつかうかは、ヒミツね。そこは聞かないでくれれば!」
もちろん、あたしと紗耶香は、文句の付けようもなかった。
「「おまかせします! 瑠璃亜さん!」」
『グルルゥ』
気のせいでなければ、そのとき。
狛犬みたいに香織さんの両脇に控えていた、白犬と黒犬が。
牙をむいて、天井近くをにらみ、低く、うなった。
まるで、空中に何かを見てとったみたいに。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
終わらなかった……すみません。
あと一回、このエピソードが続きます。
その後は、異世界(セレナン)のアイリスの視点に戻ります!
「お待たせ! あたしは螺堂瑠璃亜。日本とスウェーデンのハーフ。ま、そんなことはどうでもいいんだけどね。よろしく。この私立旭野学園高校のスクールカウンセラーよ。今回の相談者は、あなたたち?」
北欧系の美少女は、あたしと紗耶香を見た。
足が、すくんだ。
なんか。なんていうか、オーラ? すごい『圧』を感じた。
あたし、月宮アリスは、返答できなかった。
だって……スーパーモデルみたいな並河香織さんは、あたしと同じ人類とは思えないような、すっごい美少女。
スクールカウンセラーさんも、まったく普通じゃない美形だったのだ。
完璧な美を形にあらわしたような美貌の、二十歳にもなっていなそうな少女。
ほのかに青みを帯びた銀色の長いストレートヘア。
透き通るような肌、眉毛もまつげも銀色。形のいい、薄い唇は、ごく淡いピンク、瞳はまるでアクアマリンみたいなきれいな水色。
ほんとに人間!? って、疑いたくなる。
まるで妖精みたいな……。
「すっごい、きれい」
あたしの隣にいる紗耶香が、思わず、呟いた。
「うん。ものすごいキレイ」
うなずき合う、あたしたち。
ドキドキ、胸が高まる。
この生徒会準備室……別名、よろず相談所、に集まっている、生徒会のトップ4は、全員美形なんだもの!
(あ、副会長の山本雅人さんは普通なのですけどね)
あたしたちがアイドルやってる芸能界というところは、とにかく超美形で超可愛くてオーラがバッチリ輝いてる人たちが大勢いるわけだけど……この生徒会、なんで、とんでもないレベルの美形が揃っているの~!?
なんかすでに、自分たちの悩みなんて、ささいなことなんじゃないかって気になってきたわ。
「なんでも相談してね!」
「はい、先生」
「あら、違うわよ。教師でも医者でもないから。そうねえ、瑠璃亜さん、って。名前で呼んでね」
美少女が、ウィンクする。
破壊力あるわ~。
「ちなみに、この学校の校医は、うちの兄なの。日本人だけど。病気については兄に、法律の絡む案件はスクールロイヤーに話を通すけど、それ以外の、もろもろ、よろず相談は、お任せね。 まっとうな方法でも、そうじゃなくても。スッキリ解決してあげる」
「瑠璃亜さんのは、かなり強引だけどね」
生徒会長の伊藤杏子さん。背中の半ばまで届く、柔らかい巻き毛のような癖のある栗色の髪と、茶色い瞳。顔立ちは純粋に日本人っぽいから、色素が少しだけ薄いのかな。
「これまでにも前例があるから。解決は保証するよ」
副会長の山本雅人さん。親しみのある、安心感の『普通人』枠。
「まかせて問題なし!」
ちょっと目が覚めてきた感じの生徒会書記……名前はなんだったっけ? そうだ、充(みつる)って。それこそ芸能界にいそうな、かわいい系の美少年。
「うん、そういうことだ」
早くもまとめに入ろうとしている、書記だと名乗ったけども、なんとなく……ラスボス感が漂う、並河香織さん。超美人。気になるのは隣に座っている『充』さんと婚約してるって。高校2年ですよね?
「じゃあ、話を聞かせてもらおうかな?」
まだ少しだけ迷いがあった、あたしたちの背中を押したのは、並河香織さんだった。
※
「ストーカー? 気づいたのは、いつ頃から?」
「最近……高校に入った頃からです」
「今は五月だ。ここ一、二ヶ月のこと?」
主に質問をするのは並河香織さん。
あたしたちはうなずいて、話を始めた。
高校入学を契機に電車で通学したいって決めて。
四月の半ば頃からだった。
その視線に気づいたのは。
初めは握手会だった。
ファンの人と直接、顔を見て握手してサイン。
それは大好きなイベントだった。
けど、この春先の会では、こわいことがあったの。
ひとり、いつまでも手を握って離さない人がいて。
スタッフの人が注意をしてくれて、助かった。
そのことがあってから、握手会はとりやめになった。
会場のスタッフから、あたしたち『サヤカとアリス』の所属事務所の社長に報告があがって、所属タレントの身の安全が第一だってことで、社長さんが決断した。
だから、今後、このプロダクションでは握手会は行わない。
このときは、ほっとした。
だけど終わらなかったの。
TVに出演して、局を出るとき。
最寄り駅のホーム。
駅の階段を降りるとき。
帰宅するためのバスに乗り換えるとき。
ありふれた毎日の、生活の中で、ふと、誰かの『視線』を感じるようになったの。
自宅まで来たらどうしよう?
思いあまって紗耶香に打ち明けた。
そしたら紗耶香も同じように悩んでた。
でも両親に心配かけたくないというのは、紗耶香もあたしも同じ気持ちだったから。
マネージャーに相談して、電車通学はやめることにしたの。
仕事には車で送迎。
学校は休みたくなかった。
学園では、いやな視線は感じなかった。
でも、外では、ずっと視線や、気配を感じていて。
マネージャーから社長へ。
そして、学園のオーナーをしている社長夫人から、伝言があったの。
困っているなら、生徒会の『よろず相談』に、話しておくから。
そこに行ってごらんなさいって。
「そうなのー。わかったわ。もうだいじょうぶ! まかせて問題なし!」
自信たっぷりに、瑠璃亜さんは、宣言した。
「ぜんぶおまかせで。どういう手段をつかうかは、ヒミツね。そこは聞かないでくれれば!」
もちろん、あたしと紗耶香は、文句の付けようもなかった。
「「おまかせします! 瑠璃亜さん!」」
『グルルゥ』
気のせいでなければ、そのとき。
狛犬みたいに香織さんの両脇に控えていた、白犬と黒犬が。
牙をむいて、天井近くをにらみ、低く、うなった。
まるで、空中に何かを見てとったみたいに。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
終わらなかった……すみません。
あと一回、このエピソードが続きます。
その後は、異世界(セレナン)のアイリスの視点に戻ります!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
272
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる