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第1章 幼年期からの始まり
その7 八歳。青竜様と相撲したり学んだり
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すみません、前回ちょっと駆け足で
書き漏らしたことが多かったので
かなり改稿してしまいました。
ーーーーーーーーーーーーーー
7
現在、おれは八歳。
おれの前には、青いカエルがいる。
大人の身長で筋肉質で、ウルトラマリンブルー。
皮膚は乾いていて柔らかく触り心地が良い。
なので子供たちに大人気。
わんぱく小僧のアールも、おすましのイルダも。
竜神様がカエルに変身して相撲を始めると大喜びで取り組んでいく。
最初に間違ってカエルと呼んでしまったおれの言葉をきっかけとして、自由に姿を変えられることに気づいた青竜様。
気が向けばカエルばかりかカピバラとかジャガーとかフェニックスとかサラマンダーとか、いろいろな姿になってくれる。
青竜様らしいところは、どんな動物に変身しても身体の色は、ウルトラマリンブルーなのである。
変身というより着ぐるみに入っている感じなのだが。
(あれ? 『着ぐるみ』ってなんだ?)
既視感(デジャ・ヴ)が、あった。
おれは記憶喪失……青竜様が教えてくれたところによると『忘我の先祖還り』というやつで、本来は、前世の記憶を持って生まれていたのだという。
そして六歳のとき『雨神イム』様と呼ばれていた青竜様の従者になるために、大地に開いた大穴の底にある『聖なる泉セノーテ』に生贄として突き落とされた。
その衝撃で記憶を失ったのだろう。前世のみならず、この世界に誕生してから生贄となるまでの記憶も含めて、全てを。
ちなみに六歳だというのは青竜様が教えてくれたのだ。
だが記憶喪失状態を、この『水底の異界』に慣れてきた今のおれは、かえって良かったと考えている。
今生の母との記憶があったら、きっと、すごく悲しい。耐えられたかどうか、わからない。自暴自棄になっていたかもしれない……。
結局おれは『生贄』になり、生まれた村に殺されたのだ。
母が悲しんでいたことだけは、泉に落とされた後、穴の上のほうから聞こえてきた会話で知ることができた。
それだけは不幸中の幸いだったかな……。
なんてな。
おれが物思いにふけっている間も、アールたちは再び青いカエルに変身した青竜様に遊んでもらってご機嫌だ。
青竜様ご自身も楽しんでいるみたいだ。
皆が満足するまで、こころゆくまで遊ばせてくれるのだから。
他人事みたいに言っている、おれも。
実は青竜様と仲間の子供たちが取っ組み合って遊んでいるのを見ていると、自分も加わりたくて、うずうずしてくるのだった。
おれはアールたちより精神的には大人だと思っている。
覚えてもいないのに前世での経験ってやつが邪魔しているのだろうか。
……なんかさ。何も考えずにぶつかっていけたらいいのに、って思わなくもないんだけど、アールたちの突進に出遅れて。今さら出ていけねーっていうか。
恥ずかしい? 照れる?
……難しいな。
おれってもしかして、コミュ障!?
ああっ、またわけわかんねー言葉が思い浮かんだよ!
「コマラパ。じっと立ってたってダメよ。みんなが羨ましいんじゃない? かっこつけてたら仲間に入れないわよ?」
シエナ先輩が、おれを子供たちと青竜様に向けて、背中を押してくれた。
よろけて、おれはぶざまに倒れ込み、ごろごろと勢いよく転がって青竜様にぶつかって止まった。
「よしよし! コマラパ、おまえ自分の歳をわかっとらんな。まだ八歳なのだ! 子供はよく遊び、よく学べ!」
青いカエル着ぐるみの青竜様は、おれの服をつかんで引き起こした。
「子供扱いするなー!」
『はは、まだまだ子供じゃろうに』
おれは全力でかかっていった。
けれど青カエル着ぐるみ青竜様は、成人男性の体格なんだ。突進を軽くいなされ、あっというまに足払いで倒れた。
次の突撃は、その勢いのままに投げ飛ばされてしまう。
完敗だ。
「ちっくしょー!」
『ははははは! やっと、年相応の、いい顔になったな!』
青いカエル着ぐるみ状態から、ウルトラマリンブルーの髪をした人間の青年に近い姿になった青竜様は、高笑いした後に、ふっと優しい表情になって、頭を撫でてくれた。
「う」
嬉しいなんて……だけど、妙だな。
なんか思い出しそうになった。
こんなふうに小さい頃、背の高いオッサンに頭を撫でられて。肩車……してもらったことがある……
すごく遠い昔。オッサンはひげ面だった。青竜様みたいに美青年じゃあなくて、がっしりして熊みたいだった……でも、優しい顔をしてたんだ……。
一瞬だけ。泣きそうになった。
あれはいつの思い出? 今生? 前世?
『コマラパ』
青竜様に、軽く頭をぐりぐりされて、我に返った。
『泣きたい時は、泣いていいのじゃぞ』
「……っ! 泣かねーや! 理由ねえし!」
おれは精一杯の意地を張った。
まるでガキだ。
わかったんだ。今のは前世。もう、どうやったって取り戻せない、永久に失った、何か、なんだ。
「さあみんな! 遊んだ後は、勉強の時間よ!」
シエナ先輩が、声を上げた。
『おや、もうそんな頃合いかのう。もうちょっと、いいではないか』
「だめです青竜様がそんなことでは示しがつきませんっ。メリハリが大事ですっ」
『よし、それならシエナも一緒に遊ぼう。羨ましそうな顔をしておるぞ』
「違いますから!」
青竜様と、いつもながらのやりとり。
シエナ先輩は、本当に青竜様が好きなんだなあ。
見てればわかるよ。誰でも。
ささやかな攻防を見ていた、みんなは楽しそうに笑い、勉強部屋へ向かうのだ。
青竜様が、この世界の地図を見せてくれる。
余談だが最初に見たとき、不思議な感覚があった。
(あれ? これ、ゴンドワナ大陸?)
そして、おきまりのように、おれは。
自分でも困惑する。
覚えていないはずの記憶が、泡みたいに時たま浮かび上がるから。
てかゴンドワナって何?
※
『青白く若き太陽神アズナワク』と『慈悲深き真月(まなづき)イル・リリヤ』に照らされた、この世界は「セレナン」と呼ばれている。
国土はとても広く、大小さまざまの国がある。
国と国は争ったり統合したり分裂したり、または経済的、政治的に交流を持っている。
青竜様は、物知りだ。
国境線、沢山の国名、人種の違い、各国の特産物、街道、交友関係、軍事力、等々、様々なことを教わっていく。
勉強の合間にも試験栽培農場の世話も怠りない。
作物の種類もかなり増えてきた。
ユカ、ジャガイモ、豆、米、小麦、大麦、トウモロコシ、トマト。ロコト、葉っぱを食べる大根みたいなのや、キノコ類。味の良い水草。
香草のクラントロ、肉桂みたいな香りの良い木の皮。
甘くないバターみたいなパルタ、煮たり焼いたり料理して食べるプラタノ、暑いところで育つパンの木の実は、焼いて。
甘くて生で食べられる果物、チェリモヤ、アノナ、ナランハ、マンゴー、マラクヤ、パイナップル、様々なヤシの仲間ほか、数え切れないくらいの種類の果実を採集して、調理方法を研究して工夫して。
どんなふうに育てれば増やせるかと皆で考えて、青竜さまから正しい方法を教わる。
育てている羊やビクーニャもいるが、毛をとるのが目的だ。毛刈りが終われば放牧地に戻して毛から糸を紡いで織る。
麻を育てて繊維をとる。亜麻を育てる。
あとは川で魚釣りをして食べる分を確保し、残りは干物を作って保存する。
羊肉を食べたくないかって?
……味を忘れたし。
おれの場合は、そもそも記憶がないのだ。
他の子供たちは、青竜様の持ってきてくれる、野菜中心のスープや魚料理を食べることで満ち足りている。
自分たちが作った保存食は、しまっておく。
シエナ先輩によれば、どこかの土地で食糧が不足したときは、それらの貯蔵しておいたものを青竜様の恩恵として下げ渡すのだという。
慈悲深い雨神様として崇拝されるわけだ。
青竜様のもとで従者をしている子供たちは、こんなふうに、かなり忙しい毎日を送っている。
書き漏らしたことが多かったので
かなり改稿してしまいました。
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現在、おれは八歳。
おれの前には、青いカエルがいる。
大人の身長で筋肉質で、ウルトラマリンブルー。
皮膚は乾いていて柔らかく触り心地が良い。
なので子供たちに大人気。
わんぱく小僧のアールも、おすましのイルダも。
竜神様がカエルに変身して相撲を始めると大喜びで取り組んでいく。
最初に間違ってカエルと呼んでしまったおれの言葉をきっかけとして、自由に姿を変えられることに気づいた青竜様。
気が向けばカエルばかりかカピバラとかジャガーとかフェニックスとかサラマンダーとか、いろいろな姿になってくれる。
青竜様らしいところは、どんな動物に変身しても身体の色は、ウルトラマリンブルーなのである。
変身というより着ぐるみに入っている感じなのだが。
(あれ? 『着ぐるみ』ってなんだ?)
既視感(デジャ・ヴ)が、あった。
おれは記憶喪失……青竜様が教えてくれたところによると『忘我の先祖還り』というやつで、本来は、前世の記憶を持って生まれていたのだという。
そして六歳のとき『雨神イム』様と呼ばれていた青竜様の従者になるために、大地に開いた大穴の底にある『聖なる泉セノーテ』に生贄として突き落とされた。
その衝撃で記憶を失ったのだろう。前世のみならず、この世界に誕生してから生贄となるまでの記憶も含めて、全てを。
ちなみに六歳だというのは青竜様が教えてくれたのだ。
だが記憶喪失状態を、この『水底の異界』に慣れてきた今のおれは、かえって良かったと考えている。
今生の母との記憶があったら、きっと、すごく悲しい。耐えられたかどうか、わからない。自暴自棄になっていたかもしれない……。
結局おれは『生贄』になり、生まれた村に殺されたのだ。
母が悲しんでいたことだけは、泉に落とされた後、穴の上のほうから聞こえてきた会話で知ることができた。
それだけは不幸中の幸いだったかな……。
なんてな。
おれが物思いにふけっている間も、アールたちは再び青いカエルに変身した青竜様に遊んでもらってご機嫌だ。
青竜様ご自身も楽しんでいるみたいだ。
皆が満足するまで、こころゆくまで遊ばせてくれるのだから。
他人事みたいに言っている、おれも。
実は青竜様と仲間の子供たちが取っ組み合って遊んでいるのを見ていると、自分も加わりたくて、うずうずしてくるのだった。
おれはアールたちより精神的には大人だと思っている。
覚えてもいないのに前世での経験ってやつが邪魔しているのだろうか。
……なんかさ。何も考えずにぶつかっていけたらいいのに、って思わなくもないんだけど、アールたちの突進に出遅れて。今さら出ていけねーっていうか。
恥ずかしい? 照れる?
……難しいな。
おれってもしかして、コミュ障!?
ああっ、またわけわかんねー言葉が思い浮かんだよ!
「コマラパ。じっと立ってたってダメよ。みんなが羨ましいんじゃない? かっこつけてたら仲間に入れないわよ?」
シエナ先輩が、おれを子供たちと青竜様に向けて、背中を押してくれた。
よろけて、おれはぶざまに倒れ込み、ごろごろと勢いよく転がって青竜様にぶつかって止まった。
「よしよし! コマラパ、おまえ自分の歳をわかっとらんな。まだ八歳なのだ! 子供はよく遊び、よく学べ!」
青いカエル着ぐるみの青竜様は、おれの服をつかんで引き起こした。
「子供扱いするなー!」
『はは、まだまだ子供じゃろうに』
おれは全力でかかっていった。
けれど青カエル着ぐるみ青竜様は、成人男性の体格なんだ。突進を軽くいなされ、あっというまに足払いで倒れた。
次の突撃は、その勢いのままに投げ飛ばされてしまう。
完敗だ。
「ちっくしょー!」
『ははははは! やっと、年相応の、いい顔になったな!』
青いカエル着ぐるみ状態から、ウルトラマリンブルーの髪をした人間の青年に近い姿になった青竜様は、高笑いした後に、ふっと優しい表情になって、頭を撫でてくれた。
「う」
嬉しいなんて……だけど、妙だな。
なんか思い出しそうになった。
こんなふうに小さい頃、背の高いオッサンに頭を撫でられて。肩車……してもらったことがある……
すごく遠い昔。オッサンはひげ面だった。青竜様みたいに美青年じゃあなくて、がっしりして熊みたいだった……でも、優しい顔をしてたんだ……。
一瞬だけ。泣きそうになった。
あれはいつの思い出? 今生? 前世?
『コマラパ』
青竜様に、軽く頭をぐりぐりされて、我に返った。
『泣きたい時は、泣いていいのじゃぞ』
「……っ! 泣かねーや! 理由ねえし!」
おれは精一杯の意地を張った。
まるでガキだ。
わかったんだ。今のは前世。もう、どうやったって取り戻せない、永久に失った、何か、なんだ。
「さあみんな! 遊んだ後は、勉強の時間よ!」
シエナ先輩が、声を上げた。
『おや、もうそんな頃合いかのう。もうちょっと、いいではないか』
「だめです青竜様がそんなことでは示しがつきませんっ。メリハリが大事ですっ」
『よし、それならシエナも一緒に遊ぼう。羨ましそうな顔をしておるぞ』
「違いますから!」
青竜様と、いつもながらのやりとり。
シエナ先輩は、本当に青竜様が好きなんだなあ。
見てればわかるよ。誰でも。
ささやかな攻防を見ていた、みんなは楽しそうに笑い、勉強部屋へ向かうのだ。
青竜様が、この世界の地図を見せてくれる。
余談だが最初に見たとき、不思議な感覚があった。
(あれ? これ、ゴンドワナ大陸?)
そして、おきまりのように、おれは。
自分でも困惑する。
覚えていないはずの記憶が、泡みたいに時たま浮かび上がるから。
てかゴンドワナって何?
※
『青白く若き太陽神アズナワク』と『慈悲深き真月(まなづき)イル・リリヤ』に照らされた、この世界は「セレナン」と呼ばれている。
国土はとても広く、大小さまざまの国がある。
国と国は争ったり統合したり分裂したり、または経済的、政治的に交流を持っている。
青竜様は、物知りだ。
国境線、沢山の国名、人種の違い、各国の特産物、街道、交友関係、軍事力、等々、様々なことを教わっていく。
勉強の合間にも試験栽培農場の世話も怠りない。
作物の種類もかなり増えてきた。
ユカ、ジャガイモ、豆、米、小麦、大麦、トウモロコシ、トマト。ロコト、葉っぱを食べる大根みたいなのや、キノコ類。味の良い水草。
香草のクラントロ、肉桂みたいな香りの良い木の皮。
甘くないバターみたいなパルタ、煮たり焼いたり料理して食べるプラタノ、暑いところで育つパンの木の実は、焼いて。
甘くて生で食べられる果物、チェリモヤ、アノナ、ナランハ、マンゴー、マラクヤ、パイナップル、様々なヤシの仲間ほか、数え切れないくらいの種類の果実を採集して、調理方法を研究して工夫して。
どんなふうに育てれば増やせるかと皆で考えて、青竜さまから正しい方法を教わる。
育てている羊やビクーニャもいるが、毛をとるのが目的だ。毛刈りが終われば放牧地に戻して毛から糸を紡いで織る。
麻を育てて繊維をとる。亜麻を育てる。
あとは川で魚釣りをして食べる分を確保し、残りは干物を作って保存する。
羊肉を食べたくないかって?
……味を忘れたし。
おれの場合は、そもそも記憶がないのだ。
他の子供たちは、青竜様の持ってきてくれる、野菜中心のスープや魚料理を食べることで満ち足りている。
自分たちが作った保存食は、しまっておく。
シエナ先輩によれば、どこかの土地で食糧が不足したときは、それらの貯蔵しておいたものを青竜様の恩恵として下げ渡すのだという。
慈悲深い雨神様として崇拝されるわけだ。
青竜様のもとで従者をしている子供たちは、こんなふうに、かなり忙しい毎日を送っている。
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