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第1章 幼年期からの始まり
その6 青竜様に教わること
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青竜幼稚園と、おれは内心で呼んでいる。
青竜様の従者である子供たちが暮らしている、この小さな村のことだ。
「コマラパ! おまえ、ここに来てからどれくらいになったっけ?」
「どうかなあ。一年くらいかな」
「二人とも、おしゃべりしてもいいけど、作業の手を止めない!」
仲間の『アール』が尋ね、おれが答えていると、そこを見とがめたシエナ先輩の雷が落ちた。
村に住んでいるのは皆、同じような境遇の、年頃の近い子供たちが十数人。
アール、イルダ、ウル、エレイン、オーリー。カルミッド、キリク、クシ、ケール、コイユル。サーリア、シエナ。スーリル。セレ、ソーン。
みんな、以前の名前を青竜様に捧げて、新しい名を頂いたのだ。
年齢は、シエナ先輩が一番上だそうだけど、他は、あやふやだ。誰もが自分の年齢など数えない。
だいたい五人くらいずつばらけて、手分けして農作業とかをする。
この村では、いろんな植物を少しずつ試験的に栽培している。どれも人の役に立つ作物ばかりだ。
イモ、豆、雑穀、トウモロコシ(ここではサラという名だ)。プラタノやパルタは果実だが甘くない、煮たり焼いたりして食べる。
イモといっても何種類もあるのだ。
暑いところで育つユカ、寒冷地で育つジャガイモ(パパと呼ぶ)、小さなリサスなど色々だし保存方法もいろいろ。
霜が降りる土地だとパパは夜中の霜に当てた後で日中に解凍して出てくる水分を押し出してアクを抜く。ユカにもアクのない甘いやつと、苦ユカというアクが強いものがある。苦ユカは小さく刻んで水に晒し、干してから煎る。
不思議なのは、泉の底のはずの異界が、予想外に広いことである。
青竜様に引率されて仕事場に行く。
着いた先は、森林だったり川の畔、高山だったり。そこで、それぞれの気候、風土に合った作物を育てる。
おれたち従者以外の人間の姿はない。
「農場経営シミュレーションゲームみたいだな」
ふと口をついて出た言葉に、自分でも驚く。
そしてすぐ(農場? 経営? ゲーム? シミュレーション? なにそれ!?)という疑問が湧いてきて、猛烈に悩まされるのだった。
ちなみに現在の作業は、背丈より高くまっすぐに伸びている、カンナビスという植物を収穫すること。
といっても、根元を掴んで引っ張れば簡単に抜ける。
「前に教えたでしょ。あっちの、綱で囲われたところに生えているのは構わないでね。種をとる用だから、まだ放っておくのよ。種ができると繊維が固くなるから、残すのは少しだけでいいの」
「はい、シエナ先輩」
「おい、コマラパ」
いかにもないたずら小僧のアールが、肘で、おれの脇腹を小突いた。
「煎った種は美味いんだぞ。食ったことあるか?」
「まだ食ってない。ていうかアール懲りないな。さっき注意されたばかりだろ」
「こらまた! アールとコマラパ! 手を止めないの!」
「「はあ~いい……」」
おれやアールと同じチームの、他の三人は、すごくおとなしい。
みんな行儀がいいな。
怒られてるの、おれたちだけじゃないか。
「カンナビスは葉を取って束ねて水に浸けておくのよ。外界なら、しばらくすれば外皮が腐るけど、ここでは腐敗しないから。ふやけたところで引き上げて皮をむいて叩く。フラックスも水につけておいたでしょ。木槌で叩いて繊維を取るの」
丁寧に教えてくれる。シエナ先輩は青竜様から直接に教えて貰っているから、すごく詳しくて正確だ。
口はちょっぴり悪いけど、きっとツンデレだな。
他に綿、羊毛、絹……。
糸を紡いで、簡単な織り機で布にして、染めて、服や小物雑貨を作るまで。
食糧となる作物の栽培の仕方も、青竜様が教えてくれている。
ところで、さ。
青竜様は、何がしたいんだろうな。
おれたちに教えて、いずれは派遣とかして、人間達に文化を広めるつもりなのだろうか。ボランティアか?
(あれっ!? ボランティアって、なんだっけ…!?)
ここは、学校か?
八歳になった、おれは。
これからどうするのだろう、なんて、ふと思うのだった。
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