こんなわたしでもいいですか?

五月七日 外

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こうして俺の青春は幕をあげた

こうして俺の青春は幕をあげた①

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 突然ですが、皆さん二重人格者って知ってます?

 そうそう、『ジキルとハイド』で有名なあれですね。
 普段はいいやつなのに、別人格が出てくると犯罪に手を染めまくったり、
 基本人格は男だけど、別人格は女だったり……
 
 とまあ、何でこんなことを聞くのかと言うと、聞いて驚け!
 わたくしこと赤城 飛翔 あかぎ かけるは二重人格者なのだ!
 ……まあ、この流れならそうだろうなぁって感じなんですがね……
 
 「では……気を取り直して、これから皆さんには二重人格者のわたしがどのような青春劇を繰り広げたのか。
 そして、一番重要な、彼女を作ることが出来たのか等々語っていきましょう。」



「ええー、新入生の皆さんにおかれましてはーー」

 まるで新入生を迎え入れるかのように、校門前の桜並木は満開に……と本来なら、なるはずだったここは、私立穂の枝学園の体育館である。何故桜が満開じゃないかって?昨日の大雨で全部落ちたのさ……

 さて、俺こと赤城 飛翔 あかぎ かけるは今日晴れて高校に入学し、青春するぞー!と心の中で熱く燃えていた。


「まじ、校長の話なげえよ!」
「それな!てか、今からどーする?」

 さっそく友達作りに成功したのか教室のあちこちで楽しげな会話が聞こえてくる。
 そんな中俺は、人見知りなこともあり、誰とも話せずにいた。
 ……大丈夫だ俺、今日はまだ高校生活初日じゃないか。とりあえず今日は様子見ってことにして、明日から頑張ろう……

 俺がけっこう残念なことを考えていると、女子3人組がやって来てそのうちの1人が話しかけて来た。

「ねぇ君?もしかして3中の赤城くん?」
「そうだけど……?どこかで会ったことある?」

 俺に話しかけてくれた子は、いい具合に日焼けしていて髪はショートの元気系っぽい。うん、俺的にポイント高い!

「やっぱりー!私友達に3中の子がいて話聞いてたからさー」
「あ、そうなの?俺は、そんなに目立つほうじゃなかったけどな……」

 ちなみに3中というのは、俺が通っていた東第3中学校のことである。

「いやぁー、格好いいって聞いてたんだけど想像してたよりイケメンでビックリしたよー!」
「「うんうん!」」

 残りのふたりがすごい勢いで頷いている。

「そこまで言われると少しはずかしいなぁ」

 そうだったのか!俺は、イケメンだったのか、初めて知ったぜ!

「私雛田 由依 ひなだ ゆいよろしくね赤城くん!」
「おお、こちらこそよろしく」
「イェーッイ!」
「!?」

 まさかのハイタッチである。自己紹介では、やっても握手じゃないの?雛田さんコミュ力高いなぁー。

 「そうだ!私たちこれからみんなで遊ぶんだけど、赤城くんも一緒にくる?」
「いいの!?いくいく」

 おいおい、高校生活最高じゃねーか。入学して初日に誰かと遊びに行くなんて……しかも女子!

「山ピー!赤城くんもいくってー」
「おっ!赤城もいけるんか、それは盛り上がるぜ!」

 雛田さんが山ピーに報告をしてる。山ピーの名前はたしか……そう、山何とか君だ!山何とか君は、細身なのに筋肉質で坊主頭の明らかに野球部だろと言う見た目をしている。

 突然ですが、ここで問題、山ピーは、何部でしょうか?

 A.野球部

これは、分かりやすいな。
 て言うか雛田さん……みんなでってクラスのみんなね……いや、いいんだけどてっきり雛田さんたち3人かと思ったよ……何と言うか少し俺の気持ち返して。

 そういえば雛田さんの取り巻き二人の名前全然覚えれてないな。わかんないから、左から取り巻き1号ちゃんと、2号ちゃんでいいや。すると、早速1号ちゃんが雛田さんに話しかける。

「ねぇ由依?あの子は誘わなくていいのー?確か同じ中学でしょ?」
「……もちろん誘うよ!」

 あれ、今雛田さんの表情が少し曇ったような……

「暁さんも一緒に行かない?」
「ごめんね、わたし今日はこのあと用事があるから……」

 雛田さんに誘われている女子は、出席番号一番の暁 昴あかつきすばるである。ちなみにうちの高校の出席番号は、女子からあいうえお順で決まっている。

 何故雛田さんくらいしかきちんと名前を覚えられない俺が暁の名前を知ってるかと言うと……もちろん出席番号が一番だからじゃないぜ。
 暁 昴は中学3年生のときに絵の才能が開花して展示会を開いたこともあるのだ!まあ、近くの公民館だけど……そんなこともあって地元では少し有名なのだ。

「そしたら、残念だけどまた今度遊ぼう」
「うん」

 うーん、さっきのは気のせいだったのかな?まあ、コミュ力の高い雛田さんが暗い顔なんてみせないか。


「いやぁー、楽しかったね」
「まじ、飛翔カラオケもウメぇとかすげえわ!」
「いやいや、たまたまだよ」

  最初が雛田さんの一言その次が山何とか君で最後が俺のセリフだな。それにしても、山何とか君もう俺のこと下の名で読んでるよ。こいつもコミュ力高いなぁ。

俺達は、学校をでてから軽く昼飯とショッピングをして、今カラオケから出たとこである。
 けっこう遊んでしまって、もう日も沈みかかっている。楽しいと何でこう時間が立つのは早いかなぁ……

 うん?太陽が沈みかかっている……
 ヤバい!ヤバいヤバいヤバい!
 皆さんお忘れかもしれないが俺は、二重人格者だ。しかも少し特殊なタイプで昼間は俺が表にでるんだが、夜になると 別人格が表に出てくるという、時間で入れ替わるタイプなんだ!

 さすがにアイツを人前に出すわけにはいかねぇ……
 何とかして帰らねえと

「赤城くん、今からどうしよっか?」

すると、雛田さんが俺に訪ねてきた。

「二人で……」
「二人で?」 

間違った、慌て過ぎて変なことを言いかけてしまった……

「じゃなくて、悪いけど俺もう帰らないといけないから先帰るわ」
「そうなの?そしたら時間も微妙だから解散しよっか」

 雛田さんの一言で取り敢えず今日は解散になった。
 よし、急げば何とか間に合うな。

「ねえねえ、さっき何て言おうとしたの?」
「!?」

 近い!雛田さんが何か耳元でしゃべってる!しかもメチャクチャいい匂い……

「いやいや、さっきのは本当何でもないから」 
「本当にぃー?まぁいいや」

 ふぅ、やっと雛田さんが離れてくれた。ヤバい俺の雛田さんポイントがどんどん増えていく……

 じゃなくて、急いで帰らないとアイツが出てくる!
「それじゃあ、また明日!」
「うん、バイバイ!」

 雛田さんは手を小さく振ってから取り巻き1号ちゃんの方に歩いてった。
 さて、俺も急がないと時間があまりないな。



 時間がたりないなぁ……とてもじゃないが家まで着きそうにない。
くっそ、取り敢えずメモを書いとくか……

ーーメモーー
 その① 近くにハゲジジイの病院があるからそこまで行って大人しくしてろ!
その② もしも、誰か知り合いに見つかったら誰に会ったのかメモに書いとけ!
その③ 以上の2つが守られてなければ、お前の大切なフィギュア消し炭にしてやる!
以上
ーーーーーーー


 よし、取り敢えずはこれで安心だな。
 そう……俺の別人格は、ヲタクでしかも超重度の中二病患者なのだ!
 アイツが知り合いにバレたりしたら、恥ずかしくて高校生活なんて送れないよぉ……
 あ、意識が薄くなってきた……そろそろ入れ替わりか……



翌朝俺が目を覚ますと右手にメモが握られていた。

ーーメモーー
 ワレだ。そう、大魔王ディザイア=スプラウト=ノート様だ。
 指示通り、ワレとマミエタ者の名をここに刻んでおく
 心して聞くがよい、その名も……
 暁 昴

ーーーーーー
 
 
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