こんなわたしでもいいですか?

五月七日 外

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彼女の失われた青春

彼女の失われた青春②

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 暁 昴あかつきすばると口喧嘩をしてからだろうか、わたしはさらにクラスから孤立してしまいそのまま夏休み突入……まあ、怪我も治って練習できるからいいけど……

 といった感じで、中学校最初の夏休みはテニス時々家族とプチ旅行だけ……という何とも青春から遠い夏休みだった。……部活動も立派な青春よね!と、言い訳しながら夏休み終了。


 夏休みが終わって二学期が始まってもわたしはクラスから浮いたままだった……ついでに暁さんも……
 
 わたしと暁さんは見事にボッチになったせいか体育や美術の時間にペアを組むことが多かった。体育の時間は暁さんが運動音痴なことをわたしがからかってケンカになり……美術の時間はわたしの絵が下手なので暁さんが勝手にわたしの絵を書いてケンカになったり……相変わらず仲が悪かった。
 

 そんなある日のことだった。暁さんがテニスコートに現れるようになったのは……しかも暁さんはテニスコートに来るとわたしをガン見しながら絵を書いているのだ。(……少し怖い)

 わたしには暁さんがテニスコートに来る意味も分からないし、何故か先輩や先生は暁さんがいても何も言わないのだ。

 そんなことが何日か続いたある日、わたしは暁さんが嫌がらせのためにテニスコートで絵を書いていると思ったので文句を言いにいってやろうと思ったのだった。

 そして、その日の放課後……(いつもより少し楽しくないケンカをするために)わたしは部活前に暁さんの机の前に立っていた。

「雛田さん、今日は部活いかないの?」

 わたしが文句を言ってやろうと思っていると暁さんが話しかけてくる

「もちろん行くけど、その前に暁さんに用があるの」
「わたしにはまだ用無いけど……?」
「まだってなによ……相変わらずわかんないなぁ……そ・ん・なことより!わたしは今あなたに用があるの!いつもいつもテニスコートで何書いてるのよ、見せなさいよ!」

  わたしはいつになくイライラしてしまい口調がキツくなっていた。

「あれは……まだ見せられない……」

 暁さんはそう言いながら机の中に入っていた例の絵を背中に隠そうとした。
 ……えぇーっと、この子やっぱりアホなのかな?……見せろって言われた絵をわざわざ背中に隠すなんて……わたしに絵はここにありますよ!って言ってるもんじゃない……
 少し……いや、かなり意地悪いけどわたしは暁さんの背中にある絵を取り上げた

「あっ!まだ完成してないのに!」

 暁さんがそんなことを言う……(いつもいつもわたしをガン見しながら一体どんな絵をかいてるのよ?)
 そして、取り上げた絵を見てみると……

「え?これって……わたし……?」

 そこには……テニスをしているわたしの姿が描かれていた……(これって……一体どういう!?)
 わたしが困惑していると暁さんが仕方ないなという様子で打ち明けてきた。

「その……雛田さんはテニスが好きなので……て……テニスの絵を描いたら……あの……絵のことも好きになってくれるかもって……思って……」

 ……なんか……わたしバカみたい……暁さんはこっちに歩み寄ろうとしてくれてたのに…… 勝手に暁さんのこと嫌って、彼女を遠ざけていたなんて…… これからはわたしからも歩み寄って……暁さんと仲良くなれるかな?いや、仲良くなる!
 わたしはそう決心して暁さんに今の想いを告げた。

「わたしまだ……絵のことは良くわからないけど……その絵はかなり好きだよ。それと……その、良かったらわたしと友達になってくれると……うれし」

 わたしが勇気を出して言おうとしていると暁さんが途中で入ってきた。

「もう友達じゃないの?」
「暁さんの中ではそうだったんだの!?……そ、それじゃあ親友になろう!」

 わたしはそう言って握手をするために手を差し出した。

「し、親友かぁ。いいかも……い、イエーイ!」

 暁さんは少し顔を赤くしながらそう言って、ハイタッチしてきた。

「ええー!!!ハイタッチ!?普通そこは握手でしょ!!!」

 わたしは暁さんが予想外のハイタッチを繰り出してきたのでつい突っ込んでしまった。

「そうなの?親友とはハイタッチするもんだよっておばあちゃん言ってたのに……」
「おばあちゃんが間違ってるよ!!!……ていうか暁さんってかなり変わってるよね?」
「わたしは普通だよ!ゆいゆいと違って!」
「な、なにをー!わたしの方が絶対ふつ……今ゆいゆいって呼んだ?」

 なんだか不名誉な呼ばれ方をした気がしたのでわたしは暁さんに聞き返した

「親友ならあだ名で呼ばないと……でしょ?」

 そう言いながら暁さんがわたしにもあだ名を付けて!とでも言いたげな顔で見てくる……(いや、そんな顔されても困るよぉ……あだ名なんてそうそう思い付かないでしょ!)

「てか、ゆいゆいって恥ずかしいんだけど///」
「ゆいゆいは可愛いでしょ!はやく!わたしにもあだ名下さい!」

 ……いやぁ、ゆいゆいは無いと思うけど暁さん気に入ってるし……もしかして暁さんってネーミングセンス無いのかな?それよりは……
 わたしはゆいゆい無い説を考えながら、何だかスゴい期待の眼差しを向けてくる暁さんにあだ名を付けてみた。

「そ、それじゃあ……暁さんのあだ名は、すばるんで!」
「え~!可愛くない」
「すばるんだけには言われたくない!」
「わ、わたしだってゆいゆいだけには言われたくないよ!」
「この~!」
「なにを~!」


「「はあ、はあ……ゼェ……」」
「と、取り敢えず……あだ名は保留にしよ……」

 あれから5分位あだ名の言い合いをしてからどちらともなくそう言い出した。 

「じゃあ、あだ名決まるまでは……すばるって呼ぶよ」
「わ、わたしもゆいって呼ぶ……」
「「その……こ、これからもよろしく」」


 そうして、わたしは中学校で初めての友人……いや、初めての親友が出来た


 
 
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