こんなわたしでもいいですか?

五月七日 外

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彼女たちの……

彼女たちの……⑤

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「それで……その日記を読んだ上で……もし……もしもよかったら……私達……また親友として一緒にいられないかな……?」
 雛田さんは昴の親友に戻りたいと、自分の意思を伝えた。
 そして、俺たちが固唾を飲んで見守っているなか……昴が固く閉じていた口をゆっくりと開いた。
「由依は本当にそれでいいの?」
「……確かに、お互いに傷付け合うこともあるかもしれない……このままの関係で終わった方が良いのかもしれない……でも、わたしはあの日からずっと後悔してた……もっと昴のことを考えていたらよかった、一緒にもっと悩めばよかった、ツラいときはツライって言えばよかった……そんな風に今でも色々考えちゃうんだ。……でもね、やっぱり一番の理由は昴と一緒にいた時間は楽しかったしわたし昴のこと大好きなんだよ……だから……」
 雛田さんは涙をこぼしながらも昴を説得している。
「由依、もう……それ以上はいいよ」
 昴は下を向いていて表情はよくわからないがはっきりとそう言った。(……ムリなのか……この二人を元に戻すことは……)俺がそう思っていると、昴はさらに続けて話し出した。
「わたしも由依に話したいことがあるんだ……わたしは中二の夏休みまでしか記憶がないから、それから由依と何をしたのかはほとんど覚えてないけど……あの日のことだけは、わたしも覚えてる」
「え?」
「その……わたしはあの日、由依のことを忘れるために日記を破り捨てたし冬休みの間はアメリカに行って由依に会わないようにしてた……けど、どんなに頑張っても由依のことを考えないで24時間過ごすなんてわたしにはできなかったんだよ……わたしもそれくらい由依と過ごした時間が楽しかったし大切だった。それに由依のことが大好きだから……もう傷付けたくなかったのに……だから今日まで頑張って、ただのクラスメイトでいたのに……それなのに由依からそんなこと言われたらまた昔みたいに戻りたくなっちゃうよ……」
 ……昴はそんなことを言う。

「……全くお前は何を悩んでるんだよ、もう俺とした人生相談のこと忘れたのか?」
 俺はもう見守るなんて我慢できずに昴の前に立ってそう言った。
「……ちゃんと覚えてる」
「なら……自分の好きにしたらいいじゃねえか?悩む必要なんて無いだろう」
「でも、由依のことは傷付けたくない……」
「……はぁ、それが無ければ雛田さんとは親友に戻りたいんだな?」
「うん」
 昴は俺の目を見て頷いた。
「わかった。……それで、雛田さんはどうなんだ?例えどれだけ傷付くことがあっても昴と親友に戻りたいのか?」
 俺は雛田さんにそう聞いた。
「もちろん」
 雛田さんは俺と昴をみてそう答えた。
「なら……昴を傷付ける覚悟はあるか?」
 俺はもう一度雛田さんに質問した。
「それは……」
 今度は、中々雛田さんは答えられなかった。
「昴、それに雛田さん……親友ってやつはだな、お互いに傷付くこともないし何もツラいことはない……そんな甘いもんじゃねえ!……お互いに傷付け合うこともあるし、中にはどうしようもなくツラいこともあるだろ……けど、それを一緒に乗り越えていく仲間が親友ってやつじゃないのか?……少なくとも俺はそう思ってる。……二人にとっての親友ってやつはお互いに傷付けることもない、ツラいこともない……なあなあの関係のことなのか?」
「「ちがう!わたしにとっての親友はそんなものじゃない!それに!昴となら(由依となら)どんなことだって乗り越えられる!……気がする……」」
 昴と雛田さんは二人揃ってそう言った。
「……あはは!そこまで息ピッタリなのに親友じゃないなんて、二人とも詐欺だろ?全く……いつまでもウジウジ言ってないで仲良くやりなよ?」
「「う、うん……あの!……どうぞ!」」
 急に二人とも息ピッタリになってる。
「じゃあ、わたしから……何だか変な感じだけど、これからもよろしくね。すばるん!」
「すばるんはやっぱりネーミングセンスないなぁ……確かに変な感じだけど、これからもよろしく。ゆいゆい!」
 二人はそう言って握手を交わした。
「はぁ~!やっと終わったな。そろそろ時間も遅いから早く帰ろうぜ!」
 俺はみんなにそう言ったのだが……
「何だかわたしだけ仲間外れみたいです……わたしにもあだ名付けてくださいよ~!」
 青葉さんが駄々をコネだした。
「お前には『変態』って良いあだ名があるだろ」
「ひっどいなぁ~!それに赤城君は暁さんのことだけ下の名前で呼びあってるじゃないですか~、わたしとも下の名前で呼びあいましょうよ~!」
「たしかに、昴だけズルいよね!わたしとも下の名前で呼びおうよ~!」
 青葉さんの言葉を聞いて雛田さんまでそんなことを言い出す。
「それは、わたしと飛翔が特別な関係だからですよ!」
 昴もよくわからんことを言う。
「わかったから!みんな今度からは、下の名前で呼びあうことしよう!それでいいだろ?」
「「暁さん(昴)との特別な関係って何かな?」」 
 雛田さんと変態が恐ろしい笑顔を浮かべながらそう言ってきた。
「俺も昴と親友なだけだ~!」
 俺はそう叫んで、取り敢えず彼女たち三人から逃げることにした。


 こうして、雛田さん……いや、由依と昴はおよそ二年ぶりに親友に戻り俺たち四人はそれぞれ下の名前で呼びあうことになった。(……青葉さんは変態のままでいい気もするよなぁ~)
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