こんなわたしでもいいですか?

五月七日 外

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大魔王ディザイア=スプラウト=ノート

大魔王ディザイア=スプラウト=ノート⑤

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「それじゃあ、今のあなたは一体誰なの?」
 わたしは隣に座っている男の子にそう聞いた。
「…………」
 目の前の男の子は答えられずにいる。
「ねえ、あなたが大魔王を名乗るようになったのって……飛翔君が今のあなたみたいにならないためでしょ?」
「ああ……赤城飛翔が二人もいたらややこしいだろ?だから俺が……」
「でも、そのせいで今のあなたは自分が誰なのかも分かっていないし消えかけてるんだよ……それでいいの?」
 わたしは彼にそう問いかける。
「俺はそれでも構わない……もうアイツとの約束は果たしたからな」
「約束?」
「飛翔に本当の友達ができるまでは何があっても俺が守るって約束だ……お前らみたいな良いやつが飛翔の友達でいてくれてるんだ……もう飛翔に俺は必要ないだろ?」
 目の前の男の子はどこか遠くを見つめながらそう言った。
「それで、もう消えてもいいなんて言ってるの?」
「ああ」
「ふざけんな!」
 わたしが急に声を大きくしたから、彼は目を丸くして口も開きっぱなしになってる。
「そんな勝手な理由で消えてもいいなんて言わないで……消えたくなくても消えちゃった子だっているんだよ!それに、あなたが消えたら悲しむ人だっているでしょ」
「いないだろ……飛翔だって二重人格でいるより、俺が消えて普通に生きれた方がいいだろ」
 彼は少し諦めたようにそんなことを言う。
 (……この人は本当に変なところで身勝手というか、頑固というか……) 
「はぁ……仕方ない、これを見てもまだそんなことを言えるの?」
 わたしはそう言ってスマホを渡した。
「飛翔からあなたへメッセージを貰ってるから見てみなさい。それでもまだ消えてもいいなんて言えるならそのときはもう好きにして良いよ」
「分かった」
「わたしが聞くのはよくないと思うから見終わったら教えて」
 わたしはそう言って少しベンチから離れた。

「見終わった……」
 5分ほど時間が経つと彼がそう言ってきた。
「それで、まだ消えてもいいの?」
 わたしはベンチに腰掛けながら彼にそう聞いた。
「勝手だけど……俺はまだ消えたくない……」
 彼は小さな声だけど確かにそう言った。
「そっか」
「でも、俺はまだ自分が誰か分からない……このままだと消えちまわないか?」
 彼は今度は真剣そうにそう聞いてきた。
 (……取り合えず、彼が消えたくないって思ってくれたなら何とかなりそう……)

 こうして、わたしは彼のためにある決心をするのであった。
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