死霊使いと精霊姫

五月七日 外

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黄金の夜明け

黄金の夜明け⑤

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「っつ!……」
「大丈夫か?」
「大丈夫、少し間違えただけ」
 せつなは死霊を倒すために武器を生成しているが時折今のように顔をしかめていた。
「まだなのか!そろそろこっちも限界だぞ!」
 前からゼフレンがそう叫んでくる。ゼフレンたちは死霊がこちら側に来ないように足止めをしているがそれもそろそろ限界のようだ。
「もう少しだけ踏ん張ってくれ!……せつな、あとどれくらいかかるんだ?」
「もう、すぐできる!」
 ましろの目の前にはせつなが生成した剣が完成した……ようにましろには見えたが、まだ出来上がっていないらしい。
 (……せつなが生成するのにこれだけ時間がかかるなんてどんな剣なんだ?……)
 ましろが少し考えていると、ようやく完成したようだ。
「できた……この子の名前は聖后剣せいごうけん、霊体専門の剣ってところかしら……これでやっつけちゃって」
「よし!まかせろ!」
 ましろは早速、聖后剣を掴もうとしたのだが何故か右手がすり抜けてしまった。
「それ、霊体じゃないと触れられないからましろの〈左手〉じゃないと扱えない……」
 せつなが後ろからそう教えてくれた。
「なるほど、ありがとな……って、大丈夫か!」
 ましろがお礼を言おうとして後ろを振り返るとせつなが倒れかけていた。何とか体を支えたが、前に背負ったときよりもかなり軽くなっていて、せつなの体が薄くなっていた。
「大丈夫、少し疲れただけ……」
「大丈夫じゃないだろ!……何か体が薄くなってるぞ!どれだけ無茶したんだよ……」
「大丈夫だから……それより早くしないとゼフレンたちも持たない」
「けど……」
「せつなはわたしに任せてアイツを倒してきて!」
 ましろが少し迷っているとカレンがそう言ってきた。
「アレを倒せるのはましろだけなんでしょ?だったら早くあんなの倒してから病院に連れていこ?」
「わかった、ありがとカレン!」
 ましろはせつなに言われたとおり今度は〈左手〉で聖后剣を掴む。 
「ぐっ!」
 聖后剣を掴んだ途端にまるで生命力が吸われるような感覚がしたあと〈左手〉が小さくなり、代わりに聖后剣が巨大化し三メートルほどの大きさになった。(……これは、長いこと扱えるものじゃないな……) 
「ゼフレン!スカーレット!伏せろー!!!」
 ましろはそう叫びながら死霊に向かって翔ける。ゼフレンたちが伏せたのを確認してから思いっきり聖后剣を降り下ろした。
 ガキンッ!剣と剣がぶつかる金属音が鳴り響いた。死霊も聖后剣が自分にとって危険なものと認識したのか巨大な刀を手に取っていた。
 死霊は見た目通りのとてつもない力で押し返してくる。しかし、ましろも負けじと〈左手〉に集中し耐える。ましろがつばぜり合っていると突然聖后剣が輝きだした。
「なんだ!?」
 すると、死霊の持っていた刀が聖后剣に吸い込まれ始めた。聖后剣はあっという間に刀を吸い込み、さらに輝きを増しながら今度は死霊を吸い始める。
「逃がすか!」
 慌てて死霊が逃げ出そうとしたがそれを逃すましろではなかった。聖后剣を水平に構え、死霊に向かって突き出した。ゴリッとまるで本物の骨や肉を斬っているような感覚が手にやってくる。しかし、ほとんどの肉体を聖后剣に吸い込まれた死霊がまだ残っている上半身でましろに襲いかかってくる。
「ーーーたーーーッーーー」
「……そっか、お前も苦しかったのか……悪いけど俺にも守りたいものがあるんだ……だからサヨウナラだ」
 ましろはそう呟き、突き刺していた聖后剣を振り上げる。先程とは異なり肉を斬った感覚はなくフワッと死霊は斬れ霧散していった。
「終わったみたいね……」
 ましろが死霊を倒し終わるとせつなが後ろからカレンに肩を貸してもらいながら歩いてきた。
「ああ」
「最後、死霊を斬る前に何て言ってたの?」
「ちょっと、アイツに謝ってた。アイツも本当はこんなことしたくなかったみたいだからな」
 ましろは当然のようにそう言ったがその場にいた全員が驚いていた。このときましろは歴史上において死霊の言葉を理解できたものはいないことを知らなかった。かつて最強と呼ばれた〈死霊使い〉でさえ理解できていなかったことを……



 

 
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