42 / 45
死闘の果てに
死闘の果てに②
しおりを挟む
黒い何かは、ライオネルを飲み込むと死霊になってしまった。
目の前のあまりの光景にましろは、全く動けずにいた。その間にも死霊は、どんどん大きくなり続けている。
「ーーーーヴーーーーーウォー」
死霊は、天井すれすれの高さまで大きくなり、黒い塊から人型に変わっていく。しかし、死霊はましろたちに気づいていないのかその場で蠢いている。
「これは、かなりヤバそうだな……」
「そうね。ましろは、あとどれくらい動けそう?」
「正直なところ、立ってるのがやっとだな。せつなは?」
「私もましろと似たような感じね」
流石のせつなもライオネルとの戦闘にましろの治療と、力を使いすぎたようで、 その背中には翼が生えていない。
「ーーヴゥーーーーヴァーーー!」
すると、ようやくましろたちの存在に気づいたのか、死霊が遅いかかってきた。あっという間に距離を詰められ、2本の巨大な腕が無造作にましろたちに掴みかかる。
「あああぁぁぁーー!!!」
横に飛び、何とか死霊の腕から逃れる。せつなの方も無事攻撃をかわせたようだ。
しかし、死霊の攻撃はそこで終わらなかった。体側からもう2本腕を生やし、ましろたちを凪ぎ払おうとする。そして驚くことに、新たに生えた2本の腕には、ライオネルの剣が握られていた。
……避けられない!!……
片方の剣は、無銘で何とか受け止めたがもう一方の剣が残っている。今から攻撃の軌道から逃れることは難しい。それに、ましろが避けるとせつなに攻撃が当たってしまう。
ましろは、身体中の意識を全て左手に集中し指を鳴らした。
すると、〈範囲〉の時間が止まる。
ましろが止められる時間は、普段なら体感にして10秒ほどだが、今の状態だと3秒も止められないだろう。
したがって、ましろはせつなを助けるよりも死霊への攻撃を優先した。
……これで、倒れてくれ!……
ましろは死霊の後ろに回り込み、無銘を降り下ろす。
そして、無銘が死霊に当たる瞬間……
「なっ!?うそだろ……?」
死霊がましろの目の前から消えた。
まるで、ライオネルの能力が発動したかのように。
背後から死霊の腕が迫っている気配がするが、ましろは体を動かせずに、まともに攻撃をくらい吹き飛ばされる。
「ぐはっ!!」
一緒に意識も飛びそうになるが、何とか堪える。
「ましろ!?」
せつなからすれば、突然ましろが吹き飛ばされたように見えているだろう。せつなは、慌てた様子でましろのとなりまで駆けてきた。
「何があったの?」
「時間を止めたんだけど……逆にやられちまった……」
「え?」
「せつな、多分だけど……あの死霊はライオネルと同じ能力を使える」
「それって……」
「ああ、こっちが攻撃をすれば、カウンターで時間を止められちゃう」
「このままだと、かなり厳しいわね……」
せつなに言われるまでもなくこのままだと、二人とも死霊に殺されてしまう。ライオネルの能力を使えるということは、攻撃をするときにこちらも能力を使わないといけないが、ましろにはもう能力を使えるほどの残留思念が残っておらず、死霊に攻撃することすらかなわない。
けれど、ましろにはもう一つだけ手段がある。
「せつな……アレを使うから離れててくれ」
「まって!レインに使うなって……」
「たぶん、一度だけなら大丈夫だ」
「けど……」
「これしか方法が思い付かないんだ……俺を信じてくれ」
「……わかった。気を付けてね」
せつなはそう言うと、何かまだ言いたげにしているが、壁際までましろから離れる。
ましろは、それを確認すると、ただただ真っ直ぐ死霊に向かって歩き始める。
「……死霊術……」
すると、義手と同じくらいの大きさの黒い〈左手〉がましろに生えてきた。
そして、ましろは意識を集中し、〈左手〉を死霊に向かって伸ばした。
「殺行」
そして……世界は、黒に染まった。
目の前のあまりの光景にましろは、全く動けずにいた。その間にも死霊は、どんどん大きくなり続けている。
「ーーーーヴーーーーーウォー」
死霊は、天井すれすれの高さまで大きくなり、黒い塊から人型に変わっていく。しかし、死霊はましろたちに気づいていないのかその場で蠢いている。
「これは、かなりヤバそうだな……」
「そうね。ましろは、あとどれくらい動けそう?」
「正直なところ、立ってるのがやっとだな。せつなは?」
「私もましろと似たような感じね」
流石のせつなもライオネルとの戦闘にましろの治療と、力を使いすぎたようで、 その背中には翼が生えていない。
「ーーヴゥーーーーヴァーーー!」
すると、ようやくましろたちの存在に気づいたのか、死霊が遅いかかってきた。あっという間に距離を詰められ、2本の巨大な腕が無造作にましろたちに掴みかかる。
「あああぁぁぁーー!!!」
横に飛び、何とか死霊の腕から逃れる。せつなの方も無事攻撃をかわせたようだ。
しかし、死霊の攻撃はそこで終わらなかった。体側からもう2本腕を生やし、ましろたちを凪ぎ払おうとする。そして驚くことに、新たに生えた2本の腕には、ライオネルの剣が握られていた。
……避けられない!!……
片方の剣は、無銘で何とか受け止めたがもう一方の剣が残っている。今から攻撃の軌道から逃れることは難しい。それに、ましろが避けるとせつなに攻撃が当たってしまう。
ましろは、身体中の意識を全て左手に集中し指を鳴らした。
すると、〈範囲〉の時間が止まる。
ましろが止められる時間は、普段なら体感にして10秒ほどだが、今の状態だと3秒も止められないだろう。
したがって、ましろはせつなを助けるよりも死霊への攻撃を優先した。
……これで、倒れてくれ!……
ましろは死霊の後ろに回り込み、無銘を降り下ろす。
そして、無銘が死霊に当たる瞬間……
「なっ!?うそだろ……?」
死霊がましろの目の前から消えた。
まるで、ライオネルの能力が発動したかのように。
背後から死霊の腕が迫っている気配がするが、ましろは体を動かせずに、まともに攻撃をくらい吹き飛ばされる。
「ぐはっ!!」
一緒に意識も飛びそうになるが、何とか堪える。
「ましろ!?」
せつなからすれば、突然ましろが吹き飛ばされたように見えているだろう。せつなは、慌てた様子でましろのとなりまで駆けてきた。
「何があったの?」
「時間を止めたんだけど……逆にやられちまった……」
「え?」
「せつな、多分だけど……あの死霊はライオネルと同じ能力を使える」
「それって……」
「ああ、こっちが攻撃をすれば、カウンターで時間を止められちゃう」
「このままだと、かなり厳しいわね……」
せつなに言われるまでもなくこのままだと、二人とも死霊に殺されてしまう。ライオネルの能力を使えるということは、攻撃をするときにこちらも能力を使わないといけないが、ましろにはもう能力を使えるほどの残留思念が残っておらず、死霊に攻撃することすらかなわない。
けれど、ましろにはもう一つだけ手段がある。
「せつな……アレを使うから離れててくれ」
「まって!レインに使うなって……」
「たぶん、一度だけなら大丈夫だ」
「けど……」
「これしか方法が思い付かないんだ……俺を信じてくれ」
「……わかった。気を付けてね」
せつなはそう言うと、何かまだ言いたげにしているが、壁際までましろから離れる。
ましろは、それを確認すると、ただただ真っ直ぐ死霊に向かって歩き始める。
「……死霊術……」
すると、義手と同じくらいの大きさの黒い〈左手〉がましろに生えてきた。
そして、ましろは意識を集中し、〈左手〉を死霊に向かって伸ばした。
「殺行」
そして……世界は、黒に染まった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し
女神様、もっと早く祝福が欲しかった。
しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。
今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。
女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか?
一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。
ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。
子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。
――彼女が現れるまでは。
二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。
それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる