死霊使いと精霊姫

五月七日 外

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死闘の果てに

死の果てに③

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『世界は、何で出来てると思うか?』

 それは、ましろが死霊術デスベルの修行を行っていたときに、レインが突然聞いてきたことだった。
 ましろは、思い付く限りのものを答えたが、レイン曰くどれも正解でどれも不正解らしい。

『じゃあ、レインは世界は何で出来てるって思うんだ?』
『ましろは、二界説って知らないか?』
『二界説……あっ!じゃあ答えは白と黒か!』
『ああ、その通りだ』

 二界説とは世界に関する考えの一つで、生きているものを白、死んでいるものを黒として、世界は白と黒の二つで作られているという最もシンプルな説である。
 ましろも一度は二界説の本を読んだことはあるが、あまり生霊術スピナリーの役に立ちそうもなかったので、途中で読むのを止めたし、世界に関する考えとしては、生き物・生霊・死霊・残留思念オーブの四つで作られているという四界説の方が広く知られているので、レインに言われるまで二界説なんて全く頭の中に浮かばなかった。

『にしても、なんで二界説が出てくるんだ?今は、死霊術デスベルの修行中なのに……』
『ん?そうだなぁ、それはお前の能力の説明が二界説でした方が簡単だからな』
『ふ~ん、それで……さっき言ってた殺行ゾーエ・スコトノてのはどんな能力なんだ?』
『一言で言うなら……お前の能力殺行ゾーエ・スコトノは、白い世界を黒で塗り潰す能力だな』




 ましろの脳裏には、レインとのそんな会話が浮かんでいた。そして、ましろの目の前には、大きな黒い塊が悶えながら地面に倒れていた。

「どうやら、今回は上手くいったみたいだな……」
「そうみたいね……ライオネルは生きてるかしら?」
「ちょっと分かんないな。当てるのに精一杯で手加減なんて出来なかったしな」

 ましろの能力、殺行ゾーエ・スコトノはレイン曰く白い世界を黒で塗り潰すものらしく、ましろが能力を使う感覚は真っ白なキャンバスに墨まみれの手で殴りつけるようなものだ。そして、黒く塗り潰された世界はただひとつの例外なく、死んでしまう。
 しかし、この能力には大きな欠点があり……

「でも大変ね。当てようにも視界が真っ白なんて」
「ああ。今回は本当によく当たったよ」

 ましろは、この能力を使うとき視界が真っ白なのだ。というのも、世界で生きているものは全て白いのだ。したがって視界には白しか写らない。だから敵はおろか味方もどこにいるのかわからない。わかるのは、この世界には黒なんてほとんど無いことだ。死霊でさえもましろの目には白く写ってしまう。……じゃあ、この世界でも黒く写る俺の左腕はなんだ?……
 ましろは、一瞬だけ浮かんだ疑問を頭の奥へ追いやる。

「はあ、出来ればこの能力は使いたくなかったんだけどな……もしもせつなに当てたらと思うと……」
「今回は当たらなかったんだからいいじゃない。それに、その能力を使わなければならないほど死にかけるなんて、滅多にないでしょ?」

 せつなが珍しく笑いながらそんなことを言う。確かに、せつなの言うとおりかもしれない。ましろもせつなもライオネルと互角以上に戦えたのだ。そんな二人が死にかけるなんてこの先数えるほども無いだろう。そう考えるだけで、ましろは少し安心した。

「ありがとな。なんか、ほっとしたよ」
「別にわたしは……」

 ましろがお礼代わりにせつなの頭を撫でてやると、せつなは少し顔を赤く染めているがまんざらでもないのか、されるがまま頭を撫でられてる。
 ここで、あんまり調子に乗ると後が怖いので、ましろも手を止める。せつなの髪は手触りが良かったので、少し勿体無い気もするが……

「くはっ!……俺は、一体……」

 死霊がほぼ消滅すると、中からライオネルが現れた。何とか生きていたようだ。
 人を殺していなかった……せつなもましろもほっと一息つく。
 けれど、ましろには一つだけライオネルに聞かないといけないことがあった。

「なあ、ライオネル。その胸にある黒い箱はなんなんだ?」

 ましろが指差したライオネルの胸には、ルベールで見た小さな箱が埋め込まれていた。







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