魔王さんは大変なようで。

五月七日 外

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メイドさんも大変なようで。

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「次は窓の拭き掃除です。……シノさん大丈夫ですか?」
「大丈夫だ……気にしないでくれ」

 リイリが心配そうに俺の方をチラチラと見てくる。
 まあ、それも無理はない。なぜなら、俺は水やりのときも庭の植物たちの逆襲に会い、種を飛ばされるわ毒を盛られるわ水がかかってビショビショになるわ……あっ、最後のはリイリが間違えただけだったか……
 とにもかくにも、俺は庭の手入れだけで満身創痍だった。

「それにしても、リイリは一人で庭の手入れをしてたんだろ?すごいよなぁ」
「いえ、そんなことはないですよ。毎日してればシノさんもすぐに出きるようになりますって」

 リイリはほんの少しだけ顔を赤らめさせながらそう言った。もう少し自慢してもいいと思うのだが、こういう謙虚なところがリイリのいいところなのかもしれない。ライラなら自慢するだろうし、なんなら自分はぜんせん仕事をしていないのに自分が全部したことにしていそうである。……アイツ最低だな……
 俺が勝手にライラの評価を下げていると、背中に柔らかいものがあたった。

「この感触……おっぱいだな!!!って!何してるのリイリさん!?」

 なんでかよくわからないが、リイリが俺の背中側から両腕を回してギュッと抱きついていた。ちなみに、俺の予想通り背中に当たっていたのはリイリの控えめな胸だった。

「いや……その、窓掃除をしないとだから」

 リイリは視線を反らしながらそんなことを言う。

「窓掃除って、こっちの方がやりにくくないか?それに窓掃除くらい俺でもできるって」

 窓掃除は別に襲いかかる植物もいなければ、窓が掃除を嫌がってよけるなんてこともない。
 だから余裕だと思ったのだが……

「窓って、あそこなんですけど大丈夫ですか?」

 ライラがそう言って指差したところは城の天辺も天辺で、高すぎて窓がかなり小さく見えた。
 俺は高所恐怖症じゃないから高さはたぶん平気だと思うが、そもそもあの高さまでどうやったら行けるのかも分からないし、万が一落ちてしまったら即死ものだろう。

「……あはは、大丈夫じゃないな」
「足場も無いですし、シノさんって空飛べないですよね?」
「むり。普通に空飛ぶとかムリ」
「なので、今日はワタシがシノさんの翼代わりとして上まで連れていきますね」

 リイリがそう言うと、パタパタと翼をはためかして空を飛び始めた。
 フワリと体が浮かび、不思議な感覚と解放感が全身を襲う。飛行機くらいは乗ったことがあるがこんなにも空を飛ぶことが気持ちいいとは思わなかった。
 
「やべー!すげ!ヤッホー!!!」
「ちょっと、シノさん暴れないで下さい!落としちゃいますから!」
「ごめんごめん。初めて空を飛んだから気持ちよくってさ~」
「気持ちは分かりますけど、落ち着いて下さい。本当に落としちゃいますから」
「お、おう。落ちたら死ぬもんな。大人しくします」

 確かに、自分でもテンションが高すぎたと思う。落ちるのは嫌なので、大人しくしておこう。
 すると、リイリが俺を落とさないようにするためか先程よりも強くギュ~と抱きついてきた。……リイリは優しいな。俺を落とさないようにちゃんと抱き締めてくれて。あれ?これってなんか色々とチャンスじゃね?……
 そして、リイリに言われるまま数十秒ほど大人しくしていると、城の天辺まで着いた。
 先程は小さく見えた窓も近づいてみると大きかったことが分かる。

「でっけー!窓メチャメチャでけー!」
「ちょっとシノさん!なんでそんないちいち暴れてるんですか!?落としちゃいますって!」

 リイリは、暴れる俺を落とすまいと強く抱きついてくる。

「いやマジで柔らかいわ~!じゃなくて、でけー!」
「シノさん……もしかして、ワタシに抱きついてもらうためにわざと暴れてませんか?」

 あまりの良い感触につい感想が口からこぼれてしまった。さすがにこれは言い訳ができそうにない。

「いや、えっと~……バレちゃった?」
「……えい」

 リイリの可愛らしい掛け声で俺は放り投げられ……

「死ぬ~!!!リイリマジで!この高さは死ぬやつだから~!!!」

 俺は落ちながら、リイリに向かって謝罪やらなにやら言いながら助けを求めた。
 そして、地面スレスレのところで何とかリイリが許してくれて助けてくれた。


「シノさんはどうしてこうなんですかね……」

 その後の窓掃除は真面目にしたが、リイリの中での俺の評価は下がってしまったようだった。
 
 

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