35 / 37
新章–物語は終わらない–
ドグラ国王と仲間たち
しおりを挟む「どうぞ、中へ。ドグラ国王がお待ちです」
廊下の突き当たりで広間への扉に立っていた兵士が、やって来たアルファ達を見て扉を開いた。
重厚な扉がゆっくりと開いていき、その先に見えた広間は、王城の大きさに見合う豪華な作りだった。天井に吊るされたシャンデリアや、壁に飾られた剣や盾を模した飾り。それらに囲まれるようにして広間の中央に置かれているのは、優に10人ほどが並んで座れるほどに大きく四角い長方形のダイニングテーブルで、手前側に幾つかの椅子が置かれていた。
そして、テーブルを挟んで向かい側の椅子に座り、何人かの仲間を連れてアルファ達を待っていたのは。
「ようこそ、ディアルド城へ。歓迎しよう、魔術皇アルファリウス」
「お初お目にかかります、ドグラ王」
ディアルド王国を統べ魔術師狩りを扇動していた、魔術師にとっての宿敵であり、これから言葉を交わす交渉相手でもある男。
ディアルド王国の国王、ドグラ王だった。
椅子から立ち上がった彼はディアルド王国の正装である赤と金の装飾が施されたローブを身に纏っており、頭には国の主人の証たる王冠を戴いていた。
こちらを軽んじて軽装でやって来られるかとも考えていたが、取りあえず、真っ当な交渉が出来そうだ。
「本日は、話し合いの場を設けていただきありがとうございます」
「まぁ、座りたまえ。遠方から遥々ここまでやって来てくれたのだ、疲れただろう」
「お言葉に甘えさせていただきます」
ドグラ国王の言葉に従い、一列になって席へ着く。ドグラ国王と向かい合う、テーブルのちょうど真ん中の椅子にアルファ。その左隣にベイツが座り、右隣にはラウンズが座った。
「直接交渉に関わるのは、私たち3人です。それ以外の者は後ろに立たせていても良いですか?」
アルファたち3人の後ろに、5人の魔術師が立ち並ぶ。彼らは城砦に集った魔術師の中でも腕に覚えのある者で、実戦の経験もある。それゆえに、今回は万が一戦いになった場合の戦力として連れて来ていたのだ。
ドグラ国王は、此方の申し出を快く受けてくれた。
「あぁ、構わんよ。こちらも頼れる者を側に置いているのだからな」
ドグラ国王の背後には二人の兵士が立っていた。こちらと同じく、護衛としてこの場に居るのだろう。
か
二人のうち、こちらから見て右側の男が小さく会釈をする。広間までの道に並んでいた兵士や門番とは異なる、恐らく実戦用の分厚い鎧を着込んでおり、装着された兜の隙間から覗く眼差しは鋭く、歴戦の猛者を思わせた。
「そちらには、彼の事を知っている者も少なくないだろう。王国兵団長のレブルだ」
「えぇ、存じておりますよ」
ドグラ国王の言葉に答えたのは、ラウンズだった。
「ついぞ戦いの場で相見える事こそ無かったが、仲間から評判を聞いています。うちの魔術皇が襲撃した時にもしもレブル兵団長が居たなら、アルドラド要塞は一晩で陥落しなかっただろう、なんてのもね」
「とんでもありません」
レブルが兜の奥からくぐもった声で謙遜した。
「自分はただ、目の前の相手に全力を尽くしているだけです」
「確かな強さがありながら、それを鼻にかけないのも、レブル兵団長の美点だ。もう一人、レブル兵団長の隣に立たせているのが、王国兵団の副団長だ。彼も強いが、すぐ調子づく」
こちらから見て左側に立つ男もまた、小さく会釈をした。レブルと同じ様に着込まれたその鎧のせいで、彼の表情はうかがい知れなかった。
そこで咳払いし皆の視線を集めたのは、ドグラ国王の右側に座る、ベイツの向かいに座る男だった。王と同じか、少し若いぐらいの年齢だろうか。
ドグラ国王と似た服装をしているが、ローブではなくマントを羽織り、王冠は被っていない。王と比べると少し質素に見える出立ちのその男は、不満を露わにしたような早口で喋り始めた。
「ドグラ王、貴方の右腕である私を差し置いて先に団長たちを紹介するとは、どういう事ですかな!序列から考えれば、私が先でしょう!」
「おい、声を荒げるな。あぁ、彼は我が王国の大臣を務めているジャクスロムだ。普段から大事な決断の折にはジャクスロムにも相談をしている。今回の話し合いについても、私から同席を頼んだ」
「そうでしたか。よろしくお願いします、ジャクスロム大臣」
「えぇ、良い会議となるよう、互いに努めましょう、アルファ皇」
アルファの言葉に、ジャクスロム大臣はようやく自分についての紹介が終わったことに満足したのか、先ほどの荒ぶりようからは想像できないほどに静かな口調で返答した。
ドグラ国王側の紹介が終わったと見たアルファが、左隣のベイツの方を指し示す。
「こちらは、私の補佐を務めていただくベイツです。私と同じく皇家の血筋を引くもので、私の兄にあたる者です」
「よろしくお願いします」
ベイツの言葉に、ドグラ国王たちが小さく会釈を返す。その様子を見ながら、反対側、右側に座っているラウンズを指し示す。
「こちらが、魔術師の中でも一際腕が立ち、王国兵団との交戦経験もある、ラウンズです」
「どうも」
「あぁ!君があの!」
大きな声を上げたのはジャクスロム大臣だった。
「戦地より帰って来た兵士たちから名前を聞いていたよ、とてつもなく強い魔術師が居ると!お目にかかれて光栄だ!」
「それはどうも」
言葉少なにラウンズが答える。ふと彼の横顔を見ると、貼り付けられたようにピクリとも表情筋を動かさない、真顔だった。
彼からすれば、目の前に居る大臣や兵団長たちは、実際に戦地で相対した者たちなのだ。直接命のやり取りをしてきた分、アルファやベイツに比べ、王国への憎しみが大きいのだろう。
だが、それを必死に噛み殺そうとしている顔だ。怒りに身を任せてしまえば、話し合いどころではなくなるのだから。
ラウンズの忍耐を無駄にしない為にも、この話し合いは必ず良い結果としなくてはならない。
「では、本題に入りましょうか」
アルファの言葉に、ドグラ国王がうなずく。
「あぁ、互いの為にな」
今後の魔術師の未来を左右する交渉が、ついに始まった。
0
あなたにおすすめの小説
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
もういいや
ちゃんちゃん
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが……
まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん!
しかも男子校かよ………
ーーーーーーーー
亀更新です☆期待しないでください☆
台風の目はどこだ
あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。
政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。
そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。
✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台
✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました)
✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様
✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様
✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様
✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様
✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。
✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる