3 / 33
囚われてから何日目だろうか
甘いものはお好きかい
しおりを挟む身動き一つ取れず時計もない。ましてや外の光など入ってくるはずも無い地下室にずっと閉じ込められているせいか、気が付くと意識を宙に放っているというか、なんというか。
目の前に奴が居ることに、声を掛けられるまで気付くことすら出来なかった。
「やぁ、元気かい?」
「元気に見えるか」
「生態学上は非常に健康的だと思うよ。精神面に関しては僕の魔術じゃどうにもならないからねぇ。お望みとあらば、中毒性が軽目の薬物でもどうだい?あぁ、向精神薬がご所望かな?」
「御託は良いから、何の用だ。まだ晩飯には早いだろ」
「なに、3時のおやつでも、と思ってね」
「おやつだと?」
「甘いものはお好きかい?」
そう言いながら奴が宙に手を翳すと、その掌に突如として小瓶が現れた。奴の掌にスッポリと収まる程の大きさで、中には黄金色の液体が入っている。
当然の様に使役された空間魔術に今更驚く筈も無く、小瓶を問う。
「何なんだ、それは」
「綺麗な黄金色だろう?私の髪の毛をイメージしたんだよ。見た目って大切だからね」
「何なんだって聞いてるんだよ。まさかまた、変な薬の類じゃないよな」
「あ、バレた」
「おい」
「大丈夫だよ、殺しはしないから」
「お前ッ」
糾弾の言葉を紡ごうとした次の瞬間、奴の右手がヒラリと閃いて、俺の左手の爪を纏めて剥ぎ取った。
「ーーーーッッッ!!!」
焼ける様な灼熱の痛みが指先にへばりつく。
耐え難い苦痛に咆哮を強制させられそうになるも、血が滲む程唇を噛み締めて、押し殺す。
涙滲む視界の向こうで、奴が微笑む。
「お前ッッ、何、すんだァ!?」
油断すれば言葉を滲ませてしまうほどの嗚咽を堪えながら、必死で咆える。痛みなんかに負けてはいられない。
俺の指先からポタポタと零れ落ちゆく血液が足元に真っ赤な楕円を形成した。足先に触れる滑りに怒りを煽られる。
そんな俺に見せつけるようにゆったりとした動きで、奴は俺から剥ぎ取った5つの爪を小瓶に入れ軽く振った。
黄金色に浸された爪が鈍く光を放つ。
「嗚呼、やっぱり成功だよ、おめでとう」
明るい笑顔で意味の分からぬ祝福を投げ掛ける奴を僅かな意地で睨み付けるも、奴が臆する筈も無く、むしろ俺の反骨心に心を踊らせる。
「もう少し君のご尊顔を見つめていたいけれど、痛むだろう、その手。幾ら半不死の君とはいえ、痛みは感じるだろうからね」
ご機嫌そうに奴は俺に歩み寄り、身じろぎ抵抗する俺の頭を抱き抱えて額にチゥとキスを落とした。
男のクセにやけに柔らかい唇が無造作に押し付けられ、その感触に途方も無い嫌悪感と屈辱を余儀なくされる。
「やめろォ!」
左手の痛みと不快感でごちゃ混ぜの心を奮わせて眼前の男に吼えた次の瞬間、事切れた様に俺は意識を失ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる