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僕はご機嫌だよ
蒼
しおりを挟む「はい。計画を続行します」
耳元から手を離す。離れた相手との会話を可能にする魔術,『接続魔術』。使い方によっては多様な効果を発揮する便利な魔術だったが、繊細な魔力のコントロールが苦手な僕には,精々通信に使うのが精一杯だった。
慣れない魔術の行使に,少しだけ視界が霞む。いつからか,魔力を消耗すると身体が不調を訴える事が多くなった。老いたのだろうか、等と自嘲気味に笑った。
椅子から立ち上がり,棚に並べてあったアルファリウスの爪入り小瓶の一つを手に取った。
左手の親指の爪。黄金色の液体に浸されたそれは、鈍く深い蒼を発していた。間違いなく、僕の探していたのは彼だったのだと、その蒼を見て確信した。
思わず、その蒼色に魅入ってしまう。小瓶の蓋を開けて,そのまま中身を煽ってしまいたくなる程に、惹きつけられていた。
しかし、そうしてしまえば計画に遅れが生じる。それだけは避けなくてはならない。僕は託されたのだ。
魔術師存亡の運命を
僕がしくじれば,王国の兵士達に魔術師達は残らず殲滅されてしまうだろう。絶やしてならないのだ、魔術師の血統を。
「必ずや、果たして見せよう」
小瓶を棚に戻して、代わりに机の上に置いていたラジオを持った。アルファリウスへの、細やかなプレゼントだった。
今日が自分の誕生日だという事を、彼は覚えているだろうか。「こんな物いるか」と、突き返されたりはしないだろうか。
心の何処かに、酷く女々しい自分が居ることに、時折辟易とする。この後に及んで、アルファリウスに愛情を抱いている自分にも。
アルファリウスを正しき運命へと導き、魔術師の未来を切り開く。それこそが、僕の役目だと、今一度胸に刻む。
「いっそ誰か、僕に『操作魔術』でも掛けてくれないかな」
誰も居ない自室に吐き捨てる様に呟いて、僕はアルファリウスの居る地下室へと向かった。
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