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目的
ヒストリーofディアルド(幕間)
しおりを挟むディアルド王国はかつて,初代国王の『グロリアス』が統治していた小さな王国であった。潤沢な資源のお陰で国力は申し分無く,国民達は何不自由なく暮らしていた。
しかしある時,より多くの財を成したがったグロリアス国王が,隣国の敷地内に位置する巨大な鉱山を奪う為兵を差し向けた。
隣国は巨大でありながらも未開拓の地が多く,グロリアス国王が狙った鉱山も十分な整備はされておらず,山の傾斜を利用し奇襲を仕掛けた事が功を奏し,ものの1週間で鉱山はディアルド王国の物となった。
グロリアス国王は瞬く間に鉱山の開発を推し進め,小さな国には大いに有り余る程の金や銀等の鉱山資源を獲得していった。
それを使って自国の騎士団を更に堅牢な物にし,更には他国に売りつけることでまた財を成した。
これに味を占めた国王は,増強された兵力を派遣し隣国へと更なる侵略を開始し,結局,隣国の広大な国土の全てを占領してしまった。
みるみるうちに強大になっていくディアルド王国に,他国も警戒こそすれど手を出す事は無く,傍観しながらいつ起こるかもしれない戦に向けて国力を増強させていった。
それから数百年が経ち,ディアルド王国は豊富な資源を元に度重なる開発や研究を推し進め,大陸一の高度な科学技術を誇る大国となっていた。
6代目国王であり現国王である『ドグラ』は自国の現状に満足しており,初代国王の様な侵略を行うつもりは無かったのだが,ドグラが国王に就任してより10余年が経った頃,ディアルド王国周辺の国々が『連合国軍』を名乗り,突如として次々に兵を起こしディアルド王国に攻め込んできた。
大国であれど,合わせて6つの国が結集した連合国軍にディアルド王国1国で立ち向かうのは無謀であり,進んだ科学技術力も数の力の前に破られて行き次第にディアルド王国は劣勢に立たされていった。
結果,大戦開始から二ヶ月余りでディアルド王国は国土の半分を連合国軍に占領され,兵士達の多くを失ってしまった。
絶え間なく続く連合国軍の猛攻に兵力も資源も尽きかけた現状を打破すべく,ドグラ国王は奥の手を出した。それが,『魔術師』達であった。
100年程前に突如として現れ国内に住み着いた魔術師達。強力で便利な魔術を使えながらも,それを人類の発展へと利用としていた魔術師達をドグラ国王は半ば強制的に戦争へと動員。
前線へ送り込み魔術での攻撃を仕掛けさせたり,ディアルド王国の科学技術と魔術を組み合わせて新たな兵器を開発させたり。代々受け継がれてきた王国を守る為,全力を尽くした。
魔術師の戦争参加より程なく,戦況は一転。連合国軍は未知なる魔術に為す術なく後退していき,新たな兵器を軸とした戦術を展開した事も功を奏し,ディアルド王国は連合国軍を撃退する事に成功。
むしろ,戦争の混乱に乗じ連合国軍の領土の一部を占領した事で更なる国土増大となった。
こうして,魔術師達の助力により大勝を収めたドグラ国王は,魔術師に対して高待遇を約束し,魔術師達は高い地位と沢山の財を成した。
パタン,と本が閉じられた。男は読み上げ終えた本の表紙を指先で撫でた。タイトルは,『最新版ディアルド王国史実書』。
それを見て,馬鹿らしそうにフフっと男は笑った。
「と,ここまでが歴史書に記された史実だ。魔術の恩恵を受け戦争に勝利した国王は,魔術師達を厚遇したらしい。だが,現実はどうだろう?戦争終戦以来連日,王国軍により魔術師達は狩られている。そう,書物とは真逆なのさ。俺たち魔術師を散々こき使って戦争に勝利したのは事実だ。あの頃は,魔術師が皆軍と一緒に戦った。勿論魔術師達にも死者が出た。でも皆信じてたのさ。自らが暮らす国の為,恩返しのつもりで戦ったのさ。だがどうだ。いざ戦争が終われば,国王の野郎は俺たちの事を『国に脅威をもたらす悪魔だ」,だとよ。ふざけてやがる。腐ってやがるんだよ,この国は。だから」
男は手の内の本を放り投げ,パチリと指を鳴らした。たちまち本は火に包まれ,一瞬暗い部屋が照らされたかと思うと燃え尽きた。灰が舞う様子が薄らと見えた。
「俺たち魔術師がこの国を戴く。もう仕込みは始まってる。ベイツが上手くやれば,魔術師の未来は安泰なのさ」
外から怒号が聞こえ始めた。「魔力の反応だ!」「近いぞ,探し出して殺せ!!」などなど。王国兵たちがすぐそこに来ていた。
「ははは。カッコつけすぎたか?ともかく,じきに魔術師達はこの王国を乗っ取る。やられてばかりじゃないのさ。もう少しだけ,待っててくれよ」
男はローブのフードを被り,また指を鳴らした。
転移魔術が行使され男は姿を消した。
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