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皇位継承者
紅
しおりを挟む「『紋章を持たぬ者は皇族としては認められない』,本来は紋章を使い切った皇族への法だが,これを利用して第二皇子を追放する」
「まさか…,アルファの紋章を封印するの!?」
「封印魔術を使い,アルファの紋章と魔力の半分を封じる。解放する為の言葉は,お前にだけ教えておこう」
「待って!パパ,本当にアルファを追放するの!?ダメだよ,だって,アルファは何も悪いことしてないのに!」
「分かってくれベイツ。全てはお前の為なのだ。お前の立場を守るには,こうするしかないのだ」
「立場なんて,皇位なんて要らないよ!だからお願いパパ,アルファを追放しないで!」
「……,お前も大人になれば分かる。時には,例え我が子であろうと見捨てねばならぬのだ」
「俺が…,ベイツの弟…!?」
ここに来てから,散々驚かされたりしてきた。だが,今回ばかりは今までとは驚きの度合いが大きく違った。
俺とベイツが兄弟だと…?ふざけた冗談にしか思えないが,ベイツの反応を見た俺は,それを信じざるを得ない気がしていた。
「その通りだ。お前の父親,現魔術皇が,ベイツの皇位継承権を確実なものにする為,お前を皇族から追放した。 どういう理由で追放された俺は知らないが,どうやら,真っ当な理由で追い出されたらしいな」
告げられた事実に唖然とし動けない俺の前にベイツが立ちはだかり,ミディールへ言う。
「ミディール,今その話はしなくてもいいだろう?大人しく抵抗を辞めるんだ。今ならまだ何とかなる。僕達で魔術師を纏め上げ,王国へ反撃を開始するんだ。もう僕は,君とは争いたくない!」
「無理だな」
ミディールが再び,バチバチと閃光を散らす雷の剣を抜いた。
「俺は絶対にお前を王座に座らせる。王国を潰すのは賛成だが,それを為すのはアルファじゃない。お前だ,ベイツ。お前が王国をぶっ倒すんだ。反対するなら,例えお前相手でも容赦はしない」
「悪いけど,僕は魔術皇にはならない。アルファを魔術皇にするんだ。どうしてもって言うなら,力ずくで行かせてもらう!」
「お前が俺に勝てるとでも!」
ミディールが剣を振るい一筋の雷を放った。ベイツはそれを避けながら,片手で小規模な火炎を作り出しミディールへとぶつけるが,剣で受けられた火炎は霧散し,ミディールへは届かない。
火炎を受けた体勢のまま,ミディールはベイツへと斬りかかる。ベイツは後ろへ飛び退きそれを躱すが,絶え間なく振るわれる剣に少しずつ余裕を無くしていく。
「喰らえ!」
ミディールが突き出した剣を半身を開いて躱したベイツは,壁を蹴り宙を舞ってミディールの背後を取った。そのまま背中へ一蹴りかまし,よろめいたミディールが振り向いた所へ両手で火炎を放った。
しかし,それもまたミディールの剣に受け止められてしまった。火炎の向こうで微笑むミディールの笑顔に唇を噛むベイツの両手首に,何処からともなく現れたミディールの魔力を帯びた鎖が巻きついた。
「これの解き方は知ってるよ…!」
ベイツが魔術を使役し,鎖を解いた。だが,その鎖に気を取られた一瞬の隙を突いて,ミディールは爆裂魔術で鎖を爆裂させベイツに爆風を浴びせた。
「くっ…,!」
直接爆発を受けた訳では無いが,強烈な痛みがミディールの両腕を襲う。 軽い火傷のように皮膚がヒリヒリと痛むのを堪えながら,ベイツは蹲った。
「その程度のダメージなら治癒魔術で治せるだろう?そのままそこで大人しくしていてくれ」
そう言いながら,ミディールは俺の方を向いた。俺は震える手で短剣を握り締めるが,ミディールは意に介さず歩み寄ってくる。そして,奴はポケットから小瓶を取りだした。その中の黄金色の液体に,俺は酷く見覚えがあった。
「魔力反応液…?どうしてお前がそれを…?」
「今からお前の魔力を奪いそれをベイツへと注ぎ込む訳だが,その為には一時的にとはいえお前よりも強い魔力を獲得する必要がある」
「そうか…,っ…,吸収魔術でアルファの魔力を奪うつもりなのか…!」
ベイツが呻き声混じりに言った。
「その通りだ。吸収魔術は相手の魔力を奪えるのが,奪えるのは自分よりも魔力の弱い相手からだけだ。だから,魔力反応液を飲んで一時的に俺の魔力を活性化させ,お前の魔力を超えてやる!」
ミディールが小瓶の蓋を開け,中身の黄金色の液体を煽る様に飲み干した。奴は少し顔を顰めたかと思うと,次の瞬間目をかっ開き愉快そうにニヤリと笑った。
「……………,最高だ」
呟いたかと思うと,次の瞬間俺の両腕両足に鎖が殺到した。俺は群がる鎖達を断ち切ろうと短剣を振るったが,
「切れねぇ!?」
鎖達は斬撃を物ともせず,次から次へと俺の身体へ纏わりついてきた。半年前よりも遥かに強い力で締め付けてくるその鎖達に俺は完全に身動きを封じられ,壁に寄りかかる様にして倒れ込む。
ミディールを見ると,奴の身体が仄かに黄金色に光っていた。片手に持つ雷の剣は先程までより更に激しく輝き,奴の魔力の高まりをありありと見せつけてきた。
その主たるミディールは恍惚とした表情で自分の胸に片手を置き,小さくフフフと笑っていた。
「身体中に魔力が漲るのを感じる…,俺は今この瞬間,確かにお前よりも強いぞ,アルファ!」
奴の言う通りだった。奴の魔力が宿った鎖が断ち切れなくなったのは,俺の魔力が奴の魔力よりも弱いからだ。今のミディールは,俺でもはっきりと分かるほどに全身に魔力が満ちている。
「さぁ,ようやく全てが整った。アルファ,お前の魔力を頂くぞ」
ミディールが雷の剣の先端をこちらへと向けた。その先端が僅かに緑色を帯び始める。あれが吸収魔術か。
「くっ…,黙ってやられるかよ!」
俺は短剣を魔力で浮遊させ,奴へと飛ばした。しかし,魔力で盾を形成したミディールには届かず,幾度差し向けても全て跳ね除けられる。
「執拗いぞ」
何度も邪魔建てをする短剣に苛立ったミディールは,剣を振るい短剣を弾き飛ばした。短剣は俺の操れる範囲の外まで床を転がっていき,完全に操作出来なくなった。
もう短剣が飛んでこない事を確認したミディールは,剣が届く距離まで歩み寄ってきた。
「確かお前は不老不死だったな。安心しろ。魔力を奪われても不老不死の力は消えない。痛いだろうが,死にはしない」
ミディールが剣を構えた。
「随分と手間取ったが,これで俺の願いが叶う」
俺は身動ぎする事しか出来なかった。
「ハァァァァ!!」
「くそぉぉぉ!!」
突き出された剣に貫かれた身体から,鮮血が零れ出した。脈打つ腹部から流れ落ちていく紅が,床を真っ赤に染め始める。
俺はそれを傍観していた
ミディールは唖然としていた。目を丸くして,驚き固まっていた。俺もきっと,同じ様な顔をしていただろう。
剣に貫かれた身体の主は,優しげな笑顔で俺に笑いかけた。口の端から,一筋の紅が流れた。俺はそれを見て,泣きそうになってしまった。
「君は僕が守る。だって,兄弟だからね」
ベイツがミディールに背を向け,俺の方を向いて仁王立ちし,雷の剣に貫かれていた。
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