3 / 10
本編
第1話
しおりを挟む人が簡単には立ち入れぬ谷底でツルハシを振るう一人の男がいる。
カーン・・・カーン・・・カーン・・・ガガツツ
「ふぅ~
・・おぉー純度も申し分ないな・・・・」
コイン一つほどの魔石をランプにかざして純度を確かめる。
「このくらいの魔石をあと何個か欲しいところだなぁ~」
まだ終われない事に、ため息吐きながら再び作業し始める・・
それからだいぶ時が経ち、辺りの気温が下がりだした。
「ふぅ・・・今日はもう終わりだな」
身震いしながら魔法時計を確認すると既に夕食の時間になっていた・・・
谷底のような光が届かない場所には魔道具で明るくするのが一般的だが、その欠点として時間の感覚がおかしくなる。
「今日も干し肉とスープかー・・ふぅ・」
材料が残り少なくなってからは代わり映えしない干し肉と乾燥野菜のスープがごちそう・・
魔コンロでスープを作り夕食にする。
食後は母特製ハーブティーを飲むのが日課になっている・・・
「ふぅ~・・・この世界に来てもう3年だな・・
時が立つのが早いって本当だったんだなぁー・・・ははっっ」
ふと、3年前の出来事が脳裏によぎる・・・
*3年前*
「羽咲 龍斗(はざき りゅうと) 20歳」
アースという星のある島国に住んでいた。
施設で育ち、親が誰か知らない・・
施設長が名付け親で俺が唯一身につけていたものは両耳のピアスだった・・・
(施設長いわく最初から付けていたらしい・・・)
ピアスは一度も外れた試しがなく、そのせいで何度かひどい目にあったりもした。
社会に出てからは施設へ寄付する為に与えられた仕事を淡々とこなす日々・・
友達もいなかった・・・容姿がおかしいことと常に無表情だったことが周囲に受け入れられなかったようだ。
これからも変わらない毎日を過ごすと思っていたが、仕事が終わり帰宅して家のドアを開けた瞬間・・・まばゆい光に包まれ人生が変わったのだった・・・
「っうわ・・え・・なんだここ?」
眩しくて閉じていた目を開けると・・・
そこは真っ白い世界が広がっていて、上下がわからなくなりそうな場所だった。
思わず目を閉じるが・・
『ようこそ、人の子よ』
声が聞こえ驚いて目を開くと、先ほど見たものが嘘かのように辺りが草原になっていた。
異様な体験に頭が混乱する・・・
(家に着いたばかりなのに寝てしまったのか?・・・)
『っこほん』
(また幻聴が聞こえて来た・・・)
『幻聴ではありません!!こちらをお向きなさい!!』
「えっ・・・・」
慌てて声の方を見ると言葉を失った・・・
何故なら・・・羽の生えた・・・ピンクの毛玉が浮いて居たのだ ・・
「・・・・は?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる