ここはダンジョン3丁目です

ゆめのマタグラ

文字の大きさ
2 / 10

第2話 エッチな下着

しおりを挟む

 ここは近くの冒険者達の拠点にしている宿場町から馬車で1日、停留所から徒歩3日の場所にあるダンジョン3丁目。
 その洞窟1Fで、2匹の魔物が今日ものんびりとしていた。


「先輩先輩」
「なんだよスラミン。俺は今、忙しいんだ」
「……なにしてるんっすか」

 緑色のプルプルした身体のスラミン(スライム族)は、愛用の剣と盾を持って変なポーズを取っているスケサン(スケルトン族)に冷ややかな声を浴びせる。

「いや俺も1階とはいえ中ボス張ってるからな。冒険者相手にした時に、こう盛り上がるポーズを考えてるんだ」
「……そっすか」
「なんだその目(?)は。腕のある冒険者とのバトルは、ダンジョン内で撮影されるんだぞ。それが“ダンつべ”で流れるかもしれないんだぞ!」

 ◇ ◇ ◇

 通称“ダンつべ”
 正式名称「Danjon Tube」という、ダンジョン内の様子を魔力ネットワークを通じて放送しているネットチャンネルのひとつだ。
 冒険者達の多く集まる町、ギルドなどで放送されている。
 ダンジョンの魔物や罠。隠し階段の場所を良く知る事が出来る攻略者向けのチャンネル――なのだが。これを運営しているのがダンジョン側なのを知る人間は少ない。

 より多くの冒険者に来て貰いたい――。
 もっと有名になりたい――。
 カッコイイ俺様見て欲しい――。

 そんなダンジョンの魔物達の願いから、魔界一の魔力ネット企業“デスエージェント商会”の協力もあって、今日こんにちに至るという訳である。

 ◇ ◇ ◇


「ウチのダンジョンもチャンネル持ってたんですね」
「華麗に戦う俺を見れば、田舎の墓地で寝ているかーちゃんも安心してくれるって寸法よ」
「先輩……オレ、ちょっと感動しました」

 ちなみにスケサンのかーちゃんもスケルトンで、墓地は実家である。

「お前もカッコイイ戦いをすれば、配信見た人らの投げ魔力も貯まってクラスチェンジ出来るかもしれないぜ」
「なるほどッ!」
「よーし。次はこういうポーズはどうだッ」
「ん?」

 ポテっと。
 スケサンの愛用の盾の裏から一冊の本が落ちる。
 その本には『今日から貴方もサキュバスにモテモテになれる』というタイトルと、大量の付箋ふせんが張られまくっているのを――スラミンは見て見ぬふりをしつつ、そっと陰に隠した。

 ウウウウウウウウゥゥゥゥ――。

 突如、ダンジョン内に響き渡るサイレン音。

「おっと冒険者が来たみたいだな。俺の華麗な活躍、見とけよな」
「オレはダンジョン入り口だから見れないっすけどね」

 そんな事を言い合いながら、2匹は持ち場に着いた。

「何々。『ボスのドラゴンは不在です。今日のボスは“リビングアーマー”です』だって」
「こんな辺鄙へんぴな所にダンジョンなんてあったのね」

 ダンジョンへ侵入してきたのは、女性冒険者2人組だった。
 片方は、果たしてどこ守ってるのか不明なビキニアーマーを着たピンク髪の20代女性の戦士。
 もう片方は絹のローブを着た、大きな杖を持った青髪ロングヘアーの10代の魔法使い。

「ドラゴンが居るようなダンジョンだし、ちょっとお宝に期待できちゃうかも」
「この間、ジョーさん(ゴブリン狩り)が死んだって聞いて……ちょっと怖いんですけど」
「なによロマリー……貴女の奇麗な顔に、傷一つ付けさせないわ」
「レインお姉様……んぅっ」

 えっ君らそんな仲なの――とスラミンは驚くが、先ほど隠した本を盗み見する。

【サキュバスにモテモテになる近道ランキング1位。ダンジョン配信で大活躍して投げ魔力ポイントをめっちゃ稼ぐような魔物に決定!】
【今は空前の魔ネット配信時代! 動画がバズれば、ダンジョンボスにだってなれちゃうかも?】
【君も魔ネットで配信者にならないか。提供:デスエージェント商会】

「よーし。オレも活躍して、サキュバスのお姉さん達にチヤホヤされるぞ……」

 天井を這って、イチャイチャしている2人の頭上やや後方移動して――スラミンは液体のように身体を変化させ、女戦士レインの頭を覆った。

「もがっ!?」
「お姉様ッ!!」

 突然のスライムの襲撃に、2人は慌てふためく。
 レインは必死に頭に張り付いたスライムを取ろうとするが、液体状に変化したスライムを素手で取る事は出来ない。
 さらにロマリーも反射的に杖を構えるが、どのような魔法を使えば彼女を傷付けずに救えるか――そのわずかな時間が命取りだった。

「がッ――」

 スライムは頭から徐々に全身へと侵食していく――。
 パニックになったレインは剣を引き抜き、スライムを斬ろうとするも――足元のバランスを崩し転倒してしまう。
 
 ザクッ――。

「あっ……」

 剣はそのままロマリーに振り下ろされ――絶命した。

「ごばっ」

 そのままレインも窒息してしまい――。
 後には、気まずそうに身体から離れるスラミンだけが残った。

 ピンポンパンポーン↑

『2人組の冒険者は1階で死亡しました。アシッドスライムのスラミンさんに盛大なな拍手を送りましょう』

 ピンポンパンポーン↓

 放送が終わると同時に、スケサンが走ってきた。

「お前マジかよ。冒険者2人もヤるとか大金星じゃねーか!」
「まぁ1人は棚ぼただけど……でもオレ、やったんっすね!」
「これは今日の動画配信はお前に全部話題取られちゃうなぁ……ん?」

 シューっと。
 白い煙が女戦士の身体から上がっている。
 よく見ると、スラミンの粘液によってビキニアーマーが溶けているのだ。
 ほぼ全裸の状態になった女戦士レインの姿を見て、2匹は思わず互いに顔を見合わせる。

「「やべっ」」

 
 当然この様子は魔ネットでされ、一部男性冒険者達に大好評だったという。一時的だがダンジョン3丁目のチャンネルがランキング上位になった。
 そのおかげでスラミンは大量の投げ魔力を獲得し、ポイズンスライムへとクラスチェンジしたのであった。

 冒険者と魔物、そのどちらにもWIN―WINな配信でこの日は終わるかと思えた。

 ――R18配信許可を取っていないので、その後すぐチャンネルがBANされた事を除けば。


「あのさぁスラミン君さぁ」
「はい……」
「ウチ一応健全なダンジョン配信やってんのよ」
「すいません……」
「スケサンもよく言っといてね」
「分かりました……」

 ボス代理の前で、今日も2匹は正座されられて説教されるのであった。

 今度からは冒険者の倒し方にも気を付けなければならない――。

 さぁ、次はどんな冒険者がやってくるのやら。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

本日死亡した冒険者の紹介コーナー

元盗賊のレイン(24歳)

職業:戦士
レベル:17

装備
武器:鋼の剣
頭:なし
胴:ビキニアーマー
腕:アイアンガントレット
足:かわのくつ

趣味:ダンジョン配信で可愛い子が出ていないかチェック
好きなもの:ロマリー、可愛い女の子
嫌いなもの:スライム

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

新人のロマリー(14歳)

職業:魔法使い
レベル:17

装備:宝玉の杖
頭:魔力の帽子
胴:絹のローブ
腕:ブレスレット
足:かわのくつ

趣味:レインと一緒に買い物
好きなもの:レイン
嫌いなもの:男

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「戦士の持ち物も全部溶けちゃったから魔法使いから何か剥ぎ取るしかないか……」
「うわっ。この子、エグい下着付けてるよ」
「下着っていうかヒモしかないじゃん……止めとこうか」
「そですね……」


 おわり
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...