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鉄筋青春カタルシス
①
しおりを挟む俺は幼いころから、肩幅が広く筋肉質だった。
とくにスポーツに打ち込んでいたわけではないものを「ボディービルやってるの?」と初対面の奴に冗談でなく聞かれることが多かったもので、「とっつぁん坊やの逆バージョン?」と大抵は言われた。
身長が足らないだけで、年不相応な体つきに見合った渋い顔つきをしていたからだ。
糞餓鬼共もからかうのを躊躇うほど、ヒールのレスラーのように厳つかった俺は、見た目に反して、平和主義者だった。
まあ、平和主義者というか、正当防衛や誰かを守るといった目的なしに、暴力を振るう必要性があるとは思えなかったというか。
それでいて、小学校高学年から柔道場に通っていた。
小学校高学年ともなれば、悪目立ちするのは中学生に目をつけられる。
小学四年生からすでに中学生に冷やかされていた俺を、教師や親が心配して護身用に習うよう、すすめてきたというわけだ。
あくまで護身用にと、親らがすすめただけあって、俺が通う柔道場は攻撃より防御や受身の練習を念入りにした。
勝ち負けに拘らない俺は、見かけ倒しにさほど強くならなかったが、身につけた武道の基本は実戦でも十分に活かせた。
どれだけ喧嘩が強い奴だろうと、基本がなっていないと、割と話にはならない。
試合では勝てない俺ですら、未経験者相手に動きを見切って避けたり、あしらったりするのは難しくなかった。
という少々、余裕を見せることで「こいつは簡単にやれない」と相手は思うらしく、本格的にやりあう前に「今日は、ここまでにしといてやる!」と退散してくれた。
元々ヒールのレスラーのように厳しい見た目をしているのが、柔道を習うことで、ますます貫禄がついたのだろう。
相手は俺の力量を過大評価をし、俺を化け物じみたもののように思いこんで、喧嘩を売ってきても、大概、俺が手を伸ばす前に逃げていった。
正直、そうして俺の力量を見誤ってくれるのは助かった。
身の危険を覚えれば、攻撃も辞さないつもりでいたが、できる限り手を上げたくはなかった。
たとえ相手が先にしかけてきたとして、こちらが受けて立っては、結果的に両成敗と見なされやすいし、最悪、見た目からして俺のほうが責任を問われかねない。
そんな馬鹿を見るのは、御免だった。
なにも、俺も暴力的な気分にならないこともない。
ただ、必要性があるかどうかと、考える時点で踏みとどまるし、一時の解放感を味わうためだけに、後々、自分の首を絞めることになるのでは割に合わないと思ってしまうのだ。
大体、暴力的な気分を発散させる方法は、いくらでもある。
俺の場合はプロの格闘技の試合を見ることだった。
ポイントは選手に感情移入することだ。
そうすることで、選手が打撃を与え与えられるのを己の感覚とリンクさせることができる。
リンクの度合いが強いと、選手がノックダウンしたら俺も半ば意識は飛ぶし、試合終了時にはサウナでも入ったように汗まみれになって呼吸困難に陥る。
テレビを観ていただけのはずが、翌日には筋肉痛になったりもするのだ。
もちろん、体内でくすぶっていた暴力的衝動は、きれいさっぱりに消えている。
世の中の、どこぞの偉そうな馬鹿は「格闘技が世の暴力を増長させている」などと戯言をございていたが、プロ選手の血を散らすような激闘があってこそ、俺は非行に走らずに済んだのだと思う。
思春期特有の反抗的衝動も、柔道に打ちこんだり格闘技の試合観戦をして自己処理し、柄の悪い連中につけいられないよう気をつけていた。
ただ、世の中には、どれだけ注意をしていても、些細なことをきっかけに、己のあずかり知らないところで事態が悪化していく場合がある。
そのことを思い知らされたのが、高校生のときだった。
高校生になって筋肉質なのは相変わらずで、背も伸びてきた俺は、すっかり制服が似合わなくなり、「棟梁」をあだ名にされていた。
中学のころは、喧嘩で無敗(一度も勝ってもいないが)だったと噂され、その果てに「棟梁」のあだ名が板についたともなれば、どんなオラついた馬鹿でも無闇に絡んでくることはなくなった。
「棟梁」と笑い者にされるのを抜きにすれば、これまでになく平穏な学校生活を送れそうだと、思った矢先。
他校生の女から告白された。
こいつらはおっさん専なのか、女に告白されたのは意外にも、これが初めてではなく、交際経験もあった。
そのときはフリーだったものを、前の交際で両頬に赤い手形を作る羽目になり、しばらくはいいやと思っていたので、女をふった。
「はあ?このチンカス野郎!」と悪態を吐かれただけで済んだと思いきや、それから二日後に弟が亡くなった。
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