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キスと意地と意外な熱
しおりを挟む俺が幼いころから、親は共働きで大忙し。
隣の家に俺は預けられることが多く、高校生になっても、ほぼ毎日、夕飯を食べにいっていた。
幼いころほど、隣の家に入り浸らないとはいえ、夕飯前にお邪魔して、リビングでまったりすることもあり。
同い年の幼馴染、ソータがいたから、勉強したりゲームをしたりテレビを観たり。
その日はテスト明けとあって、映画チャンネルを垂れ流しに、二人でぼーっと。
ソータはソファにもたれ、俺はテーブルに頬杖をついて、映画を見るともなく見ていたら、キスシーンに突入。
さすがに気まずさを覚えて、リモコンをとると「なあ」と呼ばれた。
「おまえ、もう、やったの?」
今の流れから察して、なにが?とは聞きかえさない。
すこし間をおいて「うん」と首肯。
嘘だ。
つい変な見栄をはったのに、肯いたそばから悔いたし「俺はまだ」と返ってきたのに、さらに自己嫌悪した。
が、つづいた言葉に、疚しさは吹っとんで。
「いざというとき、恥をかきたくないから、練習相手になってくれね?」
思わず、振りかえりそうになって、肩を揺らしただけに、とどめた。
どうして、とっさに「はあ?イヤだよ、男同士なんて」と云えなかったのかは、自分でも分からない。
単純な好奇心なのか。
俺も未経験だから、練習をしたいのか。
二人とも、お互いに対して、なにかと負けずギライだから、このときも「余裕をみせてやる」とヒツヨウもなく、気張ったのかもしれない。
「拒むのは、自信がないからじゃ?」と鼻で笑われたくなかったし。
「いいよ」と応じ、すぐに振りかえって、ソファに手をつき、上体を伸ばした。
決断して即実行、一言もなく口づけたのは、もたつくほど「嘘ではないか?」と疑われると思って。
未経験ながら、キスには、すこし自信があったし。
そういう類で、キスシーンがスキな俺は、日ごろ、その尺が多めの動画をガン見しているから。
イメージトレーニングは十二分。
実践も上上だったようで「ま、待て、もう、もういいよ」とソータは息を切らしギプアップ
「どーよ?」と勝ち誇ろうとしたところで、目に涙をあふれさせ悲しげな顔をしているに、息を飲んだ。
どういうこと?と困惑する間もなく、幼稚園のころを思いだして。
「俺、大人になったら、ソータと結婚する!」とチューをした覚えが・・・。
十年まえのことを踏まえ、お年ごろになって、ソータのほうからチューを求めてきたとなれば。
俺のことをスキなのか。
だから、初めてでなく、経験済みのキスを味わって、複雑な心境なのか。
「ふーん」とにやにやしそうなのを、手でおおって隠し「ま、ぎりぎり合格点だよ」とすっとぼけ、テレビに向きなおった。
「・・・そう」と応じつつ、背中に視線を覚えるに、物足りなく思っているのだろう。
分かっていても、ムシしつづけ、違和感ありまくりの「キスの練習」についてツッコマず、そのままうやむやに。
焦らして、ソータがもじもじ右往左往するのを眺め、しばらくタノシミたかったし。
せっかく、スカレテいるなら、その優越感に浸って、ソータのラブラブアタックを堪能したいし。
いやー、明日からオモシロくなりそうだなあと、鼻歌気分でいたものを。
翌日、学校から帰ってきたら、隣の家、その門にソータと女の子が。
近くで向きあいながら、お互い目を泳がせ、そわそわ。
そのうち、拳をにぎったソータが、彼女の頬に手をそえ口づけを。
「ウブなふりして、彼女との初チューが外、しかも近所でか!」とツッコめず、俺は口をあんぐりとしたまま。
キスの途中で、ソータが気づき、顔を放したら、彼女もこちらを見て、跳びあがった。
目を見開き、頬を赤らめ、猛ダッシュでご帰還。
一方でソータは、俺に対して負けん気があるから、目をそらしながらも、家に逃げることなく。
その耳が真っ赤なのに「俺のことをスキじゃなかったのか」とあらためて、愕然として・・・。
「はっ!」と笑った。
だって、ソータのキスのし方は、昨日、俺がほどこした通りだったから。
フラれたような気分で「俺をスキなんじゃないかーい!」とショックを受けるより、そのことに、えらく興奮したもので。
「もっと教えたら、同じように彼女にするのかな」と舌なめずりをして、いまだ門に突っ立つソータのもとへ、歩いていった。
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