チャラ男なんか死ねばいい

ルルオカ

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家庭科男子①

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俺は元家政婦の祖母に育てられた。

とあって「子供でも家事を覚えておいたほうがいい」と幼いころから、ひととおり教えられ、中高生になると、プロのノウハウも叩きこまれた。

祖母はキビシかったが、無理強いをしたわけではない。

インドア派な俺には家事が向いていたし、基本的なこと以上を習ったのは、好き好み望んでのこと。
なにせ、将来の夢が「家政婦」だったほど。

ただ、両親とも学校教諭という家庭事情の宿命からは逃れられず、大学卒業後は小学校教師に。

教師の職務にも、やり甲斐はあったとはいえ、どうしても夢をアキラメきれず、懸命に学校に働きかけ、ちがう形で夢を叶えた。

「家庭科クラブ」の設立だ。

せっかく、プロ家政婦、祖母じこみの知識技術があるにもったなく、だったら、身近にいる子供たちに伝授しようと。
家庭に問題がある子などに役に立つだろうし、将来のためにもなるし。

クラブを立ちあげ「男女学年問わず、大歓迎!」と募集したところ、十人ほどの生徒が。

全員女子で、高学年の子。
日が経つにつれ、低学年の子も加わったとはいえ、いまだ男子はゼロ。

顧問の俺は男だし、今どきは「男が家事なんて(笑)」と意地を張らないと思ったのだけど・・・。

男子の関心がうすいのに、がっかりしつつ、もちろん態度にはださないようにし、クラブ活動に励む生徒らを熱心に指導。

で、家庭科クラブができて半年経ったころ。

その日はいつもの活動とちがい、お遊び的にたこやきパーティーを開催。
屋台を営む友人に借りた、たこ焼き用の大きな鉄板をかこみ、お祭り騒ぎ。

いろいろな具材をいれたり、味つけをしたり、ハズレの辛いものを紛れこませたり「ウマイ!」「マズイ!」「誰、これ作ったの!」と笑って叫んで泣いて、存分にタノシンデいたところ。

女子生徒が俺の服の袖を引き「先生、シマオくんが、廊下でうろうろしている」と。

「シマオくん?」と廊下のほうを見やると、タシカに男子が開けた窓から見え隠れ。

「シマオくん知らないの?
お父さんが元お相撲さんで、今は親方なの。

で、シマオくんも、わんぱく相撲やっていて有名なんだよ」

なるほど、女子生徒が云うように、どっしりした、お相撲さん体型をしている。

「お腹が空いたのかな?」と首をかしげるのに「ちょっと、声をかけてみるよ」と返しつつ、ひそかにたこ焼きをパックに入れて廊下へ。

ちょうど、ターンをしたときに俺が廊下にでたから、シマオくんはぎょっとして、硬直。

ちょっとしたことで、逃げだしそうだったから「やあ、こんにちわ」とゆっくりと歩みより「これよかったら」とほかほかのパックを差しだした。

「屋台用の鉄板を見て『お祭りでしか見たことない!』ってテンション上がっちゃって、つい、たこ焼きつくりまくっちゃってね。
このままだと、かなり余りそうだから、もらってくれないかな?」

目を見開き、警戒する猫のように俺を凝視。
「あ、これは、ふつーのたこ焼きだから、安心して」と笑みを深めると、顔をそらすようにパックを見やり、そろそろと手を伸ばしてきて。

が、パックに指を添えたとたん、はっとしたような顔つきになり「やめてくれ!」と手を振りあげ、俺の手をぴしゃり!

落ちた衝撃でパックのフタが開き、床にちらばるたこ焼き。

「うわ、もったいない」と一瞬、意識がそれた隙に、シマオくんは走って消えてしまった。

食べ物を粗末にしたことに気落ちしつつ、彼の粗暴ぶりに「けしからん!」と怒りはなく。

ひどく思い悩んでいるようだったし、顔をしかめながらも、涙目になっていたから。

「やめてくれ!」と叫びから伝わる葛藤は「たこ焼きを食べたいけど食べれない!」なんて単純なものでなさそうだ。

家庭科クラブに惹かれているだけでなく、どこかSOSを発しているような・・・。

助けを求める生徒がいれば、放っておけないが、なかなか一歩踏みだせないシマオくんを、強引に家庭科室に引っぱりこむのはイケナイ。

女子生徒が云うには有名人らしいから、人目が気になるだろうし。
彼に限らず、男子にとって女子だらけのクラブに混じるのは、ハードルが高いだろうし。

ある程度、自主的に積極性を持って、彼から近づいてくるのを待ってあげたほうがいい。
お節介を焼いたら、むしろ心を遠のかせ、二度と家庭科室に寄りつかなくなるかも。

念願の男子加入が叶いそうとはいえ、がんがん勧誘したいのを堪えて、慎重にせねば。

そもそも、教師たるもの、自分の都合で生徒にプレッシャーをかけるなんて、それこそ、けしからん。

そう自分に聞かせて、学校でシマオくんを見かけても、笑いかけるだけで声をかけず。
本人やまわりに気づかれないよう、観察しつづけて三日後。

週二回のクラブの日に、果たして、また廊下にシマオくんが顔を見せてくれた。



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