チャラ男なんか死ねばいい

ルルオカ

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家庭科男子③

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はじめは迷える子羊、いや、迷えるわんぱく相撲力士だったシマオくんが、今では誇らしい家庭科クラブの一員に。

順調に家庭科クラブになじみつつ、家政婦だったバアチャンじこみの知識技術を、俺の指導を通してどんどん吸収し、順調に家庭科男子として磨きをかけて。
クラブ加入男子、第一号にして、その目覚ましい成長に惚れ惚れとしていたのだが・・・。

家庭科室で一人、クラブの準備をしていたとき。

「あんたが家庭科クラブの顧問か!」と男が乱入。

上背があれば、横幅も厚みある、象のような巨体の男。

「誰!?」と仰天したのもつかの間、シマオくんがお腹にしがみついたのを見て「お父さんか」と察しがついて。
たしか元力士で、今は部屋をかまえる親方とか。

「この軟弱者が!」とシマオくんを突きとばしたのに、すかさず抱きとめる。
「ちょ・・・!」と抗議しようとしたが「ほら、弱くなっているだろうが!」と張り手をかますように怒声を。

「全国大会で五位になって、わたしに恥をかかせたのを忘れたのか!
しばらく、自分を見つめ直させるため、稽古から遠のかせたというのに、なんだ、このザマは!

オママゴトに夢中になるなんて、さらに弱くなるだけだし、人に知れてみろ!
また、わたしが笑われて、恥をかくことになるのだぞ!

この顧問のような、恥知らずなオカマになりたいのか!」

まあ、昔から「男のくせに」とバカにされて慣れっこだから、俺への侮辱はいい。

「わたしに恥をかかせるな」と子供を責めるのは聞き捨てならない。

ドスコイされてフッとばされるかもしれないが、シマオくんがこれ以上、傷つかないよう、全力で庇わなければ。

腹をくくって口を切ろうとしたら、先にシマオくんが一歩踏みだし、対峙するように身がまえて。

「じゃあ、母さんは家事をガンバったから、どんどん弱くなっていって死んだの?」

はじめて、シマオくんの声を聞いた・・!

発言内容を二の次に、つい感動してしまい。

集中が途切れたその隙に「お前!なんてこと!」と激昂した父親が闘牛のように突進。

気がつけば、間近に迫っていたので、父親の腕をつかみ、シマオくんをよけて前面に。
立ちふさがるだけでなく、足をはらい、伏せて倒れたのを、腕をねじ上げつつ、背中に膝を立てて押さえつけた。

緊急事態とあって、反射的にしたことだ。

ふと我に返ったなら、教師が父兄をねじ伏せるという光景を、あらためて目にして「しまった」と呟いたもので。

バアチャンは戦える家政婦だった。

ジイチャンがはやくに亡くなったのきっかけに、護身用として習いだした合気道を極めたのだ。

バアチャンにあこがれていた俺も、もちろん道場に通い、今や戦える教師に。

といって、教師たるもの、決して、暴力に訴えることはしまいと肝に銘じたのが。
いくら、生徒に危害が加えられそうだったからって、元力士の尊厳を踏みにじるように、保護者をはっ倒すなんて・・・。

「教師失格だ」とため息を吐き、とりあえず退いて父親を起こそうとしたものの「申し訳ない!」と土下座されて。

曰く「先生にお灸をすえられて、目が覚めました!」と。

奥さん、シマオくんの母親が亡くなってから「息子を立派に育てなければ」と気負いすぎたらしい。

が、目が覚めた今では「こんなに精神的に不安定な自分に、子供を叱る資格はない」とすっかり反省。

家庭科室の一件は他言無用にするし、暴走したこちらがワルイのだから気を病まないでほしい。
そう土下座しつつ懇願して、シマオくんをつれて帰っていった。

翌日、職員室にシマオくんがきて「昨日はすみませんでした」と。
あらためて頭を下げにきただけでなく「父が落ちつくまで、親せきの家に預けられることになりました」と報告し、こう、つけ加えた。

「いつか、この町にもどってきます。
そのときは俺の、お嫁さんになってくれますか」

唐突なプロポーズなれど、さほど驚かず。
「べつに、お嫁さんになるのは俺じゃなくていいと思うよ」とにっこり。

「きみが俺のお嫁さんになってもいいし」

父親の「男とは!」の主義主張に縛られていないかな?
と試すように含みのある物言いをしたところ、きょとんとしたのもつかの間、はにかんだシマオくん。

お嫁さんを夢見ることに抵抗のない彼の前途は明るいものになりそうだった。




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