チャラ男なんか死ねばいい

ルルオカ

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ジジイズラブ!

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高校の将棋部は、俺が顧問をしはじめ五年目にして大盛況。

というのも、最年少でプロになった中学生スター棋士が誕生したから。
まんまと感化された、ミーハーなにわかが押しよせてきたわけ。

まあ、うちの部はジイサンが余生の暇つぶしに将棋を差すような、ゆるくぬるい雰囲気だから、ベツにかまわんが。

そうして大半の部員が、一回きたきり幽霊になったり、気まぐれに寄ったり、適当に活動していたのが、異色のガチ勢が二人。

祖父母が親代わりの家庭で、三才からジイチャンに将棋をしこまれたゴウザキ。
五才から将棋会館に通って、年配の方々に揉まれてきたクロナミ。

花の高校生にして、二人とも特殊な環境で育ったせいか、ジジイくさい。

ゴウザキは江戸っ子気風な、癇癪持ちの頑固ジジイのよう。
クロナミは近代文学作家を思わせる、気難しいインテリジジイのよう。

対照的にジジイくさく、将棋の腕が拮抗しているとなれば、そりゃあ、勝負は白熱するし、そのあとの感想戦は大喧嘩。

「ここで銀車を退けたのが、運命の分け目だったんじゃないですか?」

「はあ!?相変わらず、その目は節穴だな、こんにゃろめえ!
この銀車が、てめえのへっぴり腰防御に風穴をあけて、快進撃をする要だったてえのに!

このあと、てめえが飛車をとりやがって、すべて台なしだ!
つまらん凡ミスしたうえに、俺の華麗なる逆転劇をぶち壊しにしやがって!」

「凡ミスとは、それこそ心外ですね。

力技でごり押ししようとしたから『そうはいかないですよ』とたしなめたんじゃないですか。

ついでに云いますが、自分の至らなさを棚にあげて、人が至らないせいと責めるクセ、改めたほうがいいですよ。

クセというか、もうモンスタークレーマー並、病気レベルかもしれません。
精神科に通ったほうがいいんじゃないですか?」

「ばーっきゃろう!
てめえこそ、そーやって屁理屈こねて、人を煙にまいて、てめえに不都合なこと揉みけすんじゃねえか!

一評論家みたいな顔しやがって鼻持ちなんねえし、タチがわりい!

にこにこしながら、毒を吐きまくる、くっせえ、その口も治せってんだ!
おうおう!眼科に歯医者に、通うのが忙しいな!」

感想戦から脱線して、人格攻撃しあう始末だが「ああ、またイチャイチャしてんなあ」と俺も部員も、呆れたり苦笑したり。

「この偽善者の毒吐き!」「病院も手におえない精神破綻者!」ととことん罵りあいながらも、この二人は毎日毎日、将棋をさしているからだ。

たまに、ほかの人と対戦したり、指導をすることもあるが、部活動時間の大半は二人の世界に没入。

「胸糞わりい!二度と顔見せんな!」「こっちこそ、もう、つきあっていられません!」と絶縁宣言をしておいて、翌日、教室にいけば、いのイチバンに二人で将棋に入れこんでいるから「はーい、もう、お腹いっぱいでーす」と心配するのがバカらしくなるというもの。

ケンカするほど仲がいいというか。

将棋の腕も、将棋愛も、プロにはなれない家庭事情も、似たり寄ったりとあって、お互いにエンリョせずに、思いっきり、ぶつかれるのがタノシイのかも。

一見、ひどく険悪そうなのに、たまに外野の生徒や先生に「あれ、放っておいていいの?」と聞かれるが。
部内の人間にすれば「ノロケるのも、いい加減にしてほしい」とため息をつきたくなる

まあ、そうやって愚痴っても、お互いしか目にない二人はどこ吹く風。
あたたかく見守るというか「もうスキにして」とあきらめたように放っておく将棋部は至って平和だったが、ある日、波乱が。

きっかけは、知りあいからの頼まれごと。
「俺の中学生の甥が、高校選びの参考に、将棋部を覗いてみたいって云うんだ」と。

最近、引っ越してきた彼、ナツメくんは、バアチャンっ子にして、幼いときから将棋を嗜んでいたという。

そう、ゴウザキやクロナミと同じ類。
ただ、バアチャンっ子っとあってか、ジジイくさくなく、やや女性的な雰囲気があり、物腰柔らかくおっとり。

俺に対して、もちろん礼儀正しく「叔父がムリを云って、すみません」と頭を下げられては、断れず。
学校の許可を得て、将棋部につれていったものを、すこしイヤな予感がしたもので。

案の定、クロナミと意気投合し、和気あいあいと将棋をさして。

委員会の活動で遅れてきたゴウザキは、その光景を目の当たりにして「はあああ!なに、ナマヌルイ将棋をさしてんだあ!」と激昂。
走ってきた勢いのまま、将棋盤をひっくり返した。

「ただでさえ、てめえは消極的で守りに逃げがちな短所があんだぞ!
こんな、なよっちいハナタレ小僧と将棋なんかしてたら、もっと腑抜けになんだかんな!」

「やめないか!
きみの荒っぽいところは個性と思って、あるテイド目をつぶっているが、年下の子に横暴を働くのは許さない!

これ以上、この子を侮辱するなら、一生、あなたと将棋をさしませんからね!」

「ああ、そうかよ!
童貞腰抜け同士、仲良しこよし、お互いのを慰めるみたいに馴れあってんのが、そんなにいいってか!

俺はお呼びじゃないって、偉そうにホザキやがって!
こちとら、いくらでも将棋仲間がいるから、てめえなんか、切りすてたって痛くも痒くもねえんだよ!」

まったく、どちらにしろ、真剣に進路に悩む中学生を巻きこんで、馬鹿をやりやがって。

そりゃあ、顧問として頭にきたが「ぼく、お邪魔だったようですから」と察しのいいナツメくんに免じて、説教はせず。
まあ、なんとやらは犬も食わないというし。

ゴウザキが憤怒した理由なんて考えるまでもなく、一目瞭然。
が、当人たちは、よく分かっていないまま、売り言葉に買い言葉で、お互いヒッコミがつかなくなったのだろう。

それから一週間、ゴウザキは部活に顔を見せず。

ああ、とうとう関係が決裂してしまったか・・・と俺と部員は心配。

するわけなかった。

だって、クロナミは腕を組み、対戦相手不在のままの将棋盤をずっと睨みつけていたし。
ゴウザキのほうは、さりげなく教室のまえを通りすぎるフリを繰りかえし、挙句、外から窓越しに覗いているのがバレバレだし。

一週間経って、耐えきれなくなった俺は「ジジイクサイのが二人、オトメぶってんじゃねえー!」と廊下をうろつくゴウザキを捕獲。
背中を突きとばして、クロナミのもとへと。

ころびかけたのを踏んばって、顔をあげたなら「よ、よお」と目を伏せるゴウザキ。
つい、目を合わせたのを、すかさず顔をうつむけて「ひ、久しぶり」ともごもごするクロナミ。

あまりに見せつけられては、ホホエマシイを通りこし、ジンマシンがでそう。
「ああああ!」と腕をがりがり掻いて、渾身のツッコミをいれてやった。

「いつまでもウブな熟年夫婦か!」

「う」とゴウザキ「じゅ」とクロナミ、同時に顔を真っ赤にして。

さらに罵声を浴びせようとしたところで、やっとお互い向きあい、ぎこちないながら会話を。

「は、なに、一人で将棋盤とにらめっこしてんだよ。
やっぱ、お、俺がいないと寂しい、んだろ?」

「ば、そんな、わけ・・・逆にあなたが寂しがっているんじゃないかって、気を使った、んですよ。
ほ、ほら、わたしのせっかくの配慮、ムダに、しないで、ください・・・」

パチリ、パチリと将棋をさしだした音を聞いて、俺と部員は「はああああああ」と腹の底からため息を吐き、脱力。

これから、ジジイクサイこの二人が卒業するまで、砂を吐きたくなるようなジジイズラブを見せつけられることになるのろう。






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