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つり橋で見つめて口内炎を伝染してくれ
しおりを挟む考えごとをしつつ、うわの空で押したのは「カレーうどん」のボタンだった。
「あほか俺!」と後悔したのは、熱熱のうどんをすすってから。
口内に走った激痛に(うどんを噴きださないため)声にならない叫びをあげて、しばし身悶えたもので。
すこし疼きがおさまってから、うどんを飲みこみ、水を一気飲みして一息。
日替わり定食を食べながら、眺めていたらしい友人が「どうしたの」と口をもごもごさせ聞いたのに「いや・・・」とうな垂れて応じる。
「口内炎あるの、忘れてた・・・」
「口内炎でカレーうどんて!」と笑われるかと思いきや「口内炎ってイタイ?」と質問。
ん?と眉をしかめつつ「いや、もう、見てのとおり」と返すと「ふーん、俺、口内炎なったことなくてさ」と。
なるほど、と思ったのもつかの間、襟をつかまれ引っぱられた。
強引に顔をあげさせられ、気がつけば、鼻がつきそうに友人が接近。
「このままでは・・・!」と反射的に顔をうつむけ、友人の顔面に頭突き。
のけ反って、襟を放したところで「なに!なんなの!」と息を切らしながら叫ぶ。
呻き鼻を押さえて曰く「どんだけ、イタイのか知りたくて」と。
「キスしたら、伝染るって云うだろ?
いい機会だから、おまえから口内炎もらって初体験してみようかなってさ」
超好奇心旺盛で超行動派の友人は、こういったウサンクサイ噂や迷信の真偽を、実験してタシカメたがる癖がある。
のは百も承知なれど、なにか違和感が。
そういえば、このごろ、似たような実験をしたがり、俺に強要してくる。
一週間前は「吊り橋効果」の実証実験。
三日前は「七秒間、見つめあう(と恋に落ちるらしい)」という実証実験。
バカバカしいものだが「成功したらどうするんだ」と一抹の不安もあって「気になっている子で、試してみろよ」と拒否。
ノーを突きつけられ、あきらめるどころか、ムキになったように今回は強行突破をはかってきたらしい。
そりゃあ「なんで?」と訳がわからなかったものの、ふと思いつき「おまえ、もしかして」と切りだす。
「俺のこと、スキなのか?」
「そう勘ちがいされるようなバカな真似はもうやめろ」と言外にたしなめたつもりが。
鼻を押さえたまま、目をぱちくりとさせ「ああ!」とは、どういうことだ。
たった今、自覚しましたとばかりに。
呆れつつも、要らぬことをして地雷を踏んだ気がして「やば」とも思う。
友人がまともに口を利くまえに、どうにかしないと。
「・・・そういえば、口内炎は直接だけじゃなくて、間接でも伝染するらしいよ」
「マジ!?」
「ちょうど、俺、カレーうどん食えないし。
おまえの食べかけの定食と交換してもいいけど・・・」
「おう!交換しようしよう!」とカレーが跳ねるのもかまわず、勢いよく、うどんをすすりだしたに、杞憂だったか。
いつものように好奇心から盲目的に暴走しただけだなと、胸を撫でおろしたものの、翌日。
友人と受けた講義で、ある変わった魚の説明がされた。
性転換をする魚だ。
メスが少なく、オスが多いといった環境では、生殖できない見こみの余ったオスはメスになると。
一定数以上の子をのこすための、体の仕組みになっているというわけ。
なかなか興味深い話に聞きいっていたら「先生!」と隣の友人が挙手。
「人も同じような条件で男から女になるんですか!」
冗談でなく、茶化すでもない、大真面目な問いかけに、教授も学生もぽかーん。
俺も口をあんぐりしたが「やっぱり本気なのか!」と戦々恐々としてもので。
早く!どうか早く、我に返って教授!
そして「人は性転換をしません」とはっきりきっぱり否定してください!
早くしないと、この大馬鹿者は実験をしかねません!
人類の女性の半分以上を虐殺するなんてことを・・・。
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