チャラ男なんか死ねばいい

ルルオカ

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俺の甥っ子が可愛くないのが可愛い

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俺の姉は十八才で結婚し出産した。
俺が十四才のとき。

今は甥っ子が十四才で、俺は二十八才。

いまだ俺が実家暮らしなのもあり、今でもほぼ毎日、会っている。
近くに姉が住んでいて、両親共働きだから、その子供、甥っ子は幼いころから実家に通っているわけ。

気性のはげしい姉ではなく、温厚な義兄に似て、聞き分けのいいスナオないい子。

俺がロックバンドをやっているのに、がっつり影響を受けて、ロックを中心に音楽に詳しくなったり、たまにライブにきたり。

「わたしにより、懐いているじゃない!」と姉に嫉妬されるほど、良好な叔父と甥っ子の関係を築いていたのが・・・。

「いい加減、本格的なプロを目指すか、あきらめてベツの人生を歩むか、腹を決めたら?」

「おばあちゃん、おじいちゃんは大目に見ているけど、いい年こいた、女っ気なしの実家暮らしを、心配するのは当たり前だからね。
そろそろ身を固めないと、このまま、あっという間に中年オヤジになるよ」

十四才、反抗期に突入したのか。

「おまえは、俺のオカンか!」とツッコみたくなるほど、このごろ、変にお節介焼きで口うるさい。

まあ、図星すぎて、反論も言い訳もできないのだけど。

甥っ子がずけずけ云うように、俺はロックバンドをやりつつも、それで生計を立てられていない。

バイトをしながら、バンドの練習、ライブ開催。
おキラクに活動している状態をだらだらと継続し、プロになるつもりなく、大会出場をしたりオーディションを受けてもいない。

ベースの俺を除いて、ボーカル、ギター、ドラムは定職について、バンドを趣味感覚でやっているし。

親は「自分の分の生活費をだすなら、家にいていいし、スキにしていい」と寛容というか、あまり関心がないようだし。

向上心も野心も「モテたい!」「儲けたい!」という欲もない俺は、今のところ、その日暮らしのように、のらくら過ごしているのに、なんの不服もなし。
一方で「社会のクズムシだなあ」と自覚もある。

まわりに恵まれているだけで、ほんらいは、もっと説教され尻を叩かれるべきなのだろう。

でも、こういう、だらしない身だから、甥っ子と毎日、夕食を共にしたり、ゲームで遊んだり談笑できるわけで。

「今は社会貢献や恋愛結婚を考えるより、おまえと過ごすのに時間を割きたいんだよ。
おまえが、もっとおっきくなって、俺にかまってくれなくなるまでさ」

しつこい甥っ子のオカンぶりに飽きてくると、真っ向から云いかえせない代わりに、正直な思いを伝える。

「なに云ってんの!ちゃんと自分のこと考えなよ!」とぷんぷんして、そっぽを向く、その耳は赤い。

まだ中学生のくせに、オカンのように、あーだこーだと耳のイタイ言葉を浴びせるのが生意気で、カワイクナイからこそカワイイのだ。

せっかく甥っ子が心配してくれているのに懲りず「あーカワイ」とほほ笑ましく受け流していたものの、そんな平和な日々は、突然オワリを告げた。

きっかけは、ゴールデンタイムのテレビで、バンドが紹介されたこと。
国民的スター女子アイドルが「彼らは、わたしの生きる支え!」と魂の叫びをあげたらしい。

ほぼその瞬間から、リーダーであるギターリストに問い合わせが殺到。

メディアの出演依頼、取材依頼がどっと押しよせ、さらには芸能、音楽事務所からも、お誘いが。

しっかり者のリーダーは、俺以外定職につくバンドなのを考慮し、それらを一旦、保留。
バンドでじっくり話しあって「これからどうするのか」「どの仕事を受けて受けないのか」決めたいという。

メンバーに異論はなく、俺なんか「メンドーなことになったなー」「これで食えるようになったら、むしろ辞めたいなー」とため息をついたものだが、そうやって思い悩む暇もなく、世間は大騒ぎ。

もともとのファンが情報や写真、動画を垂れ流しにし、俺らを置てきぼりに「一気にスター階段へ!」とやんややんやしたもので。

俺ほどでないにしろ、世間に注目され賛美されるのに、メンバーはトマドイ「あーもう、まえみたいに、しがらみなく活動できないのかなー」とやっぱりため息。

前向きな検討や、意見交換ができないまま、話しあいはまとまらず、宙ぶらりん状態が長くつづいた。

そりゃあ、その間、鬱鬱もやもやしたもので、ただ、原因はそのことだけではない。

大騒動になってから、甥っ子が家にこなくなったのだ。

姉に連絡してみると「ああ、あの子、もう一人でいろいろ家のことできるし、そっちにいかなくて大丈夫だから。あと、あの子も忙しいしね」と。

「え!?じゃあ、どうして、つい最近まで、実家にきてたの?」と驚いたのは、さておき。

「バンドの人気がでるのが、そんなにイヤなのか?
べつに、俺だって有名になりたかないが、あいつ、応援してくれていたのに・・・」

夕食時、ついため息がてら愚痴ったら、両親が顔を見合わせ、やはりため息。
「あんたねえ」と行儀悪く、箸の先を向けてきた。

「鈍感だとは思っていたけど、そこまでバカだったなんてね」

「あの子も、なんで、こんなヤツをカワイソウに・・・」

「おいおい、人をバカ呼ばわりして、あいつに同情する意味が、さっぱり分かんないんですけど?」

「分からないのが、バカだってえの。単純なハナシよ。
バンドの人気が高まって、おこぼれに、あんたもモテたり、モデルとか芸能人とか、キレイな女性と知りあったり」

「それで、高校以来、彼女がいなかったおまえが、女遊びに目覚めて、落ちついてきたら結婚、家庭持ちになるのを、あの子はソバで見たくないんだよ」

「はあ!?だったら、じゃあ、逆にこれまで『早く身を固めて、親を安心させろ』ってせっついていたんだよ!」

「ほんと、あんたバカねえ。
あえて挑発的なこと云って、あんたが鬱陶しそうに『はいはい』ってあしらうのを見て、安心してたんじゃない」

「そうだぞ、あの子はシャイなんだから。
正面きって『今、彼女いるの?』『結婚はいつごろ、したいの?』なんて聞けないのが、いじらしくて、愛らしいんじゃないか」

「ていうか、あんたら、さっきから、恋愛鈍感な俺を責めているようだけど、叔父と甥っ子だよ!?
年だって十四もはなれてんだよ!?」

「バーカ。わたしとお父さんだって十、はなれているじゃない」

「たく、バカと云われてもしかたないな。
俺とお母さんは、子持ちの再婚だって忘れたのか?」

「それにしたって!」と激昂しかけて、はっとし、額に手を当て、うな垂れた。

「え、なに、あいつ、俺のこと、そんなスキなの?
死ぬほどカワイイんだけど・・・」

「うーわー。相手があんただろうと、恋焦がれて一喜一憂する、あの子は、そりゃあ、世界一かわいいけど。
あんたが、デレデレするのキモイし、犯罪者っぽくてナイわー」

「おまえのノロケかた、通報レベルだからな。
あの子に免じて、警察沙汰にはしないが、飯がまずくなるから、犯罪者顔やめろ」

不本意にも、イチド火がついたバンド大騒動が、どうなるかは分からない。

が、俺や親が、相変わらず絶好調に非常識な、この調子なら、まだまだ甥っ子とラブラブな日々を過ごせそうだ。





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