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用があるのはマスクの中だ!
しおりを挟む俺らは、なんというか、マスク直撃世代。
マスク着用で高校の入学式をしてから、まともにクラスメイトや同級生の顔を見れていない気がする。
もちろん、昼食時とか、口元をあらわにする機会はあれど、当たりまえのようにマスク着用せず学校生活を送れていた学生に比べたら、よそよそしいもの。
なんたって、スキな子の輝かしい笑顔を、あまり拝むことができないし。
が、ワルイことばかりではない。
マスクなら、より生生しい間接チューができる。
スキな子が唇を当てたり、掠めたりするマスク。
だけでなく、湿った吐息や、体液が布に染みているわけで・・・。
女子が悲鳴をあげて逃げるような、ど変態キモエグ発想だが、このときは自覚なし。
マスク着用で学校生活を送るのが、なにかとままならず、募っていくストレス。
スキなあの子が、イケメンのクラスメイトと親しく、そのうえ、交際しているか否かはっきりとせずに、募っていくアセリとイラダチ。
ただでさえ、思春期は気分にムラがあるところ。
ウットウシイ世の状況と、恋わずらう私情に追いつめられ、頭が爆発してしまったのだろう。
まともな思考ができない状態になり、そのまま猛進して、彼女のマスク入手に、血道をあげた。
ねらい目は体育の授業。
運動をするのに、マスクをしていては逆に危ないと、体育だけは着用せず。
着替えるときに、置いていくのが決まり。
ということは、女子更衣室の棚に、お目当ての外したてホヤホヤマスクがあるわけだ。
体操服を入れるカバンに、彼女がスキなキャラのキーホルダーがつけてあるから、特定は難しくない。
更衣室の扉は施錠されるものの、なにせ、古いつくりだから。
男子更衣室の扉は、針金を突っこみ、適当にガチャガチャしたら開いたので、同じ方法で開錠できる可能性大。
おおよその算段がつき「これは、もう作戦決行しかない!」と腹をくくったその日。
体育まえの授業で「先生、目眩がします」と申告し、まずは保健室に。
相手は仏の保健医だから、かるく診察したあと「一時間くらい寝て、そうすを見よう」と云ってくれ、お言葉に甘えてベッドイン。
とはいえ、寝ないで、天井を睨みながら、カーテン越しに保険医の動向をさぐって。
「用もなさそうなのに、保健室から消える時間帯がある」という噂どおり、廊下にでていったのを聞き届けてから、起きあがって、俺も廊下へと。
ちょうど、体育の授業が半ばの時間。
保健医がもどってくるまで、ミッションを遂行せねばと、人目につかないようにしつつ、走っていったところ。
さあ、女子更衣室を目前にして急ブレーキ。
というのも、向かいがわから、俺と同じように走ってきて、足をとめヤツがいたから。
体操服をまとった、クラスメイトの坂田だ。
なにか事情があって、授業を途中でぬけだしてきたにしろ、向かうべきは女子更衣室でないはず。
男子更衣室は遠いところにあるに、まちがえたわけがない。
「見つかった!」と冷や汗をかきつつ「どうして?」と不思議がって、膝から血が垂れているのを目にし、はっとした。
こいつも目的は同じか、と。
さきに坂田は気づいたようで、といって、しばらっくれるのはムリそうと思ってか、まごまごしている。
こういうときは、いくらミグルシク、カッコワルかろうと、ゴマカサズにはいられないもの。
「なにやってんだ変態!」とできるだけ声を張りあげ、相手を責めたて、自分の罰のワルサや羞恥をまぎらわそうとする。
より相手をコキオロセタほうが勝ちとばかり、お互い責めあう。
男子は、とくにそのケイコウがあるが、俺と坂田は、大人しめだったから。
ワルノリする男子に、一応、つきあいつつ、そっとため息を吐くタイプ。
相手に合わせても、自らすすんで、過激な言動をしない。
というか、できない。
今も、女子更衣室の扉を挟んで向かいあい、お互い罵らなければ「協力しよう!」と手を差しのべもせず、目を泳がせ、もじもじするばかり。
まあ、俺がすっかり我に返ったように、坂田も頭が冷えきってしまったのだろう。
お年ごろ特有の熱病のようなものに、ホンロウされていた俺らだが、自分の分身のような存在を目の当たりにすれば、そりゃあ、萎えるというもの。
つまり、それまで、キモエグど変態の自覚がなかったのを、俺は坂田を通して自分、坂田は俺を通して自分を、あらためて客観視させられ「あ、俺、超ヤベーな」と痛感したのだ。
そりゃあ、決まりがワルク、でも「思いとどまれて、よかった」とすこしアリガタクも思って。
「・・・俺、やっぱ、まだ、体がダルイわ。
おまえ、ケガしたなら、ついでに一緒に保健室にいくか」
「う、うん、そうする。ありがとう」
「ありがとう」に「なにが?」と野暮な問いはしないで、二人肩を並べ、とぼとぼと保健室へと歩いていった。
一生の汚点になるようなオモイデ。
黒歴史の一つになったデキゴトだったなれど、どうしてか、その日から、坂田と親しくなった。
お互い、べつのグループに属しながら、そこでのバカ騒ぎに疲れると、どちらともなく落ちあって、まったりと談笑をする。
変にウケを狙ったり、大袈裟にリアクションしたりしないで、天気とか、家でのこととか、タワイナイことを、だらだらとダベッテ。
オカシナものだが、マスクベロンチョ未遂事件を経て、気負わずソバにいられる知己を得られたのだ。
坂田といれば、スベルのにビビったり、不本意に笑わなくていい。
だけ、ではない。
坂田の胸中は知れないものの、このごろの俺は、彼のマスクに熱視線をそそいでいる。
といって、マスクベロリンチョ未遂事件で、死にたいほどに恥をかいたからに、それ自体に執着はない。
用があるのは、マスクの向こう。
さて、どうしたら、お互いのマスクをとっらぱい、剥きだしのを重ねることができるか。
思春期の熱病のようなものに、もう罹っていないものの、坂田のマスクの向こう側に、夢を見てばかりの、平和なこのごろだ。
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