セーラー服を着させないで

ルルオカ

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それ以降、ベランダ越しに学校生活について聞く限り、高校進学してからも、いまだに見た目も中身もシェパードのふりを、やめられずにいるらしい。

本性のチワワを、お披露目できずにいることを義男は気にしているとはいえ、俺はてんで問題視していなかった。
共に大学に行けば、元通りになるだろうと、考えていたし。

まあ、俺のように義男が呑気でいられないのは、仕方ないことだ。

中学の入学式のあの件があって以来、女子を見る目が変わってしまったのだから。

義男が語るには、学校やクラスで、男子は和気藹々と接してくれるが、女子は近寄りがたそうにし、ほとんど口を利かないとのこと。
「そうだよね。俺、黙っていると怖いよね」と肩を落とす義男は見誤っている。

女子の場合「遠巻きにしている=疎ましがっている」とは限らない。

寄りつかないのは、女子同士、出方を窺ったり、牽制したり、かけひきしたりして、踏みだせないでいる、とも考えられる。
要は、ひそかに思い慕っている女子が多くいるわけだ。

見た目がシェパードなイケメンで、剣道で鍛えた肉体を誇っていれば、見惚れられて当たり前で、「お前、隅に置けないな」と男子にも、さぞ冷やかされているだろうに、義男は真に受けようとしない。

かつての女子の一言、「キモ」が、頭から放れないせいだろう。

このままでは、女性不振に陥り、抜けだせなくなりそうとはいえ、やはり俺は心配していなかった。
むしろ。

駅の近くまできて、慌てたように義男は手を放した。

隣を見上げれば、血色がよかった頬を、すっかり青ざめさせ、下げていた眉尻を逆立てている。

「ははあ」と駅のほうに目をやったところで、案の定、駅の階段付近に女子高生二人が立っていた。
義男が通う、学校指定の制服を着ている。

「ごめん、ヒロちゃん」と階段のほうを見たまま、謝ってきたのに、首を振り「大丈夫か」と聞いた。

口をへの字にしつつ、肯いたなら、俺を置き去りに肩を怒らせ、階段のほうに歩いていく。

女子高生は、義男が近づいてくると、一歩退き背を向けたものを、階段を上っていって少しもせず、きゃっきゃと追いかけていった。

どう見ても、女子高生の追っかけだが、義男にすれば「あいつ無視したよ」「態度悪い」と背後から囁かれ、追いつめられているようなのだろう。

悪気がないといっても、朝から義男に精神的負担をかけた時点で、マイナス。
黒髪で化粧が濃くないのはいいとして、短いスカート丈はいただけない。

見た目だけでは、人となりを判断しきれないといっても、性格がいいとは、思えなかった。

女子と口を利かない義男が、乗車駅を教えるわけがないから、あの二人は自ら、調べてきたのだ。

ストーカー気質が窺えるのはまったくよろしくないし、さりげなく同じホームに立つなら、まだしも、これ見よがしに待ち伏せする、押しつけがましい女は、お呼びではない。

こうして俺は、寄りつく女を値踏みしたり、学校生活について聞いて、悪い虫がついていないか、探るのに余念がない。
お節介かもしれないが、なにも、義男の周りから、すべての女を排除したいわけではない。

見た目はシェパード、中身はチワワなギャップに「キモ」とけちをつけるような、なっていない女が多いから、見極めるのに、手を抜きたくはないのだ。

義男と同じくらい実直でつつましく、懐が深い女でないと、俺は歓迎しない。

義男が惚れようとも、何が何でも、ふさわしくない女は退けてやるつもりだった。

 「とりあえず、あの二人は要注意リスト入りだな」と手に持つスマホを見た。

義男の顔色が変わった時点で、ポケットからスマホをだし、大体の狙いをつけて、女子高生にレンズを向けたのだが、画像はぼやけつつも、何とか顔を識別できそうだ。

「もし、家まで押しかけてきたら、警察に通報してやる」と自分の隠し撮りの犯罪性を自覚しつつも棚に上げて、スマホの画面を睨みつけてやった。 
 




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