18 / 21
十八
しおりを挟む「というわけで、一件落着になった」
停学処分が明けて、菓子箱を手に、あらためて友人宅にお礼に赴き、事の顛末を洗いざらい打ち明けた。
最後まで、興味深そうに耳を傾けていた友人だが、「一件落着」でしめると、目をぱちくりとしてから「そりゃあ、気になっていたけど」と苦笑をした。
「別にお前がクラスで騒ぎを起こしたことで、俺は迷惑したわけじゃないし。
むしろ、お前を助けられなかったことを悪いと思っていたんだ。
俺を巻きこんだ詫びにって思ってんなら、その必要はないから、気にするなよ」
「いや、詫びじゃなくて礼だ。
お前は俺に腹を割って話してくれた。
おかげで、俺は目覚めることができた。
だから、きちんと話しておきたかったんだ」
「真面目か」と顔を背ける友人は、照れくさいらしい。
俺だって、台所のテーブルに菓子箱を置いて「娘さんください」と頭を下げにきたような調子でいるのが、どうも、こそがしい。
が、笑い話にも、有耶無耶にもしたくなく、背筋を伸ばしたまま、頬の力みも緩めなかった。
ちらりと見て、またすぐに目を伏せた友人は「じゃあ」と視線を払うように、手を振りながら応酬してきた。
「お前がこれから、急にセーラー服を着て登校してくることも、あるかもしれないんだな」
むず痒さををどうにかしたく、あえて野暮なことを口にしたのだろう。
と分かっていても、前なら「冗談でも言うな!」と血相を変えて、胸倉を掴んだろうものを、今は、そこまで感情がざわつかない。
「かもな!」と笑いとばすのは、さすがに難しいとはいえ「そうだな」とぶっきらぼうに頭を掻いてみせた。
アダルトビデオの音声を聞かされて起きたとたん、渾身の平手打ちを食らわせたほど、前は神経症だった俺だ。
比べて、随分、態度を軟化させたのに「見違えた」とばかりに、しげしげと見てくる友人。
極まりが悪くて、こめかみをひきつらせながらも、目を逸らさないでいたら、いよいよ感じ入ったように頬杖をついて「前に、俺言ったよな」と告げられた。
「お前を、いい奴だなって。
お前は否定したけど、やっぱ、いい奴だよ」
よしてくれと、眉ををしかめつつ、今回は否定しなかった。
俺がいい奴なのかは分からない。
ただ、少なくとも、義男の傍にいる限りは、いい奴でありたいと思っているのに違いはなかった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】 同棲
蔵屋
BL
どのくらい時間が経ったんだろう
明るい日差しの眩しさで目覚めた。大輝は
翔の部屋でかなり眠っていたようだ。
翔は大輝に言った。
「ねぇ、考えて欲しいことがあるんだ。」
「なんだい?」
「一緒に生活しない!」
二人は一緒に生活することが出来る
のか?
『同棲』、そんな二人の物語を
お楽しみ下さい。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる