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即興小説トレーニングで生み出したキャラクター
プロローグ 小雨の章
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放課後の帰り道。どんよりと曇った空から、雨粒がぽつりぽつりと落ちてきた。
「うわ~、こりゃ、もうすぐ雨になるな……」
「大丈夫大丈夫、そんなに降らないって」
小雨はいつも楽観的である。プラス思考と言ってもいい。だが、小雨のプラス思考は当たったためしがない。
小雨はどこにでもいる、普通の女の子だ。俺が小学校に入る少し前に、うちの向かいの家に一家で引っ越してきた。同い年で、幼馴染で、小学校から同じ学校。高校三年の現在まで、何故かずっと同じクラス。身長は、170ちょっとの俺と同じぐらいで、女子にしては大きい方だ。
艶のあるセミロングの黒髪。目は若干吊り目気味で、顎がやや鋭く、黙っているとツンとした印象を受ける。笑う時は口角が少し上がるぐらいで、いつもにやけているように見えた。
花に例えるとすれば、雨に濡れた水仙のような、不思議な色気がある。
小雨という一風変わった名前は、どうやら小雨の父親が映画「ジョーズ」の大ファンで、どうしても子供の名前に「さめ」という字を入れたかった、という理由によるものらしい。男の子が生まれたら、鮫太郎という名前を付ける予定だったそうだが、生憎、小雨は女の子だった。女の子に鮫はいくらなんでもかわいそうという事で、妥協して名前を「小雨」にした。そんな話を、小雨から聞いた事がある。
ちなみに、その三年後に生まれた弟には、無事に鮫太郎という名前がつけられた。
さて、そんな小雨であるが、彼女はとてもプラス思考である。
俺といる時はよく喋るのだが、普段の小雨は大人しくて、傍から見ると何を考えているかわからないらしい。割と人見知りする方だし、休み時間は一人で本を読んでいる事が多かった。だから、子供の頃に何度かいじめの対象になった事がある。
ある朝、学校に着いて小雨が席に着くと、机の上に花瓶が置かれ、小さな花が活けられていた事があった。
もちろん好意的な意味ではないのだが、小雨はその花が大変気に入ったらしく、家まで持って帰って何日か眺めていたそうだ。何に対しても小雨はこんな調子だから、いじめ甲斐がなかったらしく、軽微ないじめからエスカレートすることはなかった。
雲はどんどん黒くなり、雨粒が大きくなってくる。風も少し出てきたようだ。
「あ~、こりゃ濡れちゃうな……。傘持ってくればよかった。天気予報では晴れだったのにな」
俺は鞄を傘がわりにしながら歩いている。しかし小雨は雨を遮ることすらせずに、
「最近日照り続きだったからさ、うちの周りに植えてある花とか野菜とか、喜んでると思う」
ほんの少し口角を上げただけの、いつもの笑顔でそう答えた。
雨足はいっそう強くなり、小雨の夏の制服は透けて肌にぴったりと張り付いて、びしょ濡れになった髪からは雨水が滴った。
まるで、雨に濡れた自分が一番綺麗だという事を、知っているかのようだった。
「うわ~、こりゃ、もうすぐ雨になるな……」
「大丈夫大丈夫、そんなに降らないって」
小雨はいつも楽観的である。プラス思考と言ってもいい。だが、小雨のプラス思考は当たったためしがない。
小雨はどこにでもいる、普通の女の子だ。俺が小学校に入る少し前に、うちの向かいの家に一家で引っ越してきた。同い年で、幼馴染で、小学校から同じ学校。高校三年の現在まで、何故かずっと同じクラス。身長は、170ちょっとの俺と同じぐらいで、女子にしては大きい方だ。
艶のあるセミロングの黒髪。目は若干吊り目気味で、顎がやや鋭く、黙っているとツンとした印象を受ける。笑う時は口角が少し上がるぐらいで、いつもにやけているように見えた。
花に例えるとすれば、雨に濡れた水仙のような、不思議な色気がある。
小雨という一風変わった名前は、どうやら小雨の父親が映画「ジョーズ」の大ファンで、どうしても子供の名前に「さめ」という字を入れたかった、という理由によるものらしい。男の子が生まれたら、鮫太郎という名前を付ける予定だったそうだが、生憎、小雨は女の子だった。女の子に鮫はいくらなんでもかわいそうという事で、妥協して名前を「小雨」にした。そんな話を、小雨から聞いた事がある。
ちなみに、その三年後に生まれた弟には、無事に鮫太郎という名前がつけられた。
さて、そんな小雨であるが、彼女はとてもプラス思考である。
俺といる時はよく喋るのだが、普段の小雨は大人しくて、傍から見ると何を考えているかわからないらしい。割と人見知りする方だし、休み時間は一人で本を読んでいる事が多かった。だから、子供の頃に何度かいじめの対象になった事がある。
ある朝、学校に着いて小雨が席に着くと、机の上に花瓶が置かれ、小さな花が活けられていた事があった。
もちろん好意的な意味ではないのだが、小雨はその花が大変気に入ったらしく、家まで持って帰って何日か眺めていたそうだ。何に対しても小雨はこんな調子だから、いじめ甲斐がなかったらしく、軽微ないじめからエスカレートすることはなかった。
雲はどんどん黒くなり、雨粒が大きくなってくる。風も少し出てきたようだ。
「あ~、こりゃ濡れちゃうな……。傘持ってくればよかった。天気予報では晴れだったのにな」
俺は鞄を傘がわりにしながら歩いている。しかし小雨は雨を遮ることすらせずに、
「最近日照り続きだったからさ、うちの周りに植えてある花とか野菜とか、喜んでると思う」
ほんの少し口角を上げただけの、いつもの笑顔でそう答えた。
雨足はいっそう強くなり、小雨の夏の制服は透けて肌にぴったりと張り付いて、びしょ濡れになった髪からは雨水が滴った。
まるで、雨に濡れた自分が一番綺麗だという事を、知っているかのようだった。
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